ZOZOチャンピオンシップ2019連載

タイガーだけじゃない、日本が見せた底力 PGAツアー初開催の手応えと今後の課題

北村収

タイガーも驚きの奇跡のコンディション回復

大雨の影響で順延となった大会2日目。コースのあちらこちらが水没した(写真は25日の18番グリーン付近) 【Getty Images】

 大会2日目となる25日は記録的な大雨に見舞われた。翌26日は晴れ予報だったものの、コース内には多くの水没箇所が発生。順延となった第2ラウンドの開催が危ぶまれた。

 しかし、午前3時に出勤して作業を行ったスタッフの方々が懸命に復旧作業。溜まってしまった水をポンプでくみ出すなど、懸命にコース整備作業を実施した。フェアウェイの水が引かなかった10番ホールは、ティーグラウンドを前に出して140ヤード(パー4)となったり、ギャラリーの安全を考慮して無観客試合になった。そんな中だったが、10時にトップの組がスタート。18ホールのラウンドを無事に終えた。

「今日のプレーができるようになっているなんて驚いたよ」

 ウッズもコース管理スタッフの素晴らしさに驚愕(きょうがく)。また、「フェアウェイの水はけがすごく良かった」とコースの設計の良さを褒めていた。

 ワールドゴルフランキングの優勝者ポイントを見ると、ZOZOチャンピオンシップは「64」。プレーオフシリーズの「BMW PGA Championship」などと同じで、いかに今回の大会の選手層が厚かったかを示している。

 実は日本では過去にも同じ優勝ポイントの大会を開催していた。89年のダンロップフェニックストーナメントだ。トム・ワトソンやセベ・バレステロスなど、当時の世界のトッププレーヤーが数多く参戦。日本だけでなく世界のゴルフファンが注目していた。最近では日本のトーナメントのワールドゴルフランキングのポイントは、世界の強豪選手の出場が減るにつれ下がりつつあるが、今回のZOZOチャンピオンシップで、世界レベルの大会を開催する運営能力も、そして大会を盛り上げる熱狂的なファンがいることも実証できた。

 今回はPGAツアーだったが、今後、WGC(世界ゴルフ選手権)、ワールドカップ、さらには対抗戦のプレジデンツカップなど、ワールドワイドなゴルフイベントの開催が期待される。もちろん昔のように日本ツアーに世界の強豪を招いてくれたら、ZOZOチャンピオンシップのように日本のゴルフファンが歓喜するのは間違いない。

 来年、ZOZOチャンピオンシップ以上の豪華選手の来日が期待されるゴルフイベントが開催される。8月の東京五輪だ。

 今回のZOZOチャンピオンシップで最も注目を集めたウッズ、マキロイ、そして日本期待の松山も以前より出場に前向きな発言をしている。優勝会見でウッズは、「ぜひ米国代表として出場したい。友人の何人かは五輪に出場しているが、一生に一度の経験だと言っていた。もし出場できたら光栄なことだし、来年は44歳になっているのでその後は何回チャンスがあるかも分からない」と改めて東京五輪への意気込みを語った。

ZOZOならではの期待

無観客試合などで当初予定した観客数には満たなかったが、初日や4日目は多くの人が訪れたアコーディア・ゴルフ習志野カントリークラブ 【Getty Images】

 日本のトーナメントでは考えられないギャラリー数に、運営面ではさまざまな課題も残った。最寄駅からの送迎バスには長時間待たないと乗車できない状況になり、公式Twitterの情報では最長2時間待ちの情報が流れた。また、トイレや飲食店ブースにも長蛇の列ができていた。

 日本にとって次回のゴルフの大イベントである東京五輪での1日当たりの想定ギャラリー数は25,000人とのこと。送迎などの問題に加えて、真夏の熱中症対策や夏場は雷の危険などもある。さらには台風などの問題も。天候など不測の事態の場合の対策準備が求められる。

 また、主催がインターネットの会社だったにもかかわらず、ギャラリー向けのネットサービスがほとんどなかったことも課題の一つ。大人数が集まっていたせいか、テザリングによるネットの接続状況も悪く、「ネットがつながらないから選手のスコアが分からない」と順位とスコアが表示されているリーダーボードがないホールで困っているギャラリーを数多く見かけた。また、これは他のトーナメントでも同じだが、選手が今どこにいるのかが分からないので、お目当ての選手がどこでプレーをしているのかを探せず困っているギャラリーもいた。

 トーナメントによっては専用のアプリがあり、リアルタイムでスコアなどをチェックしたりホールの詳細情報が確認できるだけでなく、アプリをダウンロードすると自分の位置や選手の位置情報もリアルタイムで分かるものもある。そもそもZOZOはネットの会社。会場内にWi-Fiを引いてもらい、来ていただいたギャラリーが最高に楽しめるようにネットサービスを来年はぜひ実施してほしい。

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著者プロフィール

1968年東京都生まれ。法律関係の出版社を経て、1996年にゴルフ雑誌アルバ(ALBA)編集部に配属。2000年アルバ編集チーフに就任。2003年ゴルフダイジェスト・オンラインに入社し、同年メディア部門のゼネラルマネージャーに。在職中に日本ゴルフトーナメント振興協会のメディア委員を務める。2011年4月に独立し、同年6月に(株)ナインバリューズを起業。紙、Web、ソーシャルメディアなどのさまざまな媒体で、ゴルフ編集者兼ゴルフwebディレクターとしての仕事に従事している。

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