春の二冠&両TR勝ち馬不在の菊花賞 勝ち馬の行方を過去10年データから占う

JRA-VANデータラボ

前走セントライト記念出走馬の前走着順別成績

表6 【画像提供:JRA-VANデータラボ】

 表6は、前走セントライト記念出走馬の前走着順別成績。この組も今年の1着馬であるリオンリオンが故障のため戦線を離脱したのが残念のひと言である。表4の項で述べた通り、この組は本番の成績が振るわず、全体に低調な数値が並ぶ。

日本ダービーでの着順別成績

表7 【画像提供:JRA-VANデータラボ】

 表7は日本ダービーでの着順別成績。今年の菊花賞にはダービー1、2着馬の出走登録がなかったが、そもそも過去10年で菊花賞に出走したダービー1着馬は2頭しかいない。天皇賞・秋に向かった馬、海外遠征を敢行した馬のほか、故障によって休養または引退を余儀なくされた馬も少なくなく、ダービーというレースの過酷さを物語っている。

 それはともかく、好走例が多いのは、ダービー4、5着馬と10着以下。より興味深いのは10着以下で、着順が上だった6〜9着は2着1回しかないのに、こちらは計5頭が馬券になっている。そして、この5頭のうち4頭は皐月賞にも出走していて、セイウンワンダーは3着、トーセンラーは7着、キタサンブラックは3着、クリンチャーは4着。つまり、皐月賞ではなかなかの走りを見せていたのに、ダービーではふたケタ着順に落ちてしまった馬たちだ。なお、過去10年、ダービー3着馬は半数の5頭が菊花賞に出走したものの、好走例が見当たらない。

皐月賞・日本ダービーともに不出走の好走馬

表8 ※13年のバンデはトライアル→1000万下の順で出走 ※※15年のリアファルは1600万下には出走し、1戦(1着) 【画像提供:JRA-VANデータラボ】

 表8は、皐月賞・日本ダービーとも不出走ながら菊花賞で好走した馬15頭を一覧にしたもの。併せて1000万下(現2勝クラス)における簡単な戦績と、トライアルでの成績を掲載している。昨年のフィエールマンのように1000万下にもトライアルにも不出走という馬もおり、今後は同様の臨戦過程が増えてくる可能性もあるが、現状ではさすがにレアケースだ。

 1000万下に出走歴があった13頭の共通項を見ていくと、使ったレースは2戦以下だった馬が12頭を占め、そのうち9頭はこのクラスを勝ち上がり済み。そして、1000万下で勝ち上がれなかった4頭は、次に出走した東西どちらかのトライアルで優先出走権を獲得している。このふたつのうちどちらかは満たしておくことが、夏の上がり馬の目安となるのではないか。

 ただし、気をつけるべきことがひとつある。それは4歳夏の降級制度が廃止されたこと。実際、今年の夏競馬では2勝クラスで3歳馬が勝利するケースが明らかに増えた(18年26頭→19年46頭)。やはり、上のクラスから降級してくる4歳馬がいないのは大きいようで、2勝クラスを勝った3歳馬の価値も下がった可能性は否定できない。つまり、この組に関しては以前より厳しめにジャッジしたほうがいいかもしれない。

種牡馬(父、母の父)別成績

表9 ※1着馬もしくは2頭以上の2、3着馬を出した種牡馬のみ掲載 【画像提供:JRA-VANデータラボ】

 表9は種牡馬別成績で、父および母の父としての成績を掲載している。なお、集計対象は1着馬もしくは2頭以上の2、3着馬を出した種牡馬のみとなっている。どちらのランキングにも共通するのが、現役時代に菊花賞を勝った種牡馬が強いこと。ディープインパクトダンスインザダークは両方に名前があり、母の父だけではメジロマックイーンも該当する。両方に名前があるもう1頭のスペシャルウィークも菊花賞で2着に入っている。そのほか、かつては父として複数の菊花賞馬を送り出したサンデーサイレンスブライアンズタイムが、現在では母の父としてランクインしている点にも注目したい。

結論

 今年の菊花賞で前評判が高いのは、皐月賞2着、ダービー3着のヴェロックス。秋初戦の神戸新聞杯でも2着にまとめて順調なところをアピールしているが、表5の項で確認した通り、このレースの2着馬は本番でも2着が多いというのは気になるところだ。表7の項目で述べた通り、ダービー3着馬は好走例がない。もちろん実績最上位で侮れない存在ではあるが、データ傾向としてはさほどの追い風が吹いてはいないことを記しておきたい。

 ダービー出走組では4、5着と10着以下の好走例が多かった。今年の出走登録で該当するのは5頭で、5着のニシノデイジー以外は10着以下のほうとなる。そのニシノデイジーは、父ハービンジャーの産駒が菊花賞で【0.0.0.6】、母の父アグネスタキオンの産駒も【0.0.0.3】と現状実績がない。母の母の父まで遡れば98年の菊花賞勝ち馬であるセイウンスカイがいるのだが。また、関東馬というのもデータ的には苦しいところではある。ダービー10着以下では、10着のメイショウテンゲンと17着のサトノルークスがディープインパクト産駒。いずれもセントライト記念に出走しており、データ通り、2着に入った後者を重視すべきだろう。

 夏の上がり馬だと、まずは神戸新聞杯3着でディープインパクト産駒のワールドプレミア。また、セントライト記念3着のザダルは関東馬という点がネックだが、父のトーセンラーは11年の菊花賞3着馬で現役時代に実績がある。この東西のトライアル3着馬は血統的にも注目できる。

 2勝クラスを勝ってきた馬では、芝2200mのレースを勝ってきたホウオウサーベルとヒシゲッコウが目につくところだろう。ただし、前者は父がハーツクライというのは気になるところで、産駒は長距離戦を得意とするものの、自身は現役時代に菊花賞で1番人気7着に敗れ、産駒も【0.1.0.10】と不振が目立つ。一方の後者は、17年の勝ち馬であるキセキを送り出した父ルーラーシップという血統面はいいのだが、こちらも不振の関東馬。名伯楽である堀宣行調教師の手腕をもってクリアできるかどうか。

 そのほか、2走前に2勝クラスを勝ち、前走の3勝クラスでも3着に入ったルーラーシップ産駒のヴァンケドミンゴ、いずれも複数の好走馬を出している父キングカメハメハ、母の父サンデーサイレンスのカウディーリョの名前を挙げておきたい。

文:出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。

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