長身ナガマツペアは金メダル有力候補 さらなる飛躍へ、鍵となる戦術の多様化

平野貴也

「追われる身」になって感じる難しさも

最近はパワーのある中国、韓国勢に押し切られることも。五輪シーズンの今季は、戦術の多様化がカギになる 【写真は共同】

 最近は、パワーのある外国人選手、特に力をつけてきている韓国のペアを苦手にしている。松本、永原の2人ともレシーブ力を磨いているが、攻撃の主導権を取られてしまうと、攻め勝つパターンに持ち込めず、持ち味が出ない。攻撃パターンを研究され、連続攻撃をされてしまう場面も増えてきた。

 パワーで上回れる日本勢対決では強さを見せるだけに、やや内弁慶の印象もある。五輪レースで優勝したのは、世界選手権のみ。昨年12月、世界のトップ8が参加したBWFワールドツアーファイナルズでは、福島/廣田との日本勢対決を制したが、韓国勢に1勝1敗。決勝で対戦した中国のトップペアには完敗を喫し、準優勝に終わった。韓国勢にはパワーで押し切られ、中国勢には攻撃を返された後の手段が見つからなかった。

 松本は「負ける時に、点数的にあっさり負けることが多いのが課題。試合中に作戦を変えたり、自分たちの特長を発揮する方法を見いだしたりしていきたい」と戦術の多様化を課題に挙げた。永原は、決勝戦後に「相手の攻撃の速さについていけず、流れを止められませんでした。自分たちの強い球を先行させて、逆に速い球が返ってきて(対応が)間に合わなくなってしまいました。中国、韓国を倒さないと一番にはなれないので、意識してやっていきたい」と五輪本番を見据えた巻き返しを誓った。

 以前は勢いで立ち向かっていたが、今では強豪ペアに研究され、追われる身だ。これまでにはなかった難しさもある。「もっと勝てるはず」「もっと粘れるはず」と高まっていく期待と、課題を少しずつ克服して進む成長の歩調が合わずに苦しさを感じることもあるだろうが、東京五輪の金メダルまで駆け上がるには、その壁を乗り越えなければならない。

 技術も戦術もまだ磨けるツータイムスチャンピオンは、まだ底を見せていない。より高みへ進める可能性は、すでに彼女たち自身が2度も世界選手権で証明している。18年の世界選手権決勝、ファイナルゲームで19-20から追いついた後、21-20にした場面で松本は「次の1点を絶対に取ろうと思うと体が固くなってしまうので、ここから3点取ろうと話した」と言っていた。19年の世界選手権決勝では、永原が試合中も笑顔を絶やさずに連覇の重圧をかわし、2人の持ち味を発揮した。大舞台の接戦でも冷静、大胆に振る舞えるメンタルは、厳しい試合の勝負所で必要になる。

 不安と課題を抱えながら進む道のりは、東京五輪のコートに立ち、表彰台の頂から最高の景色を見るための歩みとなる。思い切れたときの2人は、誰も止められない。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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