創設30周年記念 鹿島アントラーズ 未来へのキセキ

鹿島らしいという言葉の根底にあるもの【未来へのキセキ-EPISODE 12】

内田知宏(報知新聞)

小笠原満男が追及し、大切にしていたこと

2001年チャンピオンシップ第2戦、Jリーグ王者を手繰り寄せた小笠原満男のFKによるVゴール。「鹿島らしさ」を象徴する1シーンだ 【(c)J.LEAGUE】

 DAZNでJリーグ中継を見ていると、一度は実況者、解説者から「鹿島らしいですね」「鹿島っぽくないですね」という言葉が聞かれる。いいプレーに前者を投げ、ミスや苦戦しているときに後者を使えば、具体的な根拠を示さずともうなずいてしまうから便利な言葉だ。

 今でこそ連動するパスワークが「フロンターレらしい」、汗をいとわない献身的なプレーが「湘南っぽい」と言われるなど、多くの人がイメージを共有できるクラブが出てきた。これらは間違いなくJリーグを盛り上げるために必要な要素だが、「鹿島らしい」というフレーズは、私が鹿島アントラーズの担当記者になった2001年にはすでに一般的だった。
 退場者を出し、ボールを握られながらも、同点に追いついた01年チャンピオンシップ第1戦のジュビロ磐田戦。劇的な展開に先輩記者が興奮気味に口にしたことをよく覚えている。続く第2戦で小笠原満男がFKからVゴールを決め、Jリーグ王者となったときにも飛び交った。03〜06年、タイトルから遠ざかった時期に「鹿島らしくない」をよく聞いたが、クラブに関わるすべての人間はもちろん、対戦相手、見ている側に統一された鹿島像があった。これだけ長い間、同じイメージで語られるクラブは今のところ知らない。

 もともとは泥臭さを示す言葉だった。創設からクラブに関わるスタッフは、「JSL(日本サッカーリーグ)2部からJリーグ加盟を果たしたのはいいけれど、お荷物クラブになると周りからは言われていた。当時は格上のクラブとの対戦ばかりで、私たちは食らいついていくしかなかった。負けん気あふれるプレー、不細工かもしれないけどなりふり構わないプレーをしたときに、よく『うちっぽいね』と身内で言っていた。今とはだいぶ違う使い方でしたね」と振り返る。

 今では、特にタイトルが懸かった試合で発揮する勝負強さ、ミスで自滅しない試合運びを見たときによく使われる。確かに指して口にするプレーは、当時とは異なるかもしれない。ただ、相手に食らいついていくことで「勝利への執着心」が生まれ、「したたかな戦い方」へと成熟していったのだとしたら、根っこの部分は変わっていない。表面だけを切り取れば「強い」になるが、その強さを生み出すベースは「食らいつく」である。

 敗戦後、小笠原が言うことはほぼ同じだった。
「ビビって、怖がって(パスコースに)顔を出さない選手がいる。隠れちゃう。そんなんじゃ勝てないよ」
「球際で戦わないと。向かっていっていない」
「ミスすることを怖がっている」

 自分が取材で聞いた限り、戦術面や仲間のミスを敗因に挙げたことは一度もなく、チームや選手のメンタル、姿勢を追及した。恐れるのはミスではなく、敗戦。時に相手が壁を作っている最中にFKを決めたり、弱者がさらすような隙を決して見逃すことはなかった。人がうらやむほど多くのタイトルを獲得しても、最後まで「立ち向かう」ことを大切にしていた。

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