アーモンドアイ回避でも日本馬は豪華布陣 香港国際競走4レースを丸ごと展望

JRA-VAN

【香港マイル】最強ビューティージェネレーションに陰り?

最強の名を欲しいままにしてきたビューティージェネレーションだが、近走は2連敗 【Photo by Getty Images】

 香港マイルは前2年に続き王者ビューティージェネレーションを巡る争いになるが、今年は少々様相が異なる。昨年までのビューティージェネレーションは文字通りに他馬を寄せつけない強さを誇っていたものの、近走は2連敗と絶対的な存在ではなくなってきた。

 連戦連勝の昨季は先手を奪った時点で他馬はお手上げ。その威光をもってマイペースに持ち込むと、ゴールまでクルージング状態の圧勝劇を見せていたが、今季は前々走のシャティントロフィー、前走のジョッキークラブマイルとも序盤から絡まれて最後に失速している。ライバル陣営も手をこまねいているばかりではなく、攻略法を打ち出してきた。

 この流れに王者がカウンターを当てられるかで戦況は大きく変わる。絡まれた前2戦は相手を意識し過ぎていた印象があるうえ、今回は重かった斤量もイーブンになる。前2戦(1600m)の四分割ラップは、スタートからゴールまで加速し続ける厳しい流れ。昨年の香港マイルは途中で1秒余りラップを落としており、この辺りを冷静に乗り切れば、あっさり勝つこともあるだろう。ただし、時計という観点では限界がある可能性も。1600mの持ち時計は1分32秒64だが、決着タイムが1分33秒17より速かった5戦では2勝3敗。そのうちの1勝も2着馬に1/2馬身差まで追い詰められている。

日本の春秋マイル王インディチャンプが時計勝負で圧倒するか 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 これに対して時計勝負なら日本調教馬の十八番。目下のシャティン競馬場はレコードが次々と更新されるなど高速化が進んでおり、こうした馬場状態にビューティージェネレーションが苦しんでいるのならチャンスだ。日本から参戦する4頭はレーティングで王者に次ぐ順位(牝馬のノームコアは4ポンド増)。昨年もヴィブロスが2着に食い込んでおり、厚い層をもってすれば勝利を狙えるはずだ。

 春秋マイル制覇で日本のマイル王となったインディチャンプをエース格に、持ち時計最速でレーティングが日本馬2番手のノームコアの上昇度も楽しみ。ペルシアンナイトとアドマイヤマーズは前走の敗戦からいかに巻き返すかだが、前者には4頭の中で唯一の遠征経験、後者は3歳馬で変わり身の余地がある。

 地元の香港勢は最近13年で12勝しており、ビューティージェネレーション以外も手強い。前哨戦のジョッキークラブマイル勝ちなど、ここ2戦で王者に先着しているワイククはもちろん優勝候補の1頭。また、カーインスターも今季初戦の連敗から3戦目の前走で王者を逆転しており、勝利をさらっても不思議のない実力を秘めている。

【香港スプリント】地元馬が優勢、ダノンスマッシュ食らいつけるか

父ロードカナロアに続きたいダノンスマッシュ、強力香港勢にどこまで迫れるか 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 日本からダノンスマッシュが単騎参戦する香港スプリントは、常に地元勢のぶ厚い壁との闘い。昨年は春秋スプリント制覇のファインニードルをもってしても8着と、これまで多くの国内トップクラスが跳ね返されてきた。ダノンスマッシュには父ロードカナロア以来となる勝利を期待したところだが、このレースで上位争いした日本調教馬には父も含めてマイルをこなせる底力があった。G1未勝利でマイル実績もない現状、ダノンスマッシュとしては世界のレベルを肌で学び、来年以降につなげる機会としたい。

多士済々の地元スプリンターたちの中でも注目は3歳馬のエセロだ 【Photo by Getty Images】

 今年も多士済々のメンバーが顔をそろえた地元の香港勢だが、最大の注目馬は3歳のエセロだ。3歳といっても豪州産のため、まだ春から夏の成長段階に過ぎない。そんな若駒が前哨戦のジョッキークラブスプリントで並み居る古馬を一蹴し、早くもG1制覇に王手をかけているのだから驚きだ。豪州産の現3歳世代はキャステルヴェキオがコックスプレートでリスグラシューの2着。イエスイエスイエスはジ・エベレストを勝ち、ラヴィングギャビーは3歳牝馬として47年ぶりにマニカトステークスを制すなど、距離や性別を問わずG1レースで結果を出しており、それらにエセロが続く可能性も低くはないだろう。

 ここでエセロに道を譲ると長期政権を築かれかねないだけに、古馬たちも引き下がれない。スピード豊かなエセロだが、ゲートの速さより二の脚で先行するタイプ。行き切れなかった今季初戦では3着に敗れている。まだまだ経験が浅く危うさもある。

 包囲網の先頭に立つのは、今回に3連覇が懸かるミスタースタニングと安定感抜群のビートザクロックだ。前哨戦はエセロと7kgの斤量差があったが、本番では4kg差に縮まる。1kgで1馬身差という計算式によれば、ビートザクロックは逆転可能になり、ミスタースタニングも1馬身差まで近づける。ミスタースタニングは前走が故障からの復帰戦で、ひと叩きの上積みも大きいだろう。香港ジョッキークラブの公式ツイッターで「December Warrior」と紹介されるほどの勝負強さは脅威だ。

 JCスプリント2着のホットキングプローンは、疝痛の手術から11か月ぶりの実戦で地力の高さを見せた。昨年は前哨戦勝ちから香港スプリントで1番人気に支持されるも結果は9着。今年は対照的に最内枠を引けた。復帰戦は好位からのレースだったが、もともとゲートは速く、エセロにとってうるさい存在となるだろう。

 また、昨年の香港スプリントで2着のディービーピンも前走のJCスプリントが10か月ぶりのレース。古馬には巻き返しの余地が多く、他にもアイヴィクトリー(2017/2018シーズン最優秀スプリンター)など地元勢の実力は紙一重だけに、JCスプリントの結果だけで勝負づけが済んだと考えるのは早計だ。

 検疫の制限が緩和され、豪州から3年ぶりの参戦を果たすインハータイムのレースぶりにも注目。ここで上位争いに絡むことができれば、豪州馬の今後にも影響を与えるだろう。豪州から香港への遠征を後押しする、起爆剤となるような結果に期待したい。

2/2ページ

著者プロフィール

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント