ラグビーW杯2019特集

日本代表を輝かせた“世界最先端の戦術”
チーム一丸となって生み出したトライ

戦術が真価を発揮したスコットランド戦

WTB福岡からパスを受けたWTB松島がトライを決める
WTB福岡からパスを受けたWTB松島がトライを決める【写真:アフロ】

 2019年6月の宮崎合宿から、さらにワールドカップ仕様への戦術へと進化する。予選プールにロシア代表、アイルランド代表、スコットランド代表と欧州勢が3チーム含まれており、両エッジのスペースが空いているという分析の下、よりWTBの2人を大外に張る形を取るようになった。


 また、大外を使うためにポッド間の距離を狭くして、ブラインドサイドをうまく攻めた。ブラインドサイドを狙うのはスペースのあるエッジを攻めることと、ボールリサイクルをする間に逆サイドのアタックの配置(シェイプ)を整える、変える狙いがあった。


 ベスト8を決めた10月12日のスコットランド代表戦は、日本代表のアタックのいいところばかりが出た試合となった。


 まず1つ目のトライはラインアウトからアタックを仕掛けた。FLリーチがゲインし、HO堀江、FLピーター・ラブスカフニを経由して左サイドのエッジにボールを運ぶ。ラインアウトからのアタックだったため、右サイドのエッジにFLリーチとNo.8姫野和樹の2人のFWが残り、左サイドのエッジにはWTB福岡、松島の「ダブルフェラーリ」が残る形となった。


 FWのユニットを当ててラックを形成。そこから別のFWユニットで左サイドにラックを作った後、HO堀江、CTBラファエレ、FBトゥポウ、WTB松島、福岡というアタックラインができていた。SH流が相手FWを引きつけてパス、HO堀江も相手の足を止めると、相手BKは2人で4人を見ないといけない状況に陥っていた。CTBラファエレの飛ばしパスからWTB福岡がブレイクし、最後は福岡がオフロードパスを通して、松島がトライを挙げた。

3年間かけて磨いてきたアタックの成果

CTBラファエレのキックパスをキャッチするWTB福岡
CTBラファエレのキックパスをキャッチするWTB福岡【写真:アフロ】

 2つ目のトライは、まずハーフウェイの左サイドでWTB福岡が相手のハイボールをナイスキャッチ。そこからSO田村、CTB中村を経由し、大きく右に展開。その時、右のエッジにはWTB松島、FLリーチ、No.8姫野と強いランナーがいる中でリーチがゲインする。さらにSH流もブラインドサイドを使って、相手のFWが目の前にいると、WTB松島がミスマッチを見逃さず仕掛けてラインブレイク。

 そこから22mライン上で攻撃を継続し、相手のディフェンスラインが崩れていたところにHO堀江がスピンしてオフロードパス、LOジェームズ・ムーア、FBトゥポウ、PR稲垣啓太とつないでトライを挙げた。オフロードパスに注目が集まるが、チームとしてしっかり仕掛けて2度ラインブレイクして、12次にわたる攻撃を継続して相手のディフェンスを崩したことが前提として大きかった。


 前半40分、日本代表3つ目のトライも相手のドロップアウトからのカウンターだった。LOトンプソン ルークが右サイドでキャッチし、すぐに日本代表は左に展開。しっかりとシェイプができていた。SO田村とCTB中村がポジションチェンジしており、FWのユニットをブロッカー(おとり)にして左のエッジに運ぶ。その時、すでに数的有利ができていて、CTBラファエレはグラバーキックを選択。WTB福岡がキャッチして仕留めた。


 このスコットランド代表戦の3つのトライは、ポッドアタック、オフロードパス、グラバーキック、そしてハイパントキャッチからの攻撃とジェイミー・ジェパンとブラウンコーチの3年間かけて磨いてきたアタックの成果が大いに出たと言える。

時間をかけて「ONETEAM」に

決勝トーナメント進出を決めて抱き合うジョセフHCとリーチ主将
決勝トーナメント進出を決めて抱き合うジョセフHCとリーチ主将【写真:アフロ】

 最後に、後半3分のWTB福岡のトライこそ日本代表のディフェンスシステムが機能したものだった。まずリーチが飛び出して、相手を前で止める。さらに、ボールが空中にある間にCTBラファエレ、WTB福岡が前に飛び出してプレッシャーをかけて、CTBラファエレが絡んでいる間にWTB福岡がボールをかき出すことでボールを奪ってトライを挙げた。このトライでほぼ勝負を決めた。


 ベスト8に進出できた理由を、ジョセフHCは「チーム一丸となるには本当に多くの時間がかかったのですが、かけた時間の分だけ、最終的にひとつのチームを作り上げることができた」と振り返った。トライを決めた選手、アシストした選手に注目が集まりがちだが、アタックでどんな形や絵を描くかをチームみんなで共有していたからこそ、強豪相手にでもトライが取れたというわけだ。


 素晴らしいトライの前には必ず、特にFWの目立たない地道な仕事がある。ワールドカップでの日本代表のトライは、そのほとんどが「ONE TEAM」になっていたからこそ生まれたものだった。

斉藤健仁

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。 学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「世界最強のゴールキーパー論」(出版芸術社)、「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)など著書多数。最新刊は「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版/2017年11月刊)。

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