泉谷、快記録を生んだ1カ月前の「伏線」 110mH日本初の決勝へ、進化続ける21歳

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決勝、そして「さらに上のレベル」を目指して

前日本記録保持者の金井(左)と、19年の世界陸上で準決勝に進出した高山(右)を含め、期待大のメンバーがそろった 【北川外志廣】

 泉谷以外にも、世界と張り合えるメンバーがそろっている。

 目の前で日本記録を更新される形となった金井だが、「7台目から(泉谷に)一気に離されたけど、固くならずに自分のペースを保つことを心がけた」と、まずは代表権を確実なものとすることに専念。今シーズンたたき出したベストタイムの13秒16は、十分に五輪の決勝進出が見込めるタイムだ。かねてから目標としていた歯科医になるため、今シーズンを集大成とすることを公言している25歳は「1カ月あるので、やれることを最大限やっていきたい。決勝進出が目標です」と、ふつふつと闘志をたぎらせる。

 22日の練習中にぎっくり背中を発症した高山は、村竹らの失格という運にも恵まれた。とはいえアップも満足にこなせず、「(フライングがあって)止まった時に痛すぎて、頭が真っ白になっちゃいました」と、体は極限の状態で戦っていた。それでもバランスが崩れるほどに胸を張ってゴールし、3位を死守。故障で欠場した、練習仲間である女子100メートルハードルの青木益未(七十七銀行)からの激励を胸に「死ぬ気で頑張りました」と、体にムチを打って代表権を手にした。いつもは冷静な高山が、自力で立ち上がれなくなるほど追い込みをかける姿に、胸を打たれた。

 この種目で五輪・世界陸上を通じて決勝に進出した日本人選手はまだいない。しかし、今回のメンバーは全員が初出場となるが、その快挙が十分に期待できる。泉谷は「(8歩から7歩に変えた)スタートの感覚はまだまだです。もっとスタートから前に出られれば、いい結果につながると思います」と打ち明けた。1カ月後に言葉通りのパフォーマンスを見せることができれば、メダル獲得も不可能ではないと期待せずにはいられない。

 日本ハードル界の悲願をかなえ、そしてもう1つ先のレベルに達することはできるのか。その答えはもうすぐ出る。

(取材・文:守田力/スポーツナビ)

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