連載:REVIVE 中村憲剛、復活への道

中村憲剛、踏み出した復活への一歩 SNSの声すべてに目を通して決意を誓う

原田大輔

39歳で靱帯を損傷した選手はほぼいない

動けなかった中村はスマートフォンでケガについて調べた。更新したブログの反響に、さらに復活への思いが漲った 【(C)Suguru Ohori】

 スマートフォンの画面を開くと、同様のケガを負った選手について調べた。前十字靭帯損傷を経験している選手は、数え切れないほどいたが、自分のようにベテランと言える年齢に差し掛かって負傷した選手はわずか。事例としてはほとんどなかった。

「そこでまた自分を奮い立たせることができたんです。39歳で前十字靭帯を損傷した選手なんてまずいない。これは、ここまで17年選手を続けてきて、さまざまな経験をしてきた自分が唯一ここまでしてこなかった経験(大ケガからの復帰)をするために用意された舞台なんじゃないかと。ここからはい上がって、もう一度、プレーする姿を見せろと言われているみたいで。その姿を見たら、いろいろな人に自分は勇気を与えられるのではないかとも……」

 受傷した翌11月3日、中村は自身のブログを更新した。そこには、こう心境をつづっている。

「やった瞬間から覚悟はしていましたが、実際に告げられるといろいろなことが頭を駆け巡りました。
 正直この年齢でこのケガをするとは夢にも思いませんでしたが、あのプレーに後悔はないですし、起きてしまったことにあれこれ言ってももうしょうがないので今は前向きにこのケガに向き合って行こうと思ってるところです」(一部抜粋)

 記事を更新すると、ブログのコメント欄だけでなく、Twitterにも多くの人から励ましの声が届いた。

「フロンターレのサポーターはもちろん、他のクラブのサポーターの人たちや選手、全く交流がなかった人まで、本当にたくさんの人がコメントをくれたんです」

たくさんの励ましが背中を押してくれた

 まさに数え切れないほどの返信だった。中村はすべてのコメントに目を通した。コメントのひとつひとつに背中を押され、活力になった。

「リハビリは大変だと思いますけど、頑張ってくださいって言ってもらえて。中には自分も同じケガをしたという人もいれば、リハビリを始めて何カ月目です、という人もいた。他のチームのサポーターの方で自分がいないフロンターレに勝利しても意味がない、とまで言ってくれる人もいました。すべてが本当にありがたかったですし、うれしかった。感謝しています」

 時間があったこともあり、吸い込まれるようにコメントを読み続けた。そのひとつひとつが、ひと言ひと言が中村の心に刺さり、闘志になった。

「自分がここから復活する姿を見せよう。その誓いを立てるのに十分すぎるくらいの反響があったのです」

 そして、もうひとつ、中村には自分が再起する姿を見せたい理由があった。その存在は一番身近で、一番近くにいる人のためでもあった。

※リンク先は外部サイトの場合があります

中村憲剛(なかむら・けんご)
1980年10月31日生まれ。東京都小平市出身。川崎フロンターレ所属。MF/背番号14。175センチ/66キロ。川崎一筋でプレーし、2020年で在籍18年目を迎える。中央大学を卒業した03年に当時J2だった川崎に加入。ゲームメーカーとして台頭すると、クラブの成長をともに歩む。16年にはJリーグ最優秀選手賞(MVP)に輝き、17年にはJ1初優勝、18年にはJ1連覇を達成。19年はルヴァンカップ優勝に貢献するも、11月2日、J1第30節のサンフレッチェ広島戦で負傷。左膝前十字靭帯損傷のケガを負い、現在、復帰に向けてリハビリに励んでいる。

2/2ページ

著者プロフィール

1977年、東京都生まれ。『ワールドサッカーグラフィック』の編集長を務めた後、2008年に独立。編集プロダクション「SCエディトリアル」を立ち上げ、書籍・雑誌の編集・執筆を行っている。ぴあ刊行の『FOOTBALL PEOPLE』シリーズやTAC出版刊行の『ワールドカップ観戦ガイド完全版』などを監修。Jリーグの取材も精力的に行っており、各クラブのオフィシャルメディアをはじめ、さまざまな媒体に記事を寄稿している。

新着記事

編集部ピックアップ

西郷真央は31位で決勝へ 畑岡奈紗、古江…

ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント