まるでサッカー界の“桜木花道“!? 強烈な個性を放つ、神戸・菊池流帆

エルゴラッソ

ルーキーイヤーの奮闘、J1移籍へ

 高校で初めてバスケットボールを始めた桜木と、長年サッカーをやってきた菊池を同列に語るのは失礼ではあるが、その堂々たる体格から発揮される強じんなフィジカル、見る者の予想を超えてくるプレー、無限のポテンシャルを感じさせながら、どこか素人的な危うさも感じさせる様は、どうしても重なるものがあった。

 劇的ゴールも経てレギュラーの座を確保したかに見えたが、第11節・金沢戦では思わぬミスから先制点を献上。その後、数試合の間スタメンを外れることもあり、プロとしての挫折も味わった。
 しかし第16節でスタメン出場を果たすと、以降は出場停止の1試合を除く全試合にスタメン出場。課題のビルドアップでも成長を見せ、ぎこちないながらもライン間へ鋭い縦パスを入れたり、「アタッキング・パス(レノファ用語で相手の最終ラインと同じ高さで受けるサイドチェンジ)」を決めるなど、足技で貢献する場面も増えてきた。

 もともと超人級だったフィジカルは、試合に慣れるとともにますます強みとして機能。J2の屈強な外国籍選手にも引けを取らず、生半可なパワーのFWではまるで起点になれない。スピードも目を見張るものがあり、裏を取られながら自力で追いついてしまう場面が何度もあった。その分、ポジショニングはやや不安定な面もあったが。

 最終的には全42試合中35試合に出場。3得点を挙げたが、そのうちの2つが決勝点と勝負強さも見せた。最終節終了後の囲み取材では、「メンタル面の成長が大きい。余裕をもってプレーできるようになったことが一番の成長」と語り、1年目からこんなに試合に出ることをイメージしてプロに入ってきたか? の質問には「もちろんです」と迷いなく答え、チームが15位に終わったこともあり「もっと目に見える結果が欲しかった」と悔いた。

 しかしその活躍は評価され、ヴィッセル神戸からのオファーを受けて完全移籍。わずか1年でJ1への個人昇格を果たした。J1クラブへの移籍のあいさつが「日本代表になってきます!」と、どこまでも上昇志向。

“新しい姿”に感じる菊池の伸びしろ

 しかしさすがの“ダビド・リューホ”(菊池のニックネーム)といえども、J1、それも代表クラスやワールドクラスを抱える神戸では思うように出場できていない。13試合を終えた時点で、出場3試合とベンチ入りが3試合。プロ2年目でJ1挑戦1年目ということを考えれば悪い数字でもないと思えるが、J1のさらにその先の、高い目標を掲げる男にとってそもそも試合に出られないこと自体が我慢できないのだろう。

 久しぶりの出場となった第12節・浦和レッズ戦。筆者も久しぶりに現地で彼のプレーを見ることができたが、そこには面影を残しながらも、新しい菊池流帆の姿があった。

 気持ちと当たりの強さ、咆哮(ほうこう)、どこかのぞくぎこちなさはそのまま。サイドチェンジを狙って引っかかるなどパスミスもあった。しかしビルドアップの際、体の向きを工夫しながらボールを持ち運ぶ姿に、神戸での成長が垣間見えた。

 山口時代もスペースへ持ち上がるシーンはあったが、詰まってしまいボールをロスト、ファウルして戻ってくるという場面が多かった。ただこの日は違った。

 守備でもむやみに飛び込むようなことはなく、存分に肉体を生かし、絶体絶命のピンチにもゴール前まで戻ってカバー。『#DAZN週間スーパーセーブ』にも選出された。
 次の川崎フロンターレ戦では残念ながらメンバーから外れてしまったが、YBCルヴァンカップやACLも控えている神戸には未曽有の連戦が待ち構えており、自ずと出番は増えてくるだろう。そこまでは「悔しさの貯金(自身のnoteより)」をしつつ機会を待ちたい。

 大学卒業時にオファーのなかった選手から、1年でJ1リーガーに。そしてその先へ。これほどの成長を見せながらも、まだまだ伸びしろをたっぷりと残しているようにも見え、代表も海外も夢ではないように思わせるスケール感。今後も菊池流帆から目が離せない。

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著者プロフィール

サッカー新聞エル・ゴラッソ。通称エルゴラ。国内外の最新サッカーニュースを日本代表の番記者、J1・J2全40クラブの番記者、海外在住記者が、独自の現地取材をもとに、いち早くお届けします。首都圏の駅売店およびコンビニエンスストア・関西地域の主要駅売店にて発売中。

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