高校生たちへ、大迫・桐生・寺田が団結 オンラインで議論「陸上で新しい形作る」

構成:スポーツナビ

大迫の高校時代、唯一の楽しみは銭湯

寺田は高校で始めたハードル種目でインターハイ3連覇を果たした 【写真:アフロスポーツ】

――日本を代表する選手になった3選手に高校時代を振り返ってもらいます。

寺田 陸上に関して言えば、100メートルハードルをはじめたのが高校1年生からです。はじめてハードルを跳んだのが(恵庭北)高校入学直前で、4〜5月の札幌支部大会でハードルデビューでした。やっぱりハードルをやったことがないので、すごくドキドキして札幌支部大会に臨んだ記憶があり、その時、14秒07くらいでしたが、当時の監督だった中村(宏之)監督が「ハードルと100メートルでいってみよう」と言ってくださって、そこから100メートルとハードルをやるようになりました。

 インターハイはまだ3試合目でしたので、思い出に残っています。1年生で優勝できたのは、ラッキーだったなと思っています。流れを作ってくれたのは高校の先生方や部活のみんなだったので、今でも感謝しています。(高校時代は)眉毛もなかったですし、結構ツンツンしていました(笑)。

――高校時代に一番印象に残っていることは?

寺田 先生方には、「あなたは今『何でもできる』『陸上しかない』と思っているけど、あなたの人生は陸上だけではありません。そのほかのあなたの人柄や陸上以外にできることを、みんなは見てくるので、今から考えておきなさい」と言われました。その時はトゲトゲしていましたし、「そうかなぁ」くらいにしか思っていませんでしたが、進路のこと、自分がどうなっていたいかを考えた中で、先生の言葉は大きかったと、今では思います。

――桐生選手の高校時代はどうでしたか?

桐生 学校にいる記憶しかないです。練習も学校の中でしたし、家にいる時間が本当になかったですね。(実家から)通っていたので、高1なら4時半とか5時に起きて、1時間15分くらいかけて通学していました。家は寝るためにあるという感じでした。洛南高校は、試合も学ランで行かないといけなかったですし、月〜金は授業で、土日は練習だろうと試合だろうと学ランだったので、私服を1枚も持っていませんでした(一同爆笑)。私服で行くとしても兄貴の服を借りていました。それが普通だと思っていたので、寺田さんの話を聞くと、もっと遊んでおければ良かったと思いました(笑)。

桐生は高校3年生の時、10秒01を出して世間を騒がせた 【写真:アフロスポーツ】

――高校生の桐生選手は、10秒01を出してすごかったですね。自分でも記録が出ると思いましたか?

桐生 この頃は記録が出ると思っていませんでした。最近、Twitterで「高校時代の10秒01と大学の10秒01とまったく違う」ってつぶやいたんですよ。高校の時は、狙ってなくて出た(記録)。大学の時は100パーセント出ると思って出した(記録)。気持ちの部分が全然違いますし、体の成長と心の成長は違うな、と思いましたね。

――2016年リオ五輪のリレーで銀メダル、そして100メートル9秒98で当時の日本記録。高校の10秒01出したくらいから、そういう目標を持ち始めたのですか?

桐生 9秒台は(目標に)見ていました。だから、10秒0台はびっくりしない、自分の今の力なら出ると思ってやるようにしています。高校みたいに、10秒0台を遠くに感じていたら、選手としてダメだと思うので、10秒0台を出せる力があり、9秒9や9秒8を狙うためには、10秒0を過大評価してはいけないと思います。

――大迫選手の高校時代は? 大迫選手は東京都出身ですが、高校は長野県の佐久長聖高校に行きましたね。親元を離れる、地元を離れるのは勇気がいることかと思いますが、何の問題もなかったですか?

大迫 当時は東京都に強い高校がなかったので、中3のタイミングで(地元を)出たいと(心が)固まっていたので、(問題は)なかったですね。県外に行くことを決めていて、佐久長聖が一番自分に合うかなと思って決めました。

 高校時代はめちゃくちゃストイックでしたね。佐久長聖がそういう高校ではありました。外出が禁止というか、外出する時間もないし、携帯もないし、買い物が2週間に1回。近くにスーパー銭湯があるので、サウナに入って、汗をかいて脱水状態になり、自販機のコーラで体を潤す、のだけが楽しみでしたね。

――桐生選手も大迫選手も壮絶な高校だったんですね。

大迫 桐生がそういう生活だったのは意外でしたね。短距離ってそういうイメージがないので。もうちょっとノビノビ、フリーにやっているイメージがあって、いつも良いなと思っていました。

桐生 自分は生活がノビノビできたのは大学から。高校はルールがありましたね。1年生の時は厳しかったです。自販機、コンビニは1年生ダメ。白シャツだけ、白シャツイン。今は全部変わっているらしいですが。昔っぽいルールが僕の時はありましたね。大学になってからはめちゃくちゃ楽でしたもん、生活が(笑)。実家じゃないのがうれしかったですね、寮でしたから。1人の時間が増えたのが良かったですね。

――高校時代、寮生活だった大迫選手はどうでした?

大迫 かなり管理されていたので、窮屈でしたね。大学も寮でしたが、自由がきく寮でした。一番嬉しかったのは、コンビニに行けること。アイスを買えるのがいいなんて! しばらくアイスを買っていましたね(笑)。

――寺田選手は?

寺田 自由でした! 陸上だけじゃないって。ノビノビ。北海道にいたっていうのもあり、結構ノビノビ過ごしていました。アイスももちろん食べていました!(笑)

大迫 いいなー。

大迫は高校駅伝や1000万メートルの記録で、世代のトップを走った 【写真は共同】

――高校時代の自分に今何を言いたいですか?

寺田 興味をもったものには積極的に取り組む!

大迫 特に……。良くも悪くも、その時(の記憶)がなくて、ストイック過ぎて覚えていないし、何を声掛ければいいのだろう……。でも、集中した時間って今ではない時間で、このまま行け!って感じですかね。ストイックになれるだけなってみれば、って感じですかね。

桐生 もうちょっとノビノビ、周りを気にしなくて良かったかな。10秒01を出した時、今は「世間は見ているけど、そこまで見ていない」こと、世間は自分が思っているほど自分に興味ないことをわかっていますが、高校の時はそういうことを考えられないので、「テレビに出たらみんな(自分を)見ている」って思っていました。気にせずにいろいろやっておけば良かったと思いました。

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