連載:“伝統の番号”を受け継いだJクラブの一番星

J1の5クラブで背番号10が“欠番”に  栄光の番号がなぜ空いたままなのか

藤江直人
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今シーズンのJ1で「10」をつけているのは13人。横浜FM、鹿島、仙台、鳥栖、神戸の5チームでは空き番となっている 【(C)J.LEAGUE】

 サッカーにおいて背番号10は特別な番号だ。ナンバー10を与えられるのは、チームのエースやシンボルとも言うべき選手たち。誰もが背負える番号ではない。今シーズンのJ1では、横浜F・マリノス、鹿島アントラーズ、ベガルタ仙台、サガン鳥栖、ヴィッセル神戸の5チームで「10」が欠番となっている。なぜ、空いたままになっているのか。各クラブの事情を探った。

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昨季MVPの仲川は今季も「ニッサンで」

昨シーズンのMVPで得点王にも輝いた仲川は、木村や中村、山瀬らが背負ってきた横浜FMの「10」を継承するにふさわしい選手だ。だが本人にその気はなく、現在ベルギーでプレーする天野が戻ってきた時のために空けているという 【(C)J.LEAGUE】

 抽選で偶然にも「10」を割り振られた17歳の少年が、ブラジル代表をワールドカップ(W杯)初優勝に導いたのが1958年。ペレが「王様」に君臨した瞬間が、サッカー界の歴史も変えた。

 それまでは単なる二桁の背番号だった「10」が、スウェーデンで開催された第6回W杯を境にエースナンバーへと昇華。時代を彩るスーパースターたちが、自身の代名詞として背負ってきた。

 ブラジル代表ではその後に神様ジーコが拝命。アルゼンチン代表ではディエゴ・マラドーナからリオネル・メッシへ引き継がれ、フランス代表ではミシェル・プラティニからジネディーヌ・ジダンを経て、いまは2018年のロシアW杯優勝に貢献したキリアン・エムバペが背負う。

 新たな波は93年にJリーグが産声をあげた日本にも伝播。開幕戦ではラモス瑠偉(ヴェルディ川崎)や木村和司(横浜FM)に加えて、ジーコ(鹿島)、ゲーリー・リネカー(名古屋グランパス)、ピエール・リトバルスキー(ジェフ市原)らの大物外国人が「10」を託された。

 当時の変動番号制が97年に固定番号制に移行してからは、ドラガン・ストイコビッチ(名古屋)、中村俊輔(横浜FM)、藤田俊哉(ジュビロ磐田)が個人タイトルの最高峰、MVPを添えて輝かせてきた「10」に、今シーズンのJ1でちょっとした変化が生じている。横浜FM、鹿島、仙台、鳥栖、そして神戸の5チームが「10」を欠番としたまま開幕節を迎えたのだ。各チームに何が起こっているのか――。
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著者プロフィール

1964年生まれ。東京都渋谷区出身。早稲田大学第一文学部卒業後の平成元年に入社したサンケイスポーツでサッカーを担当し、前身の日本リーグから1993年5月に産声をあげたJリーグ、日本代表が悲願のワールドカップ初出場を逃して涙した「ドーハの悲劇」などを取材。バルセロナ、アトランタの2度の夏季五輪特派員、野茂英雄や伊良部秀輝(故人)らMLBで活躍した日本人選手を追うアメリカNY駐在員、サンケイスポーツと角川書店が共同編集したスポーツ誌『SPORTS Yeah!』編集部などをへて2007年に退社・独立。フリーランスのノンフィクションライターとして、サッカーをメインにスポーツ全般を追っている。

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