連載:「Sports assist you」仕掛け人の証言

原口元気が子どもたちに伝えたい思い 「一人きりでもサッカーはうまくなる」

島崎英純

海外組全員と意見を出し合い動画を作成

原口「この危機的な状況の中で大切な仕事に従事されている方々に対して、心からのエールを送りたい」 【Getty Images】

――今回、原口選手は日本サッカー協会(以下、JFA)の連載企画『Sports Assist You』に動画を提供してくださいました。この企画に賛同された経緯をお聞かせください。

 今、外で練習をできない子どもたちが数多くいる中で、海外にいる選手たちが少しでも何かを発信して手助けができたらという思いを、協会を通して各選手たちが話し合いをして、各自で動画を作成しようという流れになりました。

――選手との間でもコミュニケーションを取ったのですね。

 そうですね。海外組、今は50人から60人前後いると思うのですが、その全員と連絡を取り合えるようなグループでのSNSを作って、そこでさまざまな意見を出し合ったりしていますね。「こういうことをやろうよ」とか、「子どもたちに向けて、サッカーの動画を作ろう」などと言い合いながら、新型コロナウイルスの感染防止を呼びかけるようなアクションを起こそうということです。その都度、自分たちのできることを探しながら、継続して何かを発信していこうとしています。

――今回、動画はどのように作成したのでしょうか?

 僕はスマートフォンで、妻に撮影してもらいました。これまで動画を作成したことはなかったのですが、ソファに座って話したり、犬と一緒に遊んだりしているシーンなどを撮影しました。

――他の選手の動画なども見られたのでしょうか?

 見ました。SNSでシェアし合っているので。また、JFAのサイトにもアップされますし、各選手のインスタグラムやツイッターなどでも見ることができますから、常にチェックはしています。毎日動画をアップしている選手もいますよね。乾(貴士)くんとか(笑)。それぞれのペースでいろいろな動画をアップしています。

家の中でできることもたくさんある

――日本も緊急事態宣言が発令されましたが、そのようなときに、子どもたちに向けて、このような動画が活用されるといいですね。

 学校が休校になって行けない子どもたちも多いでしょうし、サッカーの少年団が練習をできない状況もあると思います。そんな中で、大人が夜の街で会食したりしているのは、僕としては違和感を覚える部分ではあります。子どもが我慢している状況だからこそ、今は大人も大切な仕事に従事されている方以外は一定の辛抱が必要なのかなと感じています。全員が協力し合わなくては、このような危機は脱せないとも思いますので。

 ただ、サッカーに関しては家の中でできることもたくさんあると思うんですよね。できるだけ人に触れずに練習することも可能ですし。僕は少年時代に、周りにサッカー少年の仲間がいなかったんです。僕の通っていた学校にはサッカーチームがなく、地域にも少年団がありませんでした。だから、車で20分くらい走ったところにある少年団に入団していました。父親が僕の相手をしてくれないときは常に一人でボールを蹴っていたんです。だから、子どもたちに対しては「一人きりでもサッカーはうまくなるよ」という思いがあります。自分で練習内容を考えてトレーニングすることも大切で、それが未来の糧にもなりますしね。少年団に入ってサッカーをプレーするだけじゃなく、「どうやったらうまくなるのかな?」と自分自身で考えながらプレーすることの重要性を、サッカー少年、サッカー少女の皆さんが感じてサッカーを楽しんでくれたらうれしいですね。その意味では、今のような状況は、そのような環境を生める良い機会でもあると思うんです。

――改めて、新型コロナウイルスに対する思い、そして終息後の希望、そして原口選手を応援しているファンに向けてメッセージをお願いします。

 僕も14日間、自宅から一歩も出られない経験をしました。その他にもドイツのさまざまな取り組みを経験する中で、今は国全体で「何とかしよう」という強い思いを感じています。日本も間違いなく、そのように一致団結して行動できる国だと思っていますから、皆で協力し合って新型コロナウイルスと向き合っていただけたらと願っています。それができれば、必ず終息して自分たちの生活が取り戻せると思うので。まずは皆さん、健康を第一に生活をしていただきたいと思います。その中で一日でも早く、サッカーであったり、自分たちが楽しみにしていることを取り戻すためにしっかりと辛抱、我慢をしてくださればと思います。家の中でできること、一人でできることもたくさんあると思いますので、いろいろな楽しみ方を見つけながら今を乗り切りましょう。そして、以前のような生活が戻れば、僕たちはサッカー選手なので、また素晴らしい試合をみせられるように頑張ります。

 そして医療関係者の皆様、今は本当に大変な時期だと思います。その他、この危機的な状況の中で大切な仕事に従事されている方々に対して、心からのエールを送りたいと思います。

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著者プロフィール

1970年生まれ。東京都出身。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当記者を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動。現在は浦和レッズ、日本代表を中心に取材活動を行っている。近著に『浦和再生』(講談社刊)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信。ほぼ毎日、浦和レッズ関連の情報やチーム分析、動画、選手コラムなどの原稿を更新中。

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