八村、渡邊、馬場を生かすためには? 佐々木クリスが占う男子バスケ代表選考
親善試合で見えた代表の課題
イランとの3試合では強度の高い守備を見せた日本。欧米の強国相手にどこまで耐えることができるか 【写真は共同】
日本の守備がうまく機能してターンオーバーを多く生み出せたのは、かみ合わせが良かった部分もあったと思いますが、相手のピックアンドロールに対して、スイッチディフェンスなどで相手の機動力を塞ぎに行けるようになっていた点は進歩です。
一方、攻撃は試合ごとに明確な違いが出ました。注目点は、3ポイントシュートです。敗れた2試合目は20本中5本成功(25%)。勝った3試合目は40本で15本成功(37.5%)でした。
イランのコンディションが悪くて大勝した初戦でも28本打っています(10本成功で成功率35.7%)。30本以上は打つべきという指標が見えます。単に外角頼みというわけでなく、自分たちよりも大きくて速い選手たちと対峙(たいじ)する戦いでは、外角シュートで相手を引き出して、スペースを広くしてからペイントタッチを仕掛けなければ通用しません。
また、守備の崩壊を避けるためにも3ポイントでの攻撃は重要です。日本は、ゴール下に人数を集めて守るスタイルで、どうしても3ポイントを打たれます。今回のイランとの第3試合も、相手の成功率が低かっただけで、27本打たれました。高さなどリング周りの攻防で不利なのに、3ポイントも決められるとなると、点差を離されてしまいます。せめて、外角の攻撃では互角に持ち込まないと太刀打ちできないでしょう。
目標の「欧米から1勝」に必要なのは?
八村、渡邊、馬場の3人は、世界レベルのアスリート。リーチがあって、走力や跳躍力に長けています。彼らの能力を最大限に生かすには、縦28メートルのコートをフルに生かすバスケットが有効です。
今回の3試合のうち、特に2試合目は、プレーコール(約束された連係プレー)が多く、相手のミス以外ではアーリーオフェンス(ボール奪取と同時に複数の選手が連動して仕掛ける速攻のコンビネーション)が少なかったです。守備では、フルコートのゾーンディフェンスも見たいです。ラマスHCが就任してから、ハーフで中を固める2-3ゾーンは使っていますが、強い相手に40分間同じ守り方をしていては通用しません。相手のリズムを狂わせるカードを何種類か準備しておきたいところです。
東京五輪では、欧米の強国から歴史的1勝を挙げることが大きな目標。前回のアジア王者・中国でさえ、リオ五輪では達成できなかった難題です。五輪で戦うのは、スペインやアルゼンチンといった横綱、大関クラス。90年代に身長170センチほどの小柄な体格ながら多彩な技で大関を破った舞の海という力士がいましたが、日本は、彼と同じように相手が驚くような仕掛けが必要です。
3ポイントと速攻、そして耐える守備と仕掛ける守備を併用して、アジア予選8連勝で挑んで5戦全敗となった2019年のワールドカップから日本が確実に強化され、未来に前進したと感じられる戦いを見せてくれることを期待しています。
日本代表は、7月上旬にメンバーを絞った後、国内で国際親善試合5戦を行って、東京五輪に臨む予定だ。2016年のBリーグ誕生、そして八村、渡邊のNBAデビューを経て着実に世界との距離を縮めている日本代表は、いかなる顔ぶれで、どのような戦いを見せるのか。最後の仕上げに取り掛かる。