ラグビーW杯でカメラマンが感じたこと 夢を叶え、夢が生まれるスタジアム

志賀由佳
 ラグビー日本代表が初の決勝トーナメント進出を決め、ワールドカップの熱狂と感動が、日本中に広がっています。それぞれの会場で生まれるドラマを最前線で見つめているカメラマンの志賀由佳さんによるリポートです。

リーチ主将はお辞儀の指揮者?

日本代表とサモア代表の選手がファンに「お辞儀」の準備 【Photo by Yuka SHIGA】

 日本代表とサモア代表の試合後、激しい戦いを終えた両チームの選手たちが集まります。今大会で恒例になったファンへの「お辞儀」。選手たちを導く日本代表のリーチ主将は指揮者のようです。

 試合後に選手たちはジャージ交換をしているので、どの選手が日本代表で、どの選手がサモア代表か、パッと見ただけではわかりません。そんな選手たちが一緒になってファンに感謝を伝える姿は「ノーサイド」という言葉をよく表していると感じました。

ブナ選手が叶えた夢が、子どもたちの夢に

晴れやかな表情を見せるトンガ代表クーパー・ブナ選手 【Photo by Yuka SHIGA】

 大歓声に包まれた熊本のスタジアムに入場してきたトンガ代表の選手が、ふと観客席を見上げてほほえみました。その選手は東芝ブレイブルーパスに2013年から2年間在籍していたクーパー・ブナ選手。
 あまりにも素敵な笑顔だったので、ブナ選手に写真を送ると、彼はこの写真に 「If you can dream it, you can do it.(夢を持つことができれば、成し遂げられる)」 とキャプションをつけてくれました。

 今大会の日本代表の活躍や、個性豊かな海外の選手たちが躍動するワールドカップを間近で体感した多くの子どもたちが、いつか自分もこの場所に立ちたいと夢を抱けるようになったら、日本大会は成功だったと言えるのでしょう。

試合前に感じたジョセフHCの覚悟

日本代表vs.スコットランド代表の試合前に覚悟の表情を見せたジェイミー・ジョセフHC 【Photo by Yuka SHIGA】

 日本代表とスコットランド代表の試合前。アップを終えた選手とスタッフは、ピッチで最後の円陣を組みました。そこから選手たちはそれぞれの肩に手を置き「ONE TEAM」となって大歓声を受けてロッカールームに一度戻ります。
 その選手たちの後ろ姿を撮ろうと構えていたら、ジェイミー・ジョセフHCがくるりと振り向いてこちらに歩き出しました。ちらりと横を見たあとにふと地面を2、3秒見つめて、顔を上げた時には覚悟を決めたように真っ直ぐと堂々と一点を見据えていました。
 身長196センチ、体重は100キロを超えるジョセフHCが、いつも以上に大きく見えた瞬間でした。

日本代表を後押しするファンの存在

日本代表を応援するファンの声が、選手を後押ししている 【Photo by Yuka SHIGA】

 9月20日のロシア戦が4万5745人、9月28日のアイルランド戦が4万7813人、10月5日のサモア戦が3万9695人、そして10月13日のスコットランド戦が6万7666人。スタジアム以外でもファンゾーンやテレビの前で、こんなにも多くの人々が、本気でラグビー日本代表を応援する日が来るなんて夢のようです。

 どんなに相手が強くても、心から選手を信じて後押しするジャパンコールがスタジアムに響けば、それはチームの力となり、次のステージに進めるんじゃないか……とあらためてファンの存在の大きさを感じています。

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