19歳・橋本大輝が体操の新エースに “世界最高レベル”の判断力と演技で優勝

平野貴也

5年越しの夢…リオの悔しさをバネに五輪切符獲得

2位で五輪出場権を手にした萱和磨 【写真:アフロスポーツ(代表撮影)】

 し烈だった2位争いは、萱が制した。第1種目のゆか運動で3位から2位に浮上して試合を進めたが、第4種目の跳馬で着地が乱れて減点。15.533の高得点を出した谷川航(セントラルスポーツ)に抜かれて3位に戻った。最終種目の鉄棒は、4月の全日本個人総合で片手が外れ、「自分が許せなかった」と話した痛恨のミスをした種目。練習では、何度成功しても、もう一度ミスをするのではないかという悪いイメージが付いて回ったというが、「ミスをする方が難しいところまで仕上げていればいいと思ってから、試合に向けてスムーズに自分をコントロールできたのかなと思う」と克服してきた。試合では、点数も順位も気にせず集中して臨んで演技をまとめた。萱の後に演技を行った谷川が離れ技のキャッチで左手が外れて得点を伸ばせず、順位が入れ替わった。萱は、優勝した橋本にわずか0.136点及ばなかったが、2位で五輪出場権を手にした。

 五輪内定が決まると、思わず涙。場内インタビューでも「5年、長かったなというのが……」と唇を震わせた。前回16年のリオ五輪の選考会では、わずか0.2点及ばず補欠。チームが団体戦で金メダルを獲得するのを現地で見た。今度こそ自分が夢舞台に挑戦するという思いは強く「1ミリも、東京五輪に出たい気持ちがぶれずに5年続いたことが代表入りにつながったのかなという部分がある」と話した。

残り2枠の争いは全日本種目別選手権へ

6月の全日本種目別選手権で代表入りを狙う谷川航 【写真:アフロスポーツ(代表撮影)】

 団体枠の4つの椅子に、橋本と萱が座った。6月の全日本種目別選手権が最終選考会。残り2名の選出は、橋本、萱との組み合わせでチーム得点が最も高くなるチーム貢献度が基準となる。1人は、NHK杯5位以内が条件で、3位の谷川、4位の三輪哲平(順天堂大)、5位の武田一志(徳洲会体操クラブ)が対象。もう1人は、10位以内が対象となる。4月の全日本総合で予選1位になりながら、決勝の鉄棒で落下して右ひじのじん帯を痛めた北園丈琉(徳洲会体操クラブ/清風学園高)は、苦しみながらも9位に入って可能性をつなげた。

 チーム貢献度の判定に採用されるのは、選考会5試合(全日本個人総合の予選、決勝、NHK杯、全日本種目別の予選、決勝)のうち、各種目得点が高い3試合の合計点。NHK杯で優勝争いに加わりながら3位となった谷川は、ここまでの3試合で、跳馬ではすべて15点台。貢献度の争いでも優位に立つが「ほかが、まだ稼げていない。6種目全部(大事)と思って、やらないといけない。時間があまりないので、どこをどうというより、試合で良い(パフォーマンス)のを出すコンディション、試合への持って行き方が大事かなと思う」と気を緩めずに最終決戦へ向かう気概を示した。

 全日本種目別で高得点を2度そろえれば、下位からの逆転も可能。北園は「ゆか、あん馬、平行棒、鉄棒が大事になってくると思うので、しっかり磨いて、完ぺき(な演技)を予選から出せるように、3週間準備していきたい」と話し、谷川を上回るのが難しい跳馬、日本勢の課題で高得点が取りにくいつり輪以外の4種目での勝負を見据えていた。成長著しい橋本、安定感のある萱とともに体操ニッポンのメンバーとして戦う2人は、誰になるのか。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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