ドライブラインから考える野球界の未来 日本に進出するとして、必要なものは?
「ドライブラインの理論は複雑で、分からない」
ある程度体の知識がないとついていけないことから、ドライブラインは決して万人受けではない。ゆえに、アスリートの意識も求められるところだ。写真はアレックス・ウッド(ドジャース)のピッチデザイン。 【丹羽政善】
どこに問題があり、どうすれば修正できるかを説明してくれるが、ある程度、体の使い方に関する知識がないと、理解できないことが多い。基本から教えてくれるわけでもない。
また、ラプソードやStatcastのデータを自分で読んで、把握できる程度の知識も求められる。アナリストやトレーナーもそれを前提に話をする。
横の変化量が〇〇センチだから、これを△△センチにすると、より効果を得られるはず。そのためには回転軸をこうしよう――と提案してくれるが、そもそも何に対して何センチなのか。それは、その球が無回転で重力のみが作用した場合、ホームベース上のどの地点を通過するかを基点とし、その差を求めたものだが、その理解が欠落していると、選手は何を目指すのか、分からなくなる。
もちろん、質問をすれば答えてくれるが、ピッチデザインのセッションを見ていても、当然知っているものとして、話が進んでいく。
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ドライブラインに限った話ではないが、教えられたことをどう応用し、工夫し、自分のものにしていくかで、その先が変わってくる。おそらく、言われたことをこなすタイプの選手には時間の無駄でしかない。
そういえば、ある選手が「ドライブラインの理論は複雑で、分からない」と漏らしていた。
それはそれでいい傾向ではないか。最低でもそこまではたどり着く必要がある。選手によっては、「何が分からないのか、分からない」というところで止まってしまう可能性もある。
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5年後は、今とは違ったアプローチに?
日本のプロ野球チームでもドライブラインへ派遣するところが出てきた。選手だけでなくデータアナリスト、バイオメカニスト、トレーナーも帯同させると効果も現れやすいだろう。写真は西武・中塚駿太がトレーニングを行っているところ 【写真は共同】
また、日本の球団が選手を派遣するとしたら、選手だけではなく、データアナリスト、バイオメカニスト、トレーナーも帯同させると、より効果的なはず。
というのも、日本から来る場合、どうしても時間が限られる。
帰国後にドライブラインのプログラムを継続する場合、選手だけに任せるよりは、知識を共有している人たちで連携するほうが、無理がない。実際、このオフに選手を派遣していた球団はそうしたサポートを意識していたが、そもそも、それぞれの連携こそがプログラムの柱でもある。
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いや、基本のコンセプトは変わらなくても、そのアプローチでさえ、5年後には時代遅れになっている可能性もある。
「カメラ一台で、動作解析も、回転軸やボールの動きもわかるようになるのでは」とバウアー。
「5年後には、今とはまた、違った形になっているはずだ」
ここ5年ほどで野球界が大きく様変わりしたが、これは序章であり、これからはさらに大きなうねりを伴うようになるかもしれない。