中断期間にチームが激変… 今、俺たちのJリーグが格段に面白い

エルゴラッソ

ベテラン勢の活躍もアクセントに

再開後に3連敗だった柏は、大谷秀和をスタメンで起用した5節から4連勝と盛り返している 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 ひと足先に本場のトレンドに追随し、昨季のJ1を制したのが横浜F・マリノスだった。しかし、今季は思わぬ苦戦が続いている。主力の負傷離脱や海外移籍などの影響も大きいが、ビルドアップやハイプレスの局面で昨季のような優位性を維持しにくくなった側面も小さくない。
 
 事実、2月の開幕戦でガンバ大阪のハイプレスをまともに食らい、肝心のビルドアップが破綻をきたして1-2と敗れている。いや、G大阪だけではない。再開後の北海道コンサドーレ札幌戦では前からマンツーマン気味にはめられ、ビルドアップの出口を失い、1-3の完敗を喫した。

 昨季の戦い模様とは明らかに違っているのだ。プレスの手順が整理され、強度も高まったことに伴い、ビルドアップのテコ入れが必要になった。これも再開後の大きな変化と言っていい。
 
 興味深いのはバックスの手前でピボットの役割を担うベテラン勢の働きだろう。横浜FCの佐藤謙介、柏レイソルの大谷秀和、サガン鳥栖の高橋秀人らがそうだ。いずれも2月の開幕戦ではスタメンから外れ、大谷と高橋は再開後もサブに回る試合が続いていた。
 
 再開後に3連敗と不振にあえいでいた柏は大谷をスタメンで起用した5節の湘南ベルマーレ戦から4連勝。また、開幕から6戦勝ちなしの鳥栖も高橋をスタメンに据えた7節のセレッソ大阪戦で引き分けると、続くFC東京戦で待望の初白星を飾っている。彼らの巧みな位置取りと確かな配球がビルドアップに落ち着きをもたらし、持ち前の危機察知能力でピンチの芽を摘み取って、攻守の両輪を回すキーパーソンとなったのだ。
 
 プロ入り10年目にして初めてJ1の舞台に立った佐藤もツボを心得たパスワークを披露。軽快なワンタッチパスを操り、ビルドアップの要となっている。さらに、FC東京の新たなピボットに定着した感のある高萩洋次郎にも同様のことが言えるかもしれない。若いタレント群の活躍が目につく一方、熟練者が持てる力を使い切り、その値打ちをしたたかに印象づけている点も再開後の面白さに拍車をかけている。

センターバックの必須要件が変化

ドイツ王者のバイエルンも中盤やサイドバックが本職の180cmのダビド・アラバがセンターバックへとコンバート。ビルドアップの能力や速さを重視する人選となっている 【写真:代表撮影/ロイター/アフロ】

 また、ビルドアップの強化として見逃せないのがコンバートだ。中盤やサイドバックを本業にしてきた選手をセンターバックに使うケースが出てきた。横浜FMの松原健や鳥栖の原輝綺(はら・てるき)らがそうだ。どちらもサイドバックとして鳴らした攻撃力や走力を十全に生かし、ビルドアップやライン裏のカバーリングに一役買っている。
 
 思えば、UEFAチャンピオンズリーグの準々決勝でバルセロナ(スペイン)に8-2で大勝したドイツ王者のバイエルンも、中盤やサイドバックが本職のダビド・アラバを2センターバックの一角に据えている。ビルドアップの質を高め、ライン裏の守りを強化するための転向だったか。
 
 近年の日本ではセンターバックの必須要件としてサイズの大きさ(高さ)が強調されてきたが、アラバは180センチ。松原や原の身長と同じである。高さよりもビルドアップの能力や速さを重視する人選というわけだ。なお、J2で首位争いを演じるギラヴァンツ北九州では171センチと小柄な大卒新人の村松航太が2センターバックの一角を担い、攻守の両面で出色の働きを演じている。
 
 ともあれ、再開後に見受けられる数々の変化は、アグレッシブに敵のゴールを目指すチームが増えたことと無縁ではないだろう。見る者を熱狂させるゴールラッシュはリスクを伴う戦い方の裏返しでもあるが、そのぶんスリリングな攻防が展開されるのだからエンターテインメント性はすこぶる高い。それも中2日、中3日というハイペースで拝めるのだ。何ともぜいたくな話である。もっとも、筋金入りのファン・サポーターにとっては心臓に悪いのかもしれないが……。
(企画構成:エルゴラッソ 文:北條聡)

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著者プロフィール

サッカー新聞エル・ゴラッソ。通称エルゴラ。国内外の最新サッカーニュースを日本代表の番記者、J1・J2全40クラブの番記者、海外在住記者が、独自の現地取材をもとに、いち早くお届けします。

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