ラ・リーガ再開を待ちわびて――往年の名選手たちも興奮を隠しきれない

豊福晋

上段左から一人飛ばしてルイス・ガルシア、フェルナンド・サンス。中段左からメンディエタ、カヌーテ、マクマナマン。下段左からフォルラン、カランブー。7人のアンバサダーが思いを語った 【写真提供:La Liga】

 ラ・リーガが戻ってくる。

 新型コロナウイルスの世界的まん延により3月半ばより休止していたリーガは、6月11日のセビージャダービーを皮切りに再スタートを切る。バルセロナとレアル・マドリーの優勝争い、セビージャ、レアル・ソシエダ、ヘタフェ、アトレティコ・マドリー、バレンシアなど複数チームが絡んだ来季のチャンピオンズリーグ出場権争い、そして緊迫した残留争い――。それぞれのクラブの命運を懸けた残り11試合からは、多くのドラマが生まれるだろう。

スペインで最も熱いダービーから再開

ラ・リーガ再開はセビージャ・ダービーから。写真は2019年11月10日に行われたベティス対セビージャ 【Getty Images】

 待望の再開を前に、世界中に散らばるラ・リーガのアンバサダーがそれぞれの思いを語りあった。リモートで集ったのは、ルイス・ガルシア、ガイスカ・メンディエタ、フレデリク・カヌーテ、スティーブ・マクマナマン、クリスティアン・カランブー、ディエゴ・フォルラン、フェルナンド・サンスという、過去のリーガを彩った選手たちだ。

 ラ・リーガ再開を飾るのは、セビージャ対ベティスという、スペインで最も熱いダービーとも言われる試合だ。

 この試合を誰よりも楽しみにしているのが、元セビージャのストライカー、カヌーテだ。長身と長い手足を生かした柔らかなプレーを懐かしく思うファンも多いだろう。カヌーテは言う。

「ついに再開だ。なによりも、古巣のセビージャの試合を楽しみにしている。この試合はこれまでで最高のダービーになるはず。無観客試合ということで、歓声や雰囲気の面では普段とは違うものになるだろう。でも今はテクノロジーも発達しているし、リーガもオリジナルなものを準備していると思う。ぜひファンにはリラックスしてサッカーを楽しんでほしい」

 バルセロナとアトレティコでプレーしたルイス・ガルシアも、注目の試合は古巣の激突だという。彼はホームアドバンテージの変化に着目しているという。

「もちろん注目はアトレティコ対バルサだ(編集注:7月1日に対戦予定)。再開後のポイントは、ホームチームがこれまでのようなアドバンテージを失うということ。それは大きなスタジアムだけでなく、小さなスタジアムでもそうだ。例えばエイバルのイプルアを包む、選手の背中を押すような雰囲気はなくなるし、選手としては少し変な感じだろうね」

 3カ月の中断を経た再開という特殊な状況を前に、ルイス・ガルシアは選手に伝えたいことがあるという。

「最初の1、2試合はもちろん全力を出しつつも、ケガをしないように細心の注意を払ってほしい。コンディション面はなにより大事だし、そこは注意してほしい」

 フォルランも同じく「ケガには注意しないと」と同調する。実際にピッチに立っていた彼らとしても、選手の状態やケガは気になるようだ。

残り11試合、どんな展開が待っているのか

 現在は英国に住み、時にDJもこなす多趣味なメンディエタは、サッカーがある日常を心待ちにしている。

「この3カ月間は料理や庭の手入れをしたり、エクササイズをして、普段できないことを楽しんでいたよ。いつもはラ・リーガのアンバサダーの仕事で世界中を回っているから、久しぶりに家でゆっくり家族と過ごしていた。でも早く世界を周りたい。個人的には、6月18日のマドリー対バレンシアの大一番を楽しみにしている。もはやサッカーはスポーツの枠を超えた、ひとつの産業になっている。リーガは国際的なブランドだし、再開は誰にとってもポジティブなことだ」

 同じくイングランドからは元レアル・マドリーのマクマナマンも参加した。会議中、なぜかカランブーの音声だけが聞き取りづらく、マドリーの元チームメートのマクマナマンは「カランブーの通信環境はどうなってるんだ? 誰かあいつが何を言っているのか訳してくれよ」とイジり続け、場を和ませていた。再開の興奮を隠しきれなかったのもマクマナマンだ。

「とにかく楽しみだ。先に再開したブンデスリーガも見たけど、やっぱりラ・リーガは私にとって一番。それが最高の試合、セビージャダービーで始まるというのは、これ以上ないスタートだ。個人的にはもちろんマドリーに注目しているし、バルサとの勝ち点差2を詰めてぜひ逆転優勝してほしい。そして9月に迎える新シーズン、このパンデミックが落ち着いてサッカーがファンのもとに戻ってくることを願おう。もう、新たなロックダウンには戻りたくないから」

 元レアル・マドリーのフェルナンド・サンスは、この難しい時期だからこそ、リーガは世界にエンターテインメントをもたらせるという。

「世界のファンに最高のパフォーマンスを見せるためにラ・リーガは全力で取り組んできた。ついに再開にたどり着けたのは、選手やクラブ、関わってきた人たちのおかげだ。リーガはこの苦しい時期に人や家族をつなげる役割も果たせるはず。ようやく、世界最高のリーグをみなさんにお届けすることができる」

 再開を前にした興奮が画面越しに伝わってくる。残りの11試合、ラ・リーガにはどんな展開が待っているのか――。6月11日の夜、サンチェス・ピスファン(セビージャの本拠地)に再開のキックオフが響く頃、彼らを含む世界に散らばるリーガファンが、それぞれの画面に釘付けになるだろう。
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著者プロフィール

ライター、翻訳家。1979年福岡県生まれ。2001年のミラノ留学を経てライターとしてのキャリアをスタート。イタリア、スコットランド、スペインと移り住み現在はバルセロナ在住。5カ国語を駆使しサッカーとその周辺を取材し、『スポーツグラフィック・ナンバー』(文藝春秋)など多数の媒体に執筆、翻訳。近著『欧州 旅するフットボール』(双葉社)がサッカー本大賞2020を受賞。

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