皆川夏穂が表現する新体操の壮美と旋律 マット上で華やぐ「美しく、正しい演技」
王国・ロシアの強さの秘密は「正しい新体操」
2017年世界選手権の個人種目フープでは、ジーナ(中央)とアリーナ(左)のアベリナ姉妹が皆川の前に立ちはだかった。ロシア勢は東京五輪でも脅威となる 【写真:エンリコ/アフロスポーツ】
ロシアでは自分が目標とする選手がすぐ近くにいる練習環境だったので、「追いつきたい」「追いつこう」という気持ちで頑張ることができました。リオ五輪金メダリストのマルガリータ・マムン選手や銀メダリストのヤナ・クドゥリャフツェワ選手、今注目の双子のアベリナ姉妹(いずれもロシア)ら世界トップレベルの選手たちが隣のマットで練習していたり、一緒にアップをしたりしていたので、毎日刺激をもらっていました。
ロシアの選手の特徴は集中力が高い点ですね。長時間ダラダラと練習するのではなく、質の高い練習を心がけているのですごく勉強になりました。ロシアでは早く終わると「良い練習をした」と言われます。そのほうが体の回復をはじめ、他のことに時間を当てられますよね。
ロシアを筆頭に、イタリア、ブルガリア、ベラルーシと世界には超えなければならない選手がたくさんいます。でも、まずは自分の限界を超えることが大事だと思っています。「自分に克つ」をモットーにしているので、自分のスキルアップを頑張りたいです。また、練習の成果を100%出せるようにメンタルトレーニングにも力を入れています。普段からメンタルが安定していると、演技のパフォーマンスのブレも少なくなるので、練習後は切り替えてオフを満喫しています。最近は「愛の不時着」など、韓国ドラマを見るのが好きですね。後は、寝る前や朝起きた時に時間があれば、瞑想(めいそう)をするようにしています。
集大成となる東京五輪で思いが伝わる演技を
皆川は東京五輪で「人の心を動かす演技」を披露できるのか。まずは代表の座を決める選考会が待っている 【イオン新体操クラブ】
開催延期の決定を受けてすべての大会がキャンセルになり、一時期は「この先どうなるんだろう」という不安がありました。でも練習を重ねていくうちに、むしろ良かったとも思えるようになりました。1年半という期間でより難しいことに挑戦できるし、今より強い自分になれるんじゃないかなという気持ちが強くなりましたね。良いことも悪いことも両方乗り越えることで、「この時間は無駄じゃなかった」と今は思うことができます。
まだ五輪代表には内定していませんが、19年世界選手権で自分が勝ち取った出場枠なだけに、絶対に出場したいです。また、東京で私の演技をみなさんに見てもらいたいという思いが強いですね。残りの数カ月でできることをすべてやり切って、選考会では自分の力を120%発揮したいと思います。
現時点では東京五輪を集大成と位置づけているので、今までサポートしてくださった方たちに演技で感謝の気持ちを伝えたいです。そして、五輪を通して新体操をメジャーなスポーツにできればと思っています。
(取材・執筆:上田まりえ)