千葉ロッテ常勝軍団への道〜下剋上からの脱却〜

ロッテで明確化された理念とビジョン ブレのなき意識で進む「常勝軍団への道」

長谷川晶一

視線の先にあるのは「令和の常勝軍団」

監督就任以降、着実にマリーンズの成績を高めてきた井口。目指すは「令和の常勝軍団」だ 【写真提供:千葉ロッテマリーンズ】

 残り30試合を切り、優勝争いはますます過酷を極めている。日々の激闘の中で、マリーンズナインは懸命な戦いを続けている。圧倒的な戦力を誇っているわけではない。今季のチームスローガンにあるように「この1点を、つかみ取る。」べく、泥臭く繋いで、繋いで何とか得点を奪う。先発投手陣は1イニングでも長くマウンドに立ち、頼れる守護神・益田直也に勝利のバトンを託しながら、何とか白星を積み重ねてきた。

「ここまでくれば、周りがどうこうではなく突っ走るぐらいの勢いがなければトップは取れないと思います。全員で束になって戦っていくだけです」

 激烈な戦いが続く中、井口の言葉は力強い。目の前の一戦、一戦に全力を尽くし、あとわずかのところまで迫っている1974(昭和49)年以来となる勝率1位での優勝をつかみ取るだけだ。しかし、井口の目標はそこだけにあるのではない。その視線は、3年後、5年後を見据えている。なぜなら、マリーンズの理念は「常勝軍団になる」ことだからだ。

「僕はとにかく、このチームが強くなってほしいという思いでやっています。最終的に結果が伴わなければ、来年、再来年、僕自身がどういう状況になるかはわかりません。でも、《この1点を、つかみ取る。》という野球をしなければ勝てないんだということは、僕も、選手も、フロントも感じています。それは、誰が監督であっても、当たり前のようにやらなければいけないことなんです……」

 井口の言葉に熱が帯びる。

「……この理念やTeam Voiceは、《監督である僕が》ではなく、《球団が》打ち出しているものです。それは誰が監督であっても、必ず継続されていくものです。誰が次の監督になっても、それは決してブレることはない。そうなれば、自然といい勝負ができることになるんです」

 自信にあふれる力強い言葉だった。21年シーズンはいよいよ佳境を迎える。泣いても笑っても、全力で残り試合を戦うだけだ。しかし、井口には、いやマリーンズには、3年後、5年後、さらにその先を見据えた「もう一つの挑戦」がある。確固たる球団理念の下、新たな常勝軍団となるべく挑戦の日々は続く。

 目指すべきは「令和の常勝軍団」だ。マリーンズはまだまだ歩みを止めない。なぜなら、その崇高な理想ははるか先の未来にあり、まだまだ改革の途上にあるからだ――。

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著者プロフィール

1970年5月13日生まれ。早稲田大学商学部卒。出版社勤務を経て2003年にノンフィクションライターに。05年よりプロ野球12球団すべてのファンクラブに入会し続ける、世界でただひとりの「12球団ファンクラブ評論家(R)」。著書に『いつも、気づけば神宮に東京ヤクルトスワローズ「9つの系譜」』(集英社)、『詰むや、詰まざるや 森・西武 vs 野村・ヤクルトの2年間』(インプレス)、『生と性が交錯する街 新宿二丁目』(角川新書)、『基本は、真っ直ぐ――石川雅規42歳の肖像』(ベースボール・マガジン社)ほか多数。

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