2年目の大谷を現地記者がデータ分析「最高級の打球速度とスピードを兼備」
2年目の大谷翔平はスタッツとしてどう見えたのか。現地記者がデータ分析を基に答えた 【Getty Images】
今季の大谷はエンゼルスのDHとして106試合に出場。打率.286、18本塁打、62打点、出塁率.343、OPS.848という数字を残した。“打撃専門ならとてつもない成績をたたき出すのではないか”という予測もあっただけに、少々インパクトに欠ける数字に思えるかもしれない。ただ、より掘り下げていくと、トラディショナル(伝統的)な打撃成績には現れないすごさも見えてくる。
今回は一般的なスタッツに残らない分析を『MLB.com』のデビッド・アドラー記者に尋ねた。アドラー記者はメジャー公式サイトの動作解析システム『Statcast』の分析担当者。特に大谷に関して打球の初速スピード、走塁スピード、投球速度など走攻守の詳細なデータを瞬時に弾き出すことで知られ、日本メディアにもさまざまな形で露出してきた。ある意味で“Shohei Ohtani”を誰よりも知る米メディアの言葉に、じっくりと耳を傾けてみたい。
昨季ほどクレイジーではないが…
1年目ほどの驚異的なインパクトはありませんでしたが、今季も優れた成績ではあります。去年で期待度が高まったので、やや落ちるように感じてしまうのでしょう。リーグ平均からのOPSの傑出度を測る「OPS+」は今季123で、つまりリーグ平均よりも23%も上だということ。これはブライス・ハーパー(フィリーズ)、ロナルド・アクーニャ・ジュニア(ブレーブス)、フランシスコ・リンドア(インディアンス)といったスーパースターたちと同等の数字なのです。昨季ほどクレイジーな働きではなかったにせよ、ハイレベルであることが分かっていただけるはずです。
――スタットキャストの分析でも高水準でしたか?
1年目と同様に強烈な打球を飛ばしています。打球の平均初速度は2018年が92.6マイル(約149キロ)で、今季は92.8マイル(約149.3キロ)。落ちていないどころか、実は1年目を上回るほどのハードな打球を打っていたということです。
また、打球を遠くに飛ばすために理想的な打球速度と角度を組み合わせた「バレル」という指標がありますが、大谷がバレルゾーンに打球を飛ばす確率も10%を超えています。去年のバレル率はメジャー全体でトップの2%に含まれる16.0%で、今季の12.2%はそれに比べれば劣りますが、依然として高水準であることは間違いありません。
――打球の力強さは変わっていないということですね。
彼がメジャーキャリアで打った中で最速の打球は今季に記録したものです。キャリア最速は6月26日のレッズ戦で放った115.1マイル(約185.2キロ)の二塁打 。本塁打では今季最後に打ったものが114.1マイル(約183.6キロ)を記録し、どちらも去年のベストである113.9マイル(約183.3キロ)を上回っています。
1秒間の平均走行距離を表すスプリントスピードで、“エリート”と呼ばれる数値をたたき出した 【Getty Images】
大谷のスプリントスピード(1秒間の平均走行距離)は28.2フィート(約8.6メートル)で、MLBの平均である27フィート(約8.2メートル)を大幅に上回っています。これは平均数値ですが、時に“エリート”に含まれる30フィート(約9.1メートル)に達したこともありました。DHの選手としては非常に優れた数字で、特に投手までこなすことを考えたら、このスピードはすごいことです。
結論として、彼は最高級の打球速度とスピードを兼備しており、これが素晴らしいコンビネーションであることは言うまでもありません。
――去年と比べてやや成績が落ちた要因となった数字というと何が挙げられますか?
去年と比べてゴロ率が44.0%から49.6%に上がっています。打球初速度は前年比で上がっていますが、打球角度は12.3度から6.8度に下がっている。ざっくり言うと、大谷は打球をもっと打ち上げるようになれば、多くの数字が2018年に近づくはずです。