清水エスパルスが進める“グッズ改革” ファナティクスとの提携で何が変わる?

平柳麻衣

オフィシャルショップもリニューアル

ホームゲーム開催時のスタジアム店舗設営や販売業務もファナティクスが実施し、顧客回転率の向上を図る 【画像提供:ファナティクス・ジャパン】

 また、マンパワー不足により課題を解消できずにいた「商品発送の迅速化」も提携するメリットのひとつに挙げられる。これまでオンラインショップの商品梱包や発送作業はクラブ社員が担っていたため、「受注から10日以内の発送」としていたものをファナティクスが引き受けることで、16時までの受注であれば当日中の発送が可能となる。例えば、「今週末の試合観戦までに商品が届くのかどうか」で、顧客の購入意欲にも変化が表れるだろう。

 ホームゲーム開催時のスタジアムにおける実店舗の設営や販売業務もファナティクスが担当し、顧客回転率の向上を図る。試合開始前のファン・サポーターの“時間”を奪わないようさまざまな工夫を凝らし、店舗の混雑解消とともに顧客のストレスを軽減させることが目的だ。

『エスパルスドリームハウス』清水店は来年2月のシーズン開幕に合わせてリニューアルオープン予定 【画像提供:ファナティクス・ジャパン】

 実店舗では、クラブオフィシャルショップ『エスパルスドリームハウス』があるが、県内各地に6店舗を展開していたうちの5店舗がコロナ禍での経営悪化の影響を受け、9月23日に一斉閉店した。唯一残った清水店が構えられているのは、静岡市清水区港町の通り沿い。しかし、『エスパルス通り』と名づけられているこの場所は、周辺の店が閉店しつつあり、活気あふれた街並みとは言い難い。この清水店をファナティクスの力を借りて来年2月のシーズン開幕頃に合わせてリニューアルオープンさせ、オフィシャルグッズの旗艦店『エスパルスストア』として注力していく。

「エスパルスとしてはやはりチーム強化への投資が優先されますから、なかなか店舗への投資ができず、人手も少ないなかでやってきました。すると、できることには限りがあって、ファンがワクワクするような見栄えのある店舗づくりをしようと思っても、20年近く使い続けている棚を少し動かして模様替えをしてみるといった程度なので、自分たちでは変えたつもりでも、お客さまから見たら代わり映えしていない。

『エスパルス通り』のなかでも店舗がパッと目に飛び込んでこず、『暗い感じがして入りにくい』『いつ来ても同じような感じがする』といったお客さまの声も聞いています。それが今回のリニューアルではファナティクスさんの力によって刷新され、外観のデザインや店舗内のレイアウトだけでも明るくてオシャレな雰囲気になりますし、季節ごとなどのディスプレイもプロの知見で実施していくと伺っています。お客さまがいつでもフラリと立ち寄れる憩いの場所になると良いなと思います」(石川氏)

購入したその場で背番号やネームを加工

清水とファナティクスに共通する「ファン至上主義」。ファン・サポーターの満足度を高め、事業、収益の安定化を目指す 【平柳麻衣】

『エスパルスストア』やスタジアムの実店舗では満足度の高い「購入体験」の提供がテーマのひとつ。なかでもユニホームの背番号などを加工する圧着機の導入は、「購入体験」を大きく変化させるポイントとなりそうだ。

「海外クラブのショップではよくある光景ですが、リニューアル後の店舗では購入したユニホームにその場で背番号やネームを加工することができるようになります。お客さまにとってはその瞬間を見て楽しめることに加え、これまでのように工場での加工を待たずにその場で商品を持ち帰ることができるため、スピード感が格段に上がります。それは実店舗ならではの『購入体験』の提供と言えると思います」(エスパルス・ブランディング推進本部 佐々木芳郎氏)

 圧着機の導入により、プロ野球ではすでに実現されているが、背番号やネームだけでなく、オプションとしてワッペンなどをつけた自分だけのオリジナルユニホームへのカスタマイズも可能だという。さらに、今後は店舗でのイベント開催なども視野に入れており、あらゆる手段でファン・サポーターに満足度の高いサービスを提供していく。

「現在、店舗内の半分くらいがオンラインショップ分の在庫管理スペースになってしまっているのですが、リニューアル後はそのスペースを利用したイベント開催なども今後検討していきます。きれいでブランドショップのような見栄えでありながら、ファン・サポーターにとって親しみやすい場所となれば、人が集まり、『エスパルス通り』や周辺の街の活性化にもつながるはず。これも地域貢献のひとつの方法ですし、多くのファン・サポーターの方にワクワクしながら店舗に足を運んでもらえたらと思います」(山室社長)

 清水とファナティクスに共通する「ファン至上主義」。ファン・サポーターの満足度を高めていくことが事業的、収益的安定をもたらし、ひいてはチーム強化にも循環をもたらす。今回の契約では、物販収益を約4億円から2倍近く伸ばすことを目標数値としている。

「大きな転換期になる。試合だけでなく、その余韻の中で買い物も楽しんでもらい、日常生活でも多くのファン・サポーターにエスパルスグッズを身につけてほしい」

 山室社長が思い描く未来図には、より一層、エスパルスオレンジに染まった静岡・清水の街がある。

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著者プロフィール

1992年生まれ、静岡県出身。静岡を拠点に活動するフリーライター。清水エスパルスを中心に、高校・大学サッカーまで幅広く取材。『サッカーキング』や『S-PULSE NEWS』などに寄稿する。

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