世界を驚かせた全日本の19歳、西田有志 「低い前評判をすべてひっくり返したい」

田中夕子

全日本最年少の19歳、西田有志に初めてのW杯について話を聞いた 【坂本清】

 昨秋のイタリア、世界選手権で見せた西田有志のプレーに、各国メディアも驚いた。本当に18歳か? 海外には来ないのか? ジャンプサーブでポイントを重ねるたび、矢継ぎ早に質問が飛んでくる。

 世界が自分を認識してくれた。それだけでも十分、うれしすぎるぐらいの出来事だが、それ以上にうれしいのは子供から写真やサインをねだられる機会が増えたこと。バレーやっているの? ポジションは? さほど年齢の変わらない小学生に話しかけ、笑顔を見せる。

「自分もあんなふうに、全日本の選手や試合を見て“すげー!"って目を輝かせていましたから。やっと最近、認識してもらえて、サイン下さい! とか言われるとうれしいですよ。子供に憧れられるような選手、スターになりたいです」

 きっと子供の頃と変わらない。これからを語る西田の目は、キラキラと輝いていた。(取材日:8月2日)

強豪ひしめくW杯で「勝つ」姿をどれだけ見せられるか

Vリーグのジェイテクトでプレーする西田。「W杯、五輪ではもっと大きな変化がある」と心を踊らせる 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

――10月1日にはワールドカップ(W杯)が開幕します。西田選手ご自身、そしてチームの現在の状態を教えて下さい。

 周りからは「男子はメダルが遠いんじゃないか」という声もありますが、やるのは自分たちですし、メダルを獲るも獲らないも自分たち次第。もしここでメダルを獲れたら男子バレー、バレーボールへの注目度も変わると思うとワクワクします。高校を卒業してから急展開で全日本に来させてもらって、今この場所にいられるのが本当に大きな変化ですけれど、W杯、五輪ではもっと大きな変化があると思うんです。

 結果が出れば変わる、と思うからどれだけしんどい練習でも乗り越えられるし、結果につなげるまでどうやってそこに持って行くか。その過程を考えるのが楽しいし、五輪に向けて勢いをつけるためにも、W杯はすごく楽しみで、チームも自分もしっかり準備できていると思います。

――昨秋はイタリアでの世界選手権に出場しましたが、バレーボールの三大大会、日本開催の大会出場は初めてです。心境は?

 ネーションズリーグでブルガリアに行った時、マテイ(・カジースキ=ジェイテクト)に会ったんです。その時、元ブルガリア監督のラドスティン・ストイチェフと話す機会もあって「君の試合映像は全部見ているよ」と言われて。マテイからの情報もあるそうなんですが、自分に注目してもらえるのは素直にうれしいです。大きな大会に出るとこんなふうに注目してもらえるんだと思えたので、W杯でももっと努力をして、「すごい選手だな」と思われたいし、「日本ってすごいな。いいチームだな」と思わせたいです。

――他競技も国際大会で結果を出す中、バレーボールは「厳しい」と言われることが多くあります。その評価については?

 覆したいですね。もちろん去年も結果を出せなかったので、覆すには何年も挑戦しないといけないし、蓄積されたイメージも払拭していかないといけないと思うんですけれど、4年前のW杯でマサさん(柳田将洋)と(石川)祐希さんが出てきて6位になって、バレーの人気も一気に上がった。それは試合を見ていて「面白い」と思ってもらえたからだと思うし、そういう姿を見せれば応援してくれる人も増える。

 そのためにはまず、自分が満足いくプレーをしないといけないし、自分がダメだったらチームもダメになるんだ、という責任感を持って臨みたいです。バレーボールに詳しくない人でも、はるかにデカイ外国のチームに日本が勝ったら「強いな」と思ってもらえるし、みんなとにかく勝ちたいと思っているので。結果を求めて、勝ちにいく、そして勝つ姿をどれだけ見せられるかが、今回の一番のポイントだと思っています。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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