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GIANTS with~巨人軍の知られざる舞台裏〜
合言葉は「坂本勇人を国民的スターに」
偉業刻む“祭り” 支えた2人の88年世代
11月8日、史上53人目の2000安打を達成した坂本勇人選手。右打者では最年少というスピード達成だった
11月8日、史上53人目の2000安打を達成した坂本勇人選手。右打者では最年少というスピード達成だった【写真は共同】

 どよめきとともに、白球が左翼線へ飛ぶ。一塁ベースを蹴って二塁へと向かう背番号6に、球場内の視線が集まった。押し寄せる拍手の波に応えるように、主役は少しだけ表情を崩した。11月8日、東京ドーム。リーグ連覇を決めた読売巨人軍の本拠地最終戦で、球史に新たな1ページが加わった。


 坂本勇人選手が積み重ねた2000の快音。史上53人目、歴代2番目の若さ、右打者では最年少。記録としても際立つ偉業を、鮮やかな記憶としてどう刻むか――。1年がかりで築き上げていったプロジェクトは、坂本選手と同じ1988年生まれの2人にとっても特別だった。

坂本選手ならではの“色”を

 あと116本。来るべき節目に向けた準備は、昨年12月から始まった。読売巨人軍と読売新聞社が一体となり、横断型のプロジェクトチーム「HAYATO2000」を発足。今シーズンに坂本選手が達成するであろう2000安打の瞬間に照準を合わせ、企画を練り始めた。


「とにかく、祭りを作るんだ」


 今村司球団社長の言葉を旗印に、月1回のミーティングから始まった。当初のメンバーは11人。最終的に25人にまで拡大したチームのリーダーは、球団のブランドコミュニケーション部に所属する本城直貴さんが担った。


 2000本安打という偉業や球団の生え抜きとしては6人目となる快挙が、どのような価値を持つのかを考える。思い浮かべたのは、長嶋茂雄終身名誉監督や原辰徳監督ら球史を代表する存在だった。


「坂本選手はすでにスター選手であることは間違いない。そこからさらに、国民的スターへのステップアップを球団としてサポートしていきたいという思いが、プロジェクトチームの始まりでした」


 シーズン開幕、残り100本、残り61本、達成当日、達成翌日、記念セレモニー、シーズン終了後。時系列で7段階に分け、それぞれのタイミングに適した企画を議論。2017年に阿部慎之助2軍監督が達成した前例がありイメージはしやすかったが、坂本選手ならではの“色”も出したい。


「プロ1年目はファームで下積みを経験している選手。背番号も、61からのスタート。これまでとは少し異なる新たなスター選手像なのではないかなと」。スピード達成ばかりに注目が集まる中、14年間の軌跡も伝える責務があると思った。

とにかく“ポジティブ”に考えて

現在ファン事業部に所属する小山雄輝さんは2011年から6年間、坂本選手とともにプレーした
現在ファン事業部に所属する小山雄輝さんは2011年から6年間、坂本選手とともにプレーした【写真は共同】

 各部署から提案された企画は200以上。「面白いことをやろうと、まずは風呂敷を広げて」。グッズ、場内演出、ファンサービス、SNS、広報…。アイデアに年齢や役職は関係なかった。


「新入社員2人にも重要なミッションを担ってもらいました」。球団の2000安打達成者の中で、全ての安打の写真が球団内に残っているのは坂本選手が初めて。その1本1本を、NPBから提供された記録と照合しながら探す。朝から晩まで、およそ3週間、写真データベースとにらめっこした。


 プロジェクトチームが立ち上がった当初、史上最年少の31歳7カ月の更新も視野に入っていた。3月に開幕して順調に安打を重ねていけば、夏にはXデーを迎える。年明け、企画の立案も進行もスピード感を持たせようとした直後、事態が一変した。新型コロナウイルス感染拡大による開幕の延期。ようやく6月19日に幕が上がっても、予断を許さない状況が続く。坂本選手自身も、コンディション不良に苦しんだ時期があった。


 プロジェクトの日程は見直しを迫られ、立ち消えになった企画もあった。「どこまで盛り上げていくか、すごく考えさせられました」。状況次第では、今季中に達成しない可能性だってある。「僕らはとにかくポジティブに考えながら」と、記録達成の瞬間を思い描き準備に励んだ。背番号6がグラウンドで響かせる快音こそが、何よりの原動力だった。


 残り100本となった7月17日。目玉企画のひとつがスタートした。野球を始めた少年少女や共に戦ってきた元チームメート、親交のある芸能人・著名人らがエールを送る「カウントダウン動画」。さまざまな人に出演を依頼する業務の多くを担ったのは、もうひとりの“88年世代”だった。


「僕は、一部の戦友の人たちにお願いしたくらいですよ」。球団のファン事業部に所属する小山雄輝さんは、そう言って謙遜する。18年限りで現役を引退した元投手。巨人に入団した11年から6年間は、坂本選手の同僚として一緒にプレーした。選手目線の感覚を持った同い年の“相棒”は、本城さんにとっても心強い存在だった。

小西亮(Full-Count)

1984年、福岡県出身。法大卒業後、中日新聞・中日スポーツでは、主に中日ドラゴンズやアマチュア野球などを担当。その後、LINE NEWSで編集者を務め、独自記事も制作。現在はFull-Count編集部に所属。同メディアはMLBやNPBから侍ジャパン、アマ野球、少年野球、女子野球まで幅広く野球の魅力を伝える野球専門のニュース&コラムサイト

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