女子セブンズをけん引する堤ほの花 22歳の主将は豊富な経験とスピードが武器

斉藤健仁
 東京五輪、そして世界に向けて、それぞれの地元から羽ばたくアスリートを紹介する連載企画「未来に輝け! ニッポンのアスリートたち」。第58回は佐賀県出身、7人制ラグビーの堤ほの花(ディックソリューションエンジニアリング)を紹介する(取材日:2月14日)。

代表候補の中では小柄も存在感を発揮

22歳で女子セブンズ日本代表のキャプテンを務める堤ほの花。153センチと小柄だが、スピード感のあるプレーが特徴だ 【斉藤健仁】

 東京五輪へ向けて準備が進んでいる「サクラセブンズ」こと、女子7人制ラグビー日本代表。約20人の日本代表候補の中では153センチと小柄ながら、トライを挙げるだけではなく、キャプテンを務め、日々チームの中で存在感を増しているのが、3月に日本体育大を卒業したばかりの堤ほの花(22歳)だ。

「リーダーはやったことはありますが、キャプテンは初めてでした。何もしてないです。柄ではないですね」と苦笑するが、2月、世界を転戦する「ワールドシリーズ」のシドニー大会のスペイン代表戦で2トライを挙げて勝利に貢献。目標としていたベスト8以内には惜しくも入ることはできなかったが、2年ぶりに9位に入った。

 予選プール初戦の絶対王者・ニュージーランド代表は0-28と敗れたが、前半は相手を零封するなど、いずれにせよ強化の方向性が正しいことを証明した。ただ 同3試合目のロシア代表戦で、終了間際に12-14と逆転負けを喫したことが響いた。

 それでも堤は「あと少しでベスト8でした。(ロシア戦は)逆転されたが内容は悪くなかった。(大会を通して)ディフェンスの連携も取れていてトライされる回数も少なくなったので継続してやっていきたい」と笑顔を見せた。

ラグビーを始めたきっかけは父と弟

代表では主力として活躍する堤がラグビーを始めたのは、父と弟の影響が大きい 【Getty Images】

 世界的に見れば決して大きくはないが、個としてスピード、ステップといった決定力で勝負する。そんな堤がラグビーを始めたのは双子の弟・英登(今春まで日本体育大)と一緒に、物心がつくかつかないかという3歳から始めた。

 父親の明英さんは高校から福岡大までラグビー部に籍を置き、WTBとしてプレーしていた。大学卒業後は佐賀県の中学校の体育の教員を長く務めており、嬉野市の嬉野ラグビースクールを創設した。堤がそのラグビースクールに父と弟と一緒に通うようになったのは自然な流れだった。

 ただ、「ラグビーは小学校まで、中学校では美術部に入ろうかな……」と思っていたという。だが、堤が小学校6年だった2010年、リオデジャネイロ五輪からセブンズ(7人制ラグビー)が正式種目となったことと、父親にラグビーをやめることを反対されたこともあり、中学でも陸上部に所属しながらラグビーを続けることを決めた。

 中学2年ころから本格的にラグビーにのめり込むようになり、隣県にある女子チームの福岡レディースでも研さんを積んだ。高校も悩んだ末に、友人から誘われたこともあり、元日本代表FBの五郎丸歩(ヤマハ発動機)の母校で知られる強豪・佐賀工高に弟とともに親元を離れて進学。同校初の女子選手のひとりとなった。

「(男子と一緒に練習することで)周囲のレベルが高いから、それについていこうと自然とレベルアップできました。また、『負けたくない』と思うことでメンタルも鍛えられたと思います」

高校時代にポテンシャル開花も……

高校1年時の堤(写真中央)。佐賀工高では同校初の女子選手として、男子選手とともに汗を流した 【斉藤健仁】

 その言葉通り、堤は高校に入ると一気にそのポテンシャルを開花させる。

 高校1年で、将来の日本代表を担うセブンズの「ユースアカデミー」に選出。東京セブンズ時に行われた中高生女子選手によるエキシビションマッチでは、初めてプレーした「聖地」秩父宮ラグビー場でハットトリックを達成した。
 
 さらに2015年の高校3年時、「チャレンジチーム」の一員として太陽生命ウィメンズシリーズ保土ケ谷大会で、準決勝で5トライを挙げる離れ技を見せて大会MVPに輝く。翌月、香港代表戦で女子15人制ラグビー日本代表としても初キャップも獲得した。

「トライは取ることはできなかったけど、ピンチの時にしっかりディフェンスができて良い経験ができました」

 大学は弟や、ユースアカデミーの友人とともに女子の強豪チーム・日本体育大に進学。15人制、7人制の両方で日本代表として活動していたが、残念ながら、1年時の16年、リオデジャネイロ五輪のメンバーに選出されることはなかった。「候補選手止まりで、オリンピックに出られなかった。悔しい思いがあったので東京五輪こそ出たいと思いました」と振り返る。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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