【前編】侍Jの投手が師事する“ゴッドハンド” 選手の能力を高めるメソッドとは?
オリ山岡らの指導に加え、高校野球界でも名を馳せる
山岡泰輔(写真)や高橋礼といった代表クラスの投手が師事する、高島誠トレーナーとは何者なのか 【Getty Images】
広島県東広島市でトレーニングジム「Mac's Trainer Room」を主宰する現在、シーズンオフになるとオリックス・山岡泰輔や福岡ソフトバンク・高橋礼という日本代表クラスが師事する。人間の身体動作を熟知し、ラプソード(投球用3Dトラッキングシステム)やモータス(投手の肘に装着できるウェアラブルデバイス)など最新テクノロジーを駆使して、パフォーマンスアップや故障予防につなげている。
平日の練習時間が50分に限られるなか「フィジカル&データ革命」で名を馳せ、昨年初めてプロ野球選手を輩出した武田高校の強化メニューを担当するのもこの男だ。
高島誠、40歳。「野球パフォーマンスアップスペシャリスト」を名乗る“凄腕”の評判は、ツイッターやYouTubeで広まりつつある。知名度こそ本家に劣るが、高島が行っていることは「日本版ドライブライン・ベースボール」のようなものなのだろうか(※敬称略、以下同)。
本家・ドライブラインに勝っている!?
アメリカのシアトルにあるトレーニング施設「ドライブライン・ベースボール」は近年、日本でも有名になった。
通常より重いボールと軽いボールを投げてトレーニングし、球速をアップさせることができる──。普段と異なる負荷が肩や肘にかかるため、故障者も多い──。
ドライブラインで腕を磨いてメジャーで5年連続二桁勝利を成し遂げたトレバー・バウアー(レッズ)の名とともに、まるで都市伝説のようにその「一部」だけが一人歩きしている。2019年オフに今永昇太(横浜DeNA)や藤浪晋太郎(阪神)が渡米してトレーニングし、埼玉西武や千葉ロッテが若手選手を派遣したことから、海の向こうの“得体のわからないもの”に興味をかき立てられる者が多くいるのかもしれない。
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高校生なら「140キロは絶対に投げられる」
高島は自らの方法論に絶対の自信を持つ。球速を上げるための方法は「7割方」確立されていると話す 【スポーツナビ】
「高校生の投手なら、自分で『行ける』と思えば140キロは絶対に投げられる。ちゃんと会話ができて、トレーニングを継続的にやってくれれば、高校生投手の全員がプロに行ける可能性がある」
高島によると現在、球速を上げるための方法は「7割方」確立されているという。
一つ断っておくと、球速は投球パフォーマンスにおける一つの指標にすぎない。スピードは数字で表せるから分かりやすい一方、盲目的な信者を生みやすいのも事実だ。
例えば、速い球を投げるのはリスクもある。力を生み出した際の負荷が肩や肘にかかり、故障の引き金となりかねない。パフォーマンスアップと故障予防はセットで行うことが不可欠になる。
メディシンボール投げの目的とは
「重要なのは、それらを『感覚』として一致させられるか。感覚を理解させるためのトレーニング、という位置付けになります」
感覚をつかむために、例えばメディシンボールを投げるというメニューがある。このオフ、ソフトバンクの高橋が高島のジムで行った動画をツイッターで見た人もいるだろう。
アンダースローの高橋は打者にボールを投げる際の並進運動で、「前に行けていない」という課題があった。そこで前に行く感覚を体で覚えるため、メディシンボールでトレーニングを行った。加えて柔軟性がもう少し必要で、それを出すためのメニューにも取り組んだ。
そうして「前に行ける」ようになれば、次に求められるのが「感覚」だ。投球における一連の動作をリリース時に「感覚」として一致させることで、初めて質の高い球を繰り返し再現できるようになる。