日本代表を輝かせた“世界最先端の戦術” チーム一丸となって生み出したトライ
戦術が真価を発揮したスコットランド戦
WTB福岡からパスを受けたWTB松島がトライを決める 【写真:アフロ】
また、大外を使うためにポッド間の距離を狭くして、ブラインドサイドをうまく攻めた。ブラインドサイドを狙うのはスペースのあるエッジを攻めることと、ボールリサイクルをする間に逆サイドのアタックの配置(シェイプ)を整える、変える狙いがあった。
ベスト8を決めた10月12日のスコットランド代表戦は、日本代表のアタックのいいところばかりが出た試合となった。
まず1つ目のトライはラインアウトからアタックを仕掛けた。FLリーチがゲインし、HO堀江、FLピーター・ラブスカフニを経由して左サイドのエッジにボールを運ぶ。ラインアウトからのアタックだったため、右サイドのエッジにFLリーチとNo.8姫野和樹の2人のFWが残り、左サイドのエッジにはWTB福岡、松島の「ダブルフェラーリ」が残る形となった。
FWのユニットを当ててラックを形成。そこから別のFWユニットで左サイドにラックを作った後、HO堀江、CTBラファエレ、FBトゥポウ、WTB松島、福岡というアタックラインができていた。SH流が相手FWを引きつけてパス、HO堀江も相手の足を止めると、相手BKは2人で4人を見ないといけない状況に陥っていた。CTBラファエレの飛ばしパスからWTB福岡がブレイクし、最後は福岡がオフロードパスを通して、松島がトライを挙げた。
3年間かけて磨いてきたアタックの成果
CTBラファエレのキックパスをキャッチするWTB福岡 【写真:アフロ】
そこから22mライン上で攻撃を継続し、相手のディフェンスラインが崩れていたところにHO堀江がスピンしてオフロードパス、LOジェームズ・ムーア、FBトゥポウ、PR稲垣啓太とつないでトライを挙げた。オフロードパスに注目が集まるが、チームとしてしっかり仕掛けて2度ラインブレイクして、12次にわたる攻撃を継続して相手のディフェンスを崩したことが前提として大きかった。
前半40分、日本代表3つ目のトライも相手のドロップアウトからのカウンターだった。LOトンプソン ルークが右サイドでキャッチし、すぐに日本代表は左に展開。しっかりとシェイプができていた。SO田村とCTB中村がポジションチェンジしており、FWのユニットをブロッカー(おとり)にして左のエッジに運ぶ。その時、すでに数的有利ができていて、CTBラファエレはグラバーキックを選択。WTB福岡がキャッチして仕留めた。
このスコットランド代表戦の3つのトライは、ポッドアタック、オフロードパス、グラバーキック、そしてハイパントキャッチからの攻撃とジェイミー・ジェパンとブラウンコーチの3年間かけて磨いてきたアタックの成果が大いに出たと言える。
時間をかけて「ONETEAM」に
決勝トーナメント進出を決めて抱き合うジョセフHCとリーチ主将 【写真:アフロ】
ベスト8に進出できた理由を、ジョセフHCは「チーム一丸となるには本当に多くの時間がかかったのですが、かけた時間の分だけ、最終的にひとつのチームを作り上げることができた」と振り返った。トライを決めた選手、アシストした選手に注目が集まりがちだが、アタックでどんな形や絵を描くかをチームみんなで共有していたからこそ、強豪相手にでもトライが取れたというわけだ。
素晴らしいトライの前には必ず、特にFWの目立たない地道な仕事がある。ワールドカップでの日本代表のトライは、そのほとんどが「ONE TEAM」になっていたからこそ生まれたものだった。