連載:東京五輪「注目球技」の現状と1年延期で起こりうる変化

セブンズは男女とも圧倒的な練習量が支え 日本中を熱狂させた15人制ラグビーに続け

村上晃一
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セブンズ参戦が期待される福岡だが、20年限りでの引退を表明しているだけに、1年延期がどう影響するか。本人は「今の自分にできる最高の準備を続けよう!」とだけツイッターでコメントしている 【写真:ロイター/アフロ】

 昨年のラグビーワールドカップ(RWC)で史上初のベスト8進出を果たし、日本中を熱狂の渦に巻き込んだ15人制のラグビー日本代表。一連の「コロナ禍」によって今シーズンのトップリーグが中止になるなど、残念ながらブームに水を差された格好だが、それでも国内のラグビー熱が簡単に冷めることはないだろう。

 同じく自国開催となる東京五輪でも、前回のリオデジャネイロ五輪から正式種目に採用されている7人制ラグビー(セブンズ)が大きな注目を集めるに違いない。開催の1年延期でメンタル面のケアは必要になるだろうが、RWCで4トライを挙げた福岡堅樹の参戦もうわさされる男子セブンズのみならず、ハードトレーニングで急速にレベルアップを遂げている女子セブンズも、メダル獲得の可能性は十分にありそうだ。

華やかな演出とスピード感溢れるプレー

 7人制ラグビー(以下、セブンズ)は、2016年のリオデジャネイロ五輪から正式種目になった。世界各国で本格的な強化が進み、今、急成長を遂げている競技だ。

 その歴史は古く、1883年、スコットランドのメルローズ・ラグビーフットボール・クラブで誕生したとされている。このクラブが財政難に陥り、集客力のあるイベントを開催しようと、人数を少なくして、1日でたくさんの試合を見られるようにと考案されたのがセブンズなのだ。成り立ちがお祭り的発想なので、演出も華やか。大音量の音楽を流して、踊り、歌いながら観戦する応援文化が今に引き継がれている。

 1チームは7人、試合時間は前後半7分ずつ。15人制と同じフィールドが使われるため、一人一人が受け持つスペースが広く、スピード感溢れるランや鮮やかなステップで相手をかわし、一気にトライまで持ち込む派手なプレーが続出する。

 五輪の正式種目に採用されてからは、セブンズを専門にする選手が増加。世界各地を転戦するワールドラグビーセブンズシリーズ(WRSS)が男女ともに開催され、選手のスピード、パワー、スキルはいずれも急速にレベルアップしている。

 前回のリオ五輪では、男子はフィジー、女子はオーストラリアが金メダルを獲得した。世界をリードするのは、男子がそのフィジーと、ニュージーランド(NZ)、南アフリカ、女子がNZ、オーストラリア、アメリカ、カナダあたり。15人制では日本より下位のアメリカだが、セブンズでは各競技のアスリートを転向させるなどして強化を図り、男女ともに東京五輪でメダルを狙える位置にいる。
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著者プロフィール

1965年、京都府生まれ。京都府立鴨沂高校、大阪体育大学卒。大学時代は、FBとして活躍。85年、同志社大学の関西大学リーグの連勝記録を71でストップさせた試合に出場。翌年、東西学生対抗の西軍FBに選出される。卒業後、ベースボールマガジン社に入社。90年から97年まで「ラグビーマガジン」編集長。現在はフリーのラグビージャーナリストとして、多くの雑誌に執筆。「JSPORTS」のあらゆるカテゴリーの解説をこなしている。編集者としても、ジャンルにこだわらずに単行本を手がける。著書に、大学時代の恩師であり、元日本代表名ウイング坂田好弘氏の伝説を追った「空飛ぶウイング」などがある。

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