ブンデスで戦う日本人選手の語学力は? ドイツ在住記者が見た、知られざる一面

島崎英純

ドイツ語の先生が聞いた印象は?

原口元気はドイツ語で十分にコミュニケーションを取れている様子 【Getty Images】

 先日、勉強のために、ドイツ語を習っている先生と一緒に日本人ブンデスリーガーがドイツ語を話しているシーンを集めた映像を見ました。そのときに先生が話してくれた各選手のドイツ語の印象がとても面白かったので、ご紹介します。まずは長谷部選手について。

「もう、何も言いようがないほど上手だわ。そもそもマコトはフランクフルトでもとても有名で、地元の人はみんな彼が大好きだから、完全にこの街に溶け込んでいるわよね。ただ、彼も言っていたらしいけども、細かい部分ではドイツ語のネーティブではない話し方をしているわね。でも、そんなのはコミュニケーションを図る上で全く問題にならないし、ドイツ人も彼の言葉を聞いて揚げ足を取ることなんてないはず。そんなドイツ人がいたら、私が怒るわよ(笑)」

 さすが長谷部選手。ちなみにフランクフルトのサポーターは彼のことをファーストネームのマコト、もしくは『ハーゼ』と読んでいます。『ハーゼ』とはドイツ語で『ウサギ』という意味でもあります。

 続いて、ブンデスリーガ2部のハノーファーに在籍する原口元気選手。実は彼、かなりドイツ語がうまくて、僕自身、彼からは「もっとドイツ語を勉強しなよ」と叱られています(笑)。ドイツ語先生の、原口選手のドイツ語評はこんな感じです。

「ドイツ人記者とのインタビューに答えている原口くんのシーンを見たけど、彼は完璧に相手の言っていることを理解していて、しっかりと意味のある回答をしているわね。もちろん単語の語彙(ごい)については、まだ少ないように思うけども、彼は思った以上にドイツ語に精通していると思う。素晴らしいわ」

 原口選手本人のドイツ語への自信は間違いなかったようです(笑)。

英語も話す宮市は非の打ち所なし

 さて、お次は同じくブンデスリーガ2部、ザンクトパウリでプレーする宮市亮選手。彼は高校卒業時にイングランドのアーセナルへ移籍し、オランダでのプレーを挟むなどしてヨーロッパでの生活が約9年を過ぎました。

「彼はおそらく、今のブンデスリーガに在籍している日本人選手の中で、一番ドイツ語がうまいと思うわ。そもそも彼は英語も得意なんでしょ? 彼の話し方、抑揚などはネーティブに近くて、とてもスムーズ。会話のテンポも素晴らしくて、非の打ち所がないわね。本当に素晴らしい」

 宮市選手が試合終了後のミックスゾーンで地元ドイツ人記者の質問に答えている場面に遭遇したことがあります。彼はドイツ人記者からの「英語で話す?」という問いに対して、「ドイツ語で大丈夫ですよ」と返して、すらすらと答えていました。うーん、ここにも語学堪能で聡明(そうめい)なサッカー選手がいらっしゃる。

 最後にオマケとして、南野拓実選手のドイツ語についても先生に語ってもらいました。南野選手は以前、ドイツ語圏のオーストリアの強豪ザルツブルクに在籍していて、現在所属しているリバプール(イングランド)の指揮官であるユルゲン・クロップ監督とはドイツ語で話すこともあるそうです。

「南野くんのドイツ語は、とても基本に忠実だと思うわ。たぶん彼、相当ドイツ語を勉強したんだと思う。しかも、ちゃんとした学校、もしくは家庭教師から習ったんじゃないかな。話し方もそうだけど、文法などもかなりしっかりしていて、彼自身、とても真面目な性格なんじゃないかしら。今回見た選手全員に言えることだけど、みんな、本当に素晴らしいドイツ語を話していると思うわよ」

 プロサッカー選手は試合に勝利することを常に追い求めながら、自身の立場をも確立させ、厳しい生存競争に打ち勝っていかねばなりません。いわば『生きるか、死ぬか』の極限状態に立たされたとき、彼らはおのおの備え持つ、その潜在能力を十二分に発現させるのでしょう。

 日本人ブンデスリーガーのプレー、そして、今後は彼らの語学力にも注目です。

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著者プロフィール

1970年生まれ。東京都出身。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当記者を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動。現在は浦和レッズ、日本代表を中心に取材活動を行っている。近著に『浦和再生』(講談社刊)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信。ほぼ毎日、浦和レッズ関連の情報やチーム分析、動画、選手コラムなどの原稿を更新中。

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