現役ボクサーが見た井上尚弥戦 相手が「先入観で負けている」と感じた1R

船橋真二郎

バンタム級王座統一戦線に大きな動きが

対戦することになったWBO王者のジョンリール・カシメロ(写真左)とWBC王者のノニト・ドネア(写真右)。井上は4団体統一戦を熱望している 【Gettyimages】

 ここに来て、バンタム級王座統一戦線に大きな動きがあった。8月14日(日本時間15日)にWBAレギュラー王者のギジェルモ・リゴンドー(キューバ)と対戦予定だったWBO王者のジョンリール・カシメロ(フィリピン)が、WBC王座に返り咲いたばかりの元5階級制覇王者ノニト・ドネア(フィリピン)と先に対戦することになったのだ。その勝者が互いのベルト2本を懸けて、年内に井上と4団体統一戦を戦う可能性もあるという。願ってもない急展開に井上は目を輝かせた。

「よりドラマチックなのはドネア2ですよね」

 三代は「ダスマリナスよりもクレイジーにセオリーにない動きができる」カシメロのほうが、井上のライバルとして面白い存在、より可能性があるのではないかという。

「ドネアとは一度決着がついているし、カシメロのほうが可能性はあると思います。ただ、それも少しの可能性の話であって、井上選手の勝ちは大方、変わりはないと感じますが」

来週26日(日本時間27日)には、同じラスベガスのザ・シアターで日本の中谷正義(帝拳)が前ライト級統一王者で元3階級制覇王者のワシル・ロマチェンコ(写真左)との大一番に臨む 【Gettyimages】

 今週26日(日本時間27日)には、同じヴァージン・ホテルズ・ラスベガスのザ・シアターで日本の中谷正義(帝拳)が“史上最高傑作”の呼び声高い前ライト級統一王者で元3階級制覇王者のワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)との大一番に臨む。

 伊藤戦からライト級参戦を宣言し、同じ階級で戦うことになった三代にとっては心が騒ぐはずだが「ほんとにすごいな、と思っていますし、頑張ってほしいと素直に思います」と冷静だ。

「同じ階級だから悔しい、とか言う選手もいるかもしれないですけど。正直、今回の井上選手もそうですけど、ラスベガスのメインを張る中谷選手と今現在の僕の立ち位置は、ものすごい差がありますからね」

 それでも世界王者経験者の伊藤に勝利したことで「ボクサーとして段階が1個上がった実感がある」という三代はこうも言った。

「でも確かにすごいところに中谷選手はいると思うんですけど、僕の今の実感として、自分にも不可能じゃないと思ってるんですよ。僕と中谷選手の立ち位置の差ほど、ボクシングの差はないと感じていますし、自分にも可能性がある、と思って、自分のボクシングをいろいろ模索しながら過ごしています」

 対戦が期待されていたライト級3冠(日本、東洋太平洋、WBOアジアパシフィック)王者の吉野修一郎(三迫)とは、対戦オファーを受けながらも、自身のケガで残念ながらタイミングが合わなかったが「チャンスがあるなら、次の次でもぜひやりたい」という。次戦は9月22日、東京・後楽園ホールで9カ月ぶりとなるリングに立つ(対戦相手未定)。

「ボクサーって、この試合に勝ったことで覚醒する、一皮むける、とかあると思うんですけど、今、練習していてもそれを日々、感じていて。次の試合は、伊藤選手に勝った、あの日の僕よりも強い自分を見せますよ」

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著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

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