19歳・橋本大輝が体操の新エースに “世界最高レベル”の判断力と演技で優勝

平野貴也

新たなエースとしての役割を担う橋本大輝 【写真:アフロスポーツ(代表撮影)】

 1年の延期により、体操ニッポンに新たなエースが誕生した。東京五輪の日本代表選考を兼ねた体操のNHK杯が15、16日に長野市・ビッグハットで行われ、男子は橋本大輝(順天堂大)が初優勝、2016年リオデジャネイロ五輪では補欠だった萱和磨(セントラルスポーツ)が準優勝し、団体枠の代表に内定した。

五輪1年延期で台頭した19歳「一番頼りになる存在にはなりたい」

 優勝した橋本は、大学2年生の19歳。4月の全日本個人総合選手権では、予選で7位と出遅れたが、決勝では6種目中4種目で15点台をマークして、19年世界選手権の金メダリストに0.24点差と肉薄する高得点を獲得して逆転優勝。日本体操協会の水鳥寿思強化部長が「今のルールでは、各種目のスペシャリストが15点台を取ってくる。それをほとんどの種目で取っていけるのは、世界最高レベルのところに来たと思う」と高く評価する活躍を見せた。

 同選手権の予選、決勝の合計点を持ち点として争うNHK杯は、優位な立場。経験値のある先輩に追われるプレッシャーと戦った。あん馬では旋回が止まりかけたが「以前だったら落ちたかもしれないけど、落ちねえよ!と左手を思い切り出して粘ることができた。良い経験になったと思った」と粘り、演技後は滑り止め用の炭酸マグネシウムの白い粉が舞うほど大きく手をたたいて、ガッツポーズ。若者の勢いが見えた。

 一方、跳馬では、ヨネクラを跳ぶ予定だったが、ライバルが高得点を出したことや、会場入りしてからの感覚が良くなかったことを考慮。回転が半分少ないロペスに切り替えて着地を止め、着実に点を得る冷静な一面もあった。技を変える判断は、跳馬に手を着いた瞬間。橋本は、練習から切り替えられるようにやっていたと淡々と話したが、水鳥強化部長は「本当にコンマ何秒の世界だと思う。瞬間的に(技を)変えることは個人的にはあり得ない。我々の理解を超える感覚を習得していると言ってもいい」と、その難しさを表現した。

 第4種目の平行棒で着地が大きく乱れて2位ときん差になったが、最終種目の鉄棒で演技をまとめて逃げ切った。優勝者として場内インタビューに答えた橋本は「新型コロナウイルスの影響で五輪が1年延期になった。昨年の自分の状態だと、ケガの影響もあって、五輪に出られるか出られないか、難しい状態だった。この1年は、東京五輪で金メダルを取る練習をしてきた。そのおかげと、多くの人の支えがあってできた優勝で、代表をつかみ取ることができた」と大舞台に間に合った喜びを口にした。

 五輪の個人総合を2連覇している内村航平(ジョイカル)が、鉄棒種目に絞って、団体枠ではなく個人枠での五輪出場権獲得へ切り替えた体操ニッポンは、世代交代の真っただ中。五輪の1年延期で台頭した橋本は「内村さんは内村さん、僕は僕だけど、安定してチームの金メダルを獲得できる要因、一番頼りになる存在にはなりたい」と新たなエースとしての役割を担う意気込みを語った。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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