連載:怯まず前へ 常に結果を出し続けるチームと強い心の作り方

コロナ禍をどう切り抜けるか 酒井監督が描く東洋大のリスタート

構成:ポプラ社

チーム作りで意識しているのは、選手たちのカラーや個性を尊重すること。学生たちの先の人生につながる指導を心掛けているという。 【写真:松本健太郎】

 東洋大学は、2020年の箱根駅伝で10位に終わるものの、2区と5区で区間賞を獲得。MVPである金栗四三杯を相澤晃選手(現・旭化成)が獲得した。競歩では20キロで池田向希選手が、50キロで川野将虎選手が東京五輪に内定。酒井俊幸監督は数多くのトップ選手を育ててきた。ここまで10回にわたり、チームならびに選手育成のメソッドとその指導哲学を紹介してきた酒井監督に特別インタビュー。年初の箱根駅伝の結果を受けての新チームと現在のコロナウイルス下でのチーム運営について話をうかがった。

2020シーズンにむけてのチーム作り

――今期のチームコンセプトなどは、どのように考えていますか?

 2020年の箱根駅伝総合10位という結果から、いきなり「総合優勝を奪還するぞ!」といっても、すぐに立て直せるものではありません。今大会を振り返ると総合優勝をするためのレベルが相当上がったと感じていますし、まだチームの土台ができていないのでしっかり土を耕して、種をまいていきたい。今はそういう時期ですね。

 箱根駅伝の反省として挙がった、チーム力の底上げ、中間層をどうするか。あとは相澤晃という学生長距離界のエースが巣立っていったなかで、もう一度チームマネジメントをどうやっていくか。それは私だけが主導するのではなく、学生たちで話し合って、いかに自立したチームになれるかをテーマにスタートしています。

 最近特にチーム作りで意識しているのは、その年によって選手たちのカラーや個性が変わるので、これまでの成功体験やメソッドは参考にはしますが、あてはめすぎないように気をつけています。選手たちを観察し話をしながら、新しいことも取り入れるようになりました。失敗して気づくこともありますが、学生たちの先の人生につながるような指導を心掛けています。

――そのなかでやり始めたこと、動き始めたことがあれば教えていただけますか?

 ミーティングの回数を増やし、部内でいろいろなグループを形成しました。例えば、横割りの学年単位以外に、縦割りの学年を問わないグループや、体の特性や目標タイムなどのいくつかのグループがあります。該当する学生たちで集まって、体が硬いグループであれば、柔らかくするためにストレッチをやろう、というように学生たちが自主的に動いています。

――新主将、新副将とその理由を簡単に教えていただけますか?

 新主将に選ばれた大森(龍之介)は、長期的な怪我でなかなか思うような走りができていないです。4年生は2年前の箱根駅伝で1年生ながら4人が走った学年。そのうち3人が往路メンバーで往路優勝も経験しています。でも昨年は怪我が多く、練習が継続できないことや試合に出場できない選手が多い1年間で、チームの底上げや中間層構築の力になれなかった。この学年とともに再起を目指したいと思います。彼らの4年生としての責任感に私も期待しています。

 新副将の西山(和弥)は、2019年は非常に悔しいシーズンに終わった選手です。怪我を抱えながら、本来の走り方やトレーニングができないまま試合に臨むようなことが多く、本人もだいぶ心の葛藤もありながらずっと走っていました。副将ということでチームの中での要職の役割を感じながら、走れない子の気持ちも感じながら、人間的な幅をより持ってほしいです。長い目で見れば、卒業生の服部勇馬(現・トヨタ自動車)のように挫折の後に大きく成長してほしい。⻄⼭が復活していけば、彼の⼈⽣のなかでも良い経験になりますし、チームも明るくなる要素だと思います。

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