女子セブンズをけん引する堤ほの花 22歳の主将は豊富な経験とスピードが武器

斉藤健仁

飛躍に必要な2つの課題

自らのスピードを生かすこと、そのスピードを高めること。現在はこの2つを課題にして、トレーニングに取り組んでいる 【斉藤健仁】

 ただ、その後も堤は桜のエンブレムを胸に、世界の舞台で活躍を続ける。

 2016年、大学生の国際大会ではニュージーランド代表などを倒して3位に入り、17年の女子15人制ラグビーのワールドカップに初めて出場を果たすと、その後は、東京五輪に向けてほぼセブンズに専念する。昨年はユニバーシアードでの金メダル獲得にも大きく貢献した。多くの国際大会を通じて世界と戦うことで「経験値も上がるし、自分の強み、弱みをハッキリと明確にできる」と話す。

 堤の現在の課題の1つ目は「自分の強みであるスピードを生かしながら、冷静に判断して味方を使いたい」と言うように、周りの選手をもっとうまく使うこと。2つ目はサクラセブンズを率いる稲田仁ヘッドコーチが「もう1段、スピードを高めてトライを取り切ってほしい」と話すように、さらなるスピードの強化だ。

 50メートル6.8秒の快足が武器の堤だが、単なるスピードアップだけでなく、走行距離の10%以上を「ハイスピードランニング(HSR)」というトップスピード近くで、何本も走ることを目標に掲げている。

 また、食事管理も徹底するようになった。ただ体重を落とすことで、スピードは上げてもフィジカルが落ちてしまうと世界で戦うことは難しくなる。堤は「ちょっとずつ自分に合うような形でやっています。パワフルな感じを出すために体脂肪を減らして、少し体重を戻そうとしています」と話した。

リオ五輪は候補止まりだっただけに、東京五輪への思いは強い。1年程度の延期が決まっているが、「時間を大切にやることをやって、花を咲かせて」くれることを期待したい 【斉藤健仁】

 年間200日以上、合宿や遠征に充てて、東京五輪でのメダル獲得を目標に強化を進めてきたサクラセブンズ。かつては若手選手だった堤だが、現在のチームには年下の高校生や大学生も多く、4月から社会人となる堤はすっかり中堅になり、チームを引っ張る立場にもなった。

 22歳ながら国際経験豊富な堤は「この1年ですら、すごくあっという間だったので、早いなと感じます。サクラセブンズは運動量で相手に勝つこと、そして粘り強さが強みなので、アタックの精度を上げたい。時間を大切にやることをやって、東京五輪で花を咲かせられるように頑張っていきます」と凜とした表情で前を向いた。

 堤ほの花が、今度こそ12人のオリンピックメンバーに入り、メダルという大輪の花に向かって東京スタジアムのピッチを駆ける。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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