マンCへの処分撤回がもたらすもの CASの判決でFFPの未来はどうなる?

エルゴラッソ

CASの判決が正しいのか、正しくないのかまではわからないが、今回の判断は今後のFFPのあり方に大きな影響を与えるはずだ 【写真:ロイター/アフロ】

 たしかに各方面から多くの発言が出てくるのも納得できる。シティ幹部同士の不正に関するメールでのやりとりも証拠として出てきている。また今回の件でCASに上訴するに当たってシティが3000万ポンド(約40億円)もの資金を投下して、世界中から凄腕弁護士を50人も集めたと英紙『ザ・サン』が報じた。

 これらの情報をつなぎ合わせれば「金満クラブが自クラブの不正を金にものを言わせてもみ消した」と見えなくもない。

 ただしそもそもこれらの不正に関する証拠は、ポルトガル人ハッカーのルイ・ピント氏が違法なハッキングによって入手したものである。信ぴょう性もさることながら、これを裁判所が下す判断の参考情報として取り扱えるかどうかは、もともとかなり微妙なところであった。しかも忘れてはならないのは、どれだけ黒に見えたとしても、現段階では裁判所が黒と断言できる証拠は残っていないのだ。

FFPの未来は…

 ただし上記の識者たちも、ただただ感情論で、今回の判決に対して嘆いているのではないのかもしれない。というのも『BBC』の有名サッカー番組『マッチ・オブ・ザ・デイ』では、MCを務める元選手のギャリー・リネカーが「UEFAのFFPはこの事態を乗り越えることは難しいだろう。実際、この影響を解決できるのか?」とツイート。
 事実はさておき、確かにこれだけ「全員がルールを守っている」という前提に対して不信感が募っている状況では、UEFA傘下の全クラブが今後も守り続けるかは悩ましいところである。

 あるいは、そもそもイングランドでは、ウィガン、ブラックプールなど10年前まではプレミアリーグで常連だったクラブたちが、次々に破産申告している現実があり、そもそも健全経営を維持するためのルールであるFFPは機能しているのかについて疑問視する声もある。

 今回のCASの判決が正しいのか、正しくないのかまではわからない。ただし一つ確かなことは、FFPは今、一つの岐路に立っているということだ。

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著者プロフィール

サッカー新聞エル・ゴラッソ。通称エルゴラ。国内外の最新サッカーニュースを日本代表の番記者、J1・J2全40クラブの番記者、海外在住記者が、独自の現地取材をもとに、いち早くお届けします。首都圏の駅売店およびコンビニエンスストア・関西地域の主要駅売店にて発売中。

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