大会最終日に輝いた笑顔の銀メダル 米国との決勝は日本バスケ界のレガシー

平野貴也

バスケットボール界初のメダルを獲得し、笑顔の女子日本代表 【Getty Images】

 届かなかった世界に足を踏み入れ、新たな基準を引き出した。笑顔の銀メダルで大会を終えた彼女たちの挑戦の価値は、きっとそこにある。東京五輪は8日に最終日を迎え、バスケットボール日本女子代表は、75-90で米国に敗れ7連覇を許した。

 女王は、強かった。準々決勝のベルギー戦を残り15.2秒の逆転で制するなど、破竹の勢いで勝ち上がった日本だったが、決勝戦では最初から持ち味を封じられた。予選ラウンドでの対戦(69-86)から、日本対策を施してきた米国は、日本の武器である機動力と3ポイントを消しに来た。

 試合の立ち上がり、日本は得意の外角を使う前段階として、ゴール下への侵入を試みた。高さでは勝てないが、スピードで上回るのが、日本の特長だ。しかし、そのスタイルを作り上げてきたトム・ホーバスヘッドコーチ(HC)は「米国のディフェンスがすごかった。最初から動き回ろうと思ったけど、最初のチャンスでシュートを落として、リズムが崩れた」と立ち上がりから攻撃を封じられた苦しさを明かした。

試合序盤は米国の厳しいマークに苦しんだ

準決勝のフランス戦で五輪記録となる1試合18アシストを記録したPG町田瑠唯。決勝は米国のマークに苦しんだ 【Getty Images】

 第1クォーター、日本に得点が生まれるまでの約1分40秒は、この試合の難しさを物語っていた。準決勝のフランス戦で五輪記録となる1試合18アシストを記録したPG町田瑠唯のパスが奪われ、主将を務めるC高田真希がインサイドから狙ったシュートが外れ、SF赤穂ひまわりがドライブを仕掛けても、203センチの長身Cブリトニー・グリナーに完ぺきにブロックされた。

 町田がドリブルでボール運び、マークに来る相手の進路に高田が壁を作ってズレを生じさせようとするが、相手は素早くマークを切り替えてフリーになる時間を作らせない。突破もシュートも無理になれば、当然パス。しかし、外角のシューターにはマークがぴったり付いて警戒されていた。

 スピードで振り回したいが、マークがずれない。赤穂は「予選ラウンドではできていた攻撃ができなくなっていて、日本の足が止まっていた部分がありました。(自分の攻撃も)行きたいタイミングでなく、行かされている感じがしました」と突破口を見いだせなかったもどかしさを明かした。タイムアウトを取っても流れは変わらず、5-18といきなりスコアを離された。追い上げたのは、第1クォーターの終盤。町田に代わって入ったPG本橋菜子が連続して3ポイントを決めた。

 第2クォーターにはドライブで切り込んで得点を奪うなど、攻撃をけん引した本橋は「シューター陣に対してはカバー(2人目の守備者)が付かないから(ゴール下への)ペイントアタック(編集注:制限区域にボールを進めること)は狙えると思った。それで相手が警戒して下がるとか、コミュニケーションミスでノーマークになることがあった。一つひとつのチャンスを見逃さずに外から狙えたのは良かった」と個人戦術で局面を打開。最強の女王に追いすがった。

 しかし、相手の攻撃が止まらなかった。米国は、ゴール下へふわりと浮かしたパスを送り、203センチのグリナーがシュートを決めるという攻撃の繰り返し。日本は、身長193センチの渡嘉敷来夢が昨年12月に右ひざ前十字じん帯を断裂。チームには戻れなかった。日本は、相手のパスコースに必死に体を入れて防ごうとした高田が最長身で185センチ。15センチ以上の差は、いかんともし難く米国のローポスト攻撃を止められなかった。これは、失点が重なるだけでなく、得点の要素を削られるものでもあった。

 日本の司令塔である町田は「渡嘉敷さんがいなくなった分、高さがなくなって、より速いバスケットを目指すことで、オフェンスもそうだけど、ディフェンスもフルコートでプレッシャーかけるなどをやってきた」と話したが、一方で「相手のシュートがなかなか落ちなかったので、ディフェンスからブレイク(速攻)に持って行けなかった」と、スピードを最も生かしやすい攻撃を出せなかったことも、攻撃のリズムが上がらなかった一因として指摘した。試合が後半に入ると、日本は2人がかりのダブルチームで襲いかかるなど守備面からリズムを作る場面も出たが、最後まで点差を埋めることはできなかった。

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著者プロフィール

平野貴也

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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