楢崎智亜が駆け上がる「五輪表彰台の頂」 遊び心こそスポーツクライミングの極意
難しいミッションだった世界選手権での五輪出場権獲得
自身のライバルとしてチェコのアダム・オンドラ選手の名を挙げたものの、全体のレベルは日本が一番高いと語る楢󠄀崎 【写真:C-NAPS編集部】
フランスやオーストリアも全体的にレベルが高いのですが、実は一番選手層が厚いのは日本です。日本は男女共に代表選手全員がワールドカップや世界選手権で優勝できる実力があります。なので、自分が世界選手権で日本人最上位になり、無事に東京五輪の出場権を獲得できてホッとしているのが正直なところです。日本代表として五輪出場を決めるのは他国よりもはるかに難しいと思います。
ただ、そんなし烈な代表争いにおいても「自分は出場権を獲れる」と確信していました。早く決まれば五輪の準備期間に当てられるので、絶対に世界選手権で決めるつもりでした。また、世界選手権で優勝したい思いも強かったですね。国ごとに出場枠が限られる五輪とは異なり、世界選手権は強豪選手が一堂に会するので。結果、目標のボルダリングとコンバインドの2種目で優勝できて良かったです。順当に2冠を達成できて「完全に実力がついたな」とより自信を深めることができました。
東京五輪で実現したい弟・明智との「金メダルを懸けた兄弟対決」
先に五輪出場権を獲得した兄・智亜(左)は、弟・明智(右)との東京五輪での兄弟対決を望んでいる 【Getty Images】
それから、五輪には兄弟そろって出場したいですね。弟の明智(めいち/TEAM au)と兄弟で金メダル争いができたら最高です。日本代表の出場枠はあと1つですが、明智なら大丈夫だと信じています。今も一緒にトレーニングしていて切磋琢磨(せっさたくま)していますし、常に頑張っている姿を側で見てきました。小さい頃から競い合ってお互いのレベルを上げてきたこともありますし、先に五輪出場を決めた僕に追いつくためにも明智はさらに成長してくれるはずです。明智には「先に待っているぞ」とエールを送っておきますね。
東京五輪でのメダル獲得は、今後の競技の盛り上がりに大きく関わると思います。だからこそ、東京五輪で自分が金メダルを獲得して有名になることで、クライミングの輪を広めて競技人口を増やしたいです。クライミングは本当に楽しいスポーツですし、設計された課題がどんなに難しくても「どう登ろうか、どう攻略しようか」という遊び心を持って取り組めるところが魅力だと思っています。その魅力を一人でも多くの人に広めていきたいです。
そして、個人的には「歴代最強のクライマー」になることが目標です。当たり前ですが、強い方が楽しいですし、強さを磨くことで実現不可能なことですら成し遂げることができる気がします。クライミングをより遊び、より楽しむためにも、強さを極め続けたいと思います。