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10年以上も覇権を独占する「BIG3」
2020年も「時代」は続くのか

フェデラーが道を拓き、それに続いたナダルとジョコビッチ

全仏オープンで前人未到の優勝12回を記録するなど、圧倒的な強さで「クレーキング」と称えられるナダル
全仏オープンで前人未到の優勝12回を記録するなど、圧倒的な強さで「クレーキング」と称えられるナダル【Getty Images】

 10年を超える長期政権も、その始まりは当然ながら、新たな力による下克上だった。既存勢力に穴をうがち、世代交代の先鞭(せんべん)をつけたのは、短く揺れるポニーテイルも初々しい若き日のフェデラーである。


 ピート・サンプラス(米国)に憧れたスイスのオールラウンダーは、2001年のウィンブルドン4回戦でその憧れの存在を破り、テニス界の表舞台に躍り出た。さらに2年後のウィンブルドンで初戴冠を成し遂げると、翌年には全豪オープン、ウィンブルドン、そして全米オープンも制する。サンプラスや同国のアンドレ・アガシらがつないできた「覇者のトーチ」を、フェデラーは完全に受け継いだ。


 同世代に並び立つ者はなく、“独裁”体制を築くかに思われたフェデラーのライバルに名乗りを上げたのがナダルである。サーブ&ボレーに代表されるクラシカルテニスの体現者とも言えるフェデラーに対し、ノースリーブシャツにバンダナという野性味あふれる風貌の若者は、17歳で迎えた初対戦でフェデラーを破り、自らの存在を世に知らしめた。


 うなり声とともに筋肉の隆起した左腕を振り上げ、相手のラケットを弾くほどの強烈なスピンを掛けるショットが彼の武器。その激しいプレースタイルから“レイジング・ブル(荒ぶる猛牛)”の異名を取るナダルは、赤土が舞うクレーコートで絶対的な王者となった。2005年からの2年間、彼はクレーコートで一度も負けず、全仏オープンでは4連覇を成し遂げている。


 かくして先を行くフェデラーを猛追し始めたナダルだが、この頃、彼の危機感を激しく喚起する新星が現れた。それが、ジョコビッチだ。


「弱点がない。彼は必ず、自分やロジャーにとって驚異となるだろう――」


 果たしてナダルが見抜いた通り、ジョコビッチは驚異的なコートカバー能力と攻守一体の身のこなしを武器に、瞬く間にトップ10へと駆け上がる。そして2008年の全豪オープン優勝を機に、ジョコビッチもまた、「テニス史上最高の選手」への道を歩み出した。


 サンプラスが残した「グランドスラム14度の優勝」という偉業をフェデラーが抜き去ったのは、2009年のことである。それから10年が過ぎた今、フェデラーはその記録を20に伸ばし、その背後には19のナダル、16のジョコビッチが続いている。


 この「BIG3」の支配はいつまで続くのか。

 世代交代はいつ、誰の手によって起こるのか。


 それらの問いへの解は、この数年間、先送りされ続けてきた。

台頭する新勢力と、確実に迫る世代交代の足音

華麗なプレーで一時代を築いたフェデラー。今なお、若き挑戦者たちの「壁」であり続ける
華麗なプレーで一時代を築いたフェデラー。今なお、若き挑戦者たちの「壁」であり続ける【Getty Images】

 新たな時代への転換期は、近い将来、「あの時のオーストラリアで訪れていた」と言われるようになるのかもしれない――。


 2019年1月の全豪オープン4回戦。「6歳の頃から、フェデラーに憧れ続けてきた」と公言してはばからない20歳のステファノ・チチパス(ギリシャ)が、憧れの存在を破って南半球の夜空へと両手を突き上げたその試合だ。


「今日、僕のアイドルは、僕のライバルになった」


 試合後、自らに言い聞かせるように語気を強めたその若者は、10カ月後のATPツアーファイナルズでもフェデラーを破り、キャリア最大のトロフィーをその手に抱いた。フェデラーと似たプレースタイルのチチパスは、「次代の旗手」として今、最も大きな期待を集める選手の一人である。

 先駆者が厚き壁にうがった穴へ後続が次々に飛び込み、一つの巨大な潮流が生まれる。これは歴史の必然と言えるだろう。2020年を迎えた今、上位3名の顔ぶれこそ12年前と変わらないが、その背後には20代前半の若き勢力が肉薄し、トップ10には23歳以下の若手が実に4人も名を連ねている。その足音は、「BIG3」の耳にもはっきり届いているに違いない。


 グランドスラムの中で歴史的に最も若い全豪オープンは、オーストラリアという新大陸が有する活力と相まって、何か新しいことが起こりそうな機運を感じさせてくれる。世代交代という問いへの一つの解が、年が明けたばかりの南半球で示されるか。


(企画構成:C-NAPS編集部)

内田暁

テニス雑誌『スマッシュ』などのメディアに執筆するフリーライター。2006年頃からグランドスラム等の主要大会の取材を始め、08年デルレイビーチ国際選手権での錦織圭ツアー初優勝にも立ち合う。近著に、錦織圭の幼少期からの足跡を綴ったノンフィクション『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)や、アスリートの肉体及び精神の動きを神経科学(脳科学)の知見から解説する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。京都在住。

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