連載:東京五輪「注目球技」の現状と1年延期で起こりうる変化

オリンピアンの狩野舞子が語るバレー代表 「男子が面白い。女子だけでなくぜひ!」

田中夕子
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狩野氏が「すごかった」と称賛するように、西田は昨年のワールドカップでチーム最年少(当時19歳)ながら4位躍進の立役者のひとりに。19-20シーズンのV1リーグでは、最高殊勲選手と日本人初の得点王に輝いた 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 元女子バレーボール日本代表選手で、銅メダルを獲得したロンドン五輪のメンバー・狩野舞子氏に男女バレー代表について話を聞いた。

 自身がかつてプレーした女子代表に対する期待はもちろん大きいが、停滞期を脱し、昨年のワールドカップで4位の好成績を収めた男子代表にも熱い視線を注ぐ。個性的な選手がそろう現在の男子代表は、見ていて面白い、魅力的なチームだという。五輪の1年延期がアスリートに及ぼす影響は計り知れないが、狩野氏は元選手の視点から、「この状況でも自己管理をして結果を残す選手は、真のアスリートだと思う」とエールを送る。

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1年後の言葉にも注目

――新型コロナウイルス感染拡大に伴い、東京五輪が2020年から2021年へ延期になりました。この決定に関して、狩野さんはどんなふうに感じましたか?

 2020年の東京オリンピックを目指してきたベテラン選手や、そこにピークを合わせてきた選手、さまざまな立場を考えると「1年」という時間がどんな影響を及ぼすのか。元選手の目線で言えばその苦しさを考えてしまうのですが、誰もが予想できなかったようなこの状況を見れば、開催してほしいと思ってもそれが難しいことは理解できますし、今開催できるはずもない。1年は確かに長く、重い時間ですが、中止にならなくてよかった、というのが率直な感想です。私たちの生活も含めて、今まで当たり前のようにスポーツが開催されてきたことがいかに平和でありがたいことか、私自身も実感しました。

――日本代表に目を向ければNTC(ナショナルトレーニングセンター)やJISS(国立スポーツ科学センター)も封鎖され、現実問題として練習できる環境がない、というアスリートも多くいます。その影響はどのように感じますか?

 私自身、一度引退してバレーボールを離れ、ほぼボールに触らない状況からPFUブルーキャッツに復帰した経験があります。久しぶりにボール練習をしても、感覚が戻るまで時間がかかり、スピードに目が慣れないので、頭の中では追いついていると思うボールに対しても反応できず、簡単に拾えるはずのスパイクも上がらない。頭と身体のギャップに苦しんだことがありました。

 私は自分が決めたことだから、と乗り切ることができましたが、1年の間にもしかしたら怪我をしてしまう選手もいるかもしれないし、反対に大きな怪我や病気から復帰できる選手もいるかもしれない。さまざまな運命のいたずらがあり、人によっては「2020年にオリンピックがあれば」と思う人もいるはずです。

 バレーボールに目を向ければ、来年の世界情勢も、(日本代表に)誰が選ばれるかも全くわかりませんが、その状況でも自己管理をして結果を残す選手は本当に芯の強い、真のアスリートだと思います。言い訳せず、1年後に向けて努力を重ねた結果どんなコメントを発するのか。1年後の言葉にも注目しています。

――男子バレーの現状について聞かせてください。08年の北京以後オリンピック出場から遠ざかり「女子は強いけど男子は弱い」と言われ続けてきましたが、昨年はワールドカップで4位。狩野さんは、現在の日本男子バレーを見てどんな印象を受けますか?
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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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