ブラインドランナーと伴走者は一心同体! 1本のロープがつなぐ、ふたりの絆

荒木美晴

選手は走りに集中、ガイドランナーが合わせていく

ふたりは練習の精度を上げるため、ときには仕事後に夜間練習を行うそうだ 【写真:荒木美晴】

 視覚による情報獲得ができない視覚障がい者は、空間把握が困難とされる。全盲の鈴木は壁が近いと圧迫感を感じることがあると言い、青木さんが周りに何も障害物がないことを確認してからトレーニングを始めるという。また、見えないために「上」への距離感がつかみづらく、ジャンプ系のドリルは特に着地のタイミングが難しいそうだ。「このように」という手本を見ることもできないため、要点を理解するのにも時間がかかる。ふたりは練習の精度を上げるため、互いの仕事のあとに合流して、夜間練習に取り組むこともあるそうだ。

 レースでは、選手は自分の走りに集中し、ガイドランナーが脚のポジションやテザーを持つ手のふり幅を合わせていくのがセオリーだ。200メートル走ではスムーズなカーブ攻略の技術も必要になる。内側の青木さんが鈴木との距離をコントロールし、鈴木は遠心力に負けない走りを心掛ける。「スタミナがなくなると、どうしても外に振られてしまう。カーブを抜けたあとも注意が必要です」と鈴木は話す。

200m走ではスムーズなカーブ攻略の技術も必要になる 【写真:荒木美晴】

 そこで、鈴木は冬の間に重点的にフィジカルトレーニングに取り組んできた。青木さんから見てもその体つきに変化が現れていると言い、「大きくなった出力を、これから走りに生かしていく」という。

 ガイドランナーは、フィニッシュラインを選手よりも先に横切った場合に失格となる規定がある。最後までコントロールを保った走りをすることが必要なため、青木さんもトレーニングを欠かさない。そして、ふたりが目指すパラリンピックでは、3位以内に入った場合はガイドランナーにもメダルが授与される。胸に輝くそのメダルは、選手とガイドランナーの「絆」の証しでもあるのだ。鈴木と青木さんの最高の笑顔を見られる日を、楽しみに待ちたい。
◆◆◆ NHK番組情報 ◆◆◆
「武井壮のパラスポーツ真剣勝負」
「百獣の王」武井壮さんがパラスポーツを体験、トップアスリートとの真剣勝負に挑みました。今回は「パラ陸上」に挑戦! 戦いの結果は……。

2/2ページ

著者プロフィール

1998年長野パラリンピックで観戦したアイススレッジホッケーの迫力に「ズキュン!」と心を打ち抜かれ、追っかけをスタート。以来、障害者スポーツ全般の魅力に取り付かれ、国内外の大会を取材している。日本における障スポ競技の普及を願いつつマイペースに活動中

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント