柳田将洋、主将として挑む2度目のW杯  「プレッシャーを掛けながら結果を」

田中夕子

五輪を前に、危機感を抱くのは「当たり前」

五輪を前に「危機感を抱くのは当たり前」と言い切る柳田 【坂本清】

――4年前のW杯の頃と比べて、今は対戦国に対しても「見上げている」感覚ではないように見えます。柳田選手はどう感じていますか?

 そうですね。4年前はとにかくガムシャラに、みたいな感じでしたけれど(笑)。米国のブロックとかはものすごいプレッシャーがあるので、相手のいいサーブに対しても常に「Aパスを返さなければいけない。そうじゃないと勝てない」と思っていました。もちろん今も米国のブロックや組織力はすごいと思いますが、Aパスを返さなきゃ、という発想はない。その変化はありますね。

 個人としては、海外へ出て、自分のウィークポイントがすごく浮き彫りになったと感じました。たとえばブロックもそうだし、実際僕はチームの中でも小さいし手が出るわけではない。海外のクラブに行くと、そこをカバーする個の力が求められる。でもそれをただネガティブに捉えるだけでなく、補うためにはもっと自分の強みを鋭くしなきゃダメだと思いましたし、いろいろな課題に直面して考えさせられるので、それは代表に生きているんじゃないかと思います。

――日本もここ3年で戦術が磨かれ、変化も進化していると感じますが、世界の進化も著しい。実際に戦う中で柳田選手はどんなふうに感じていますか?

 どの国も若い世代がまたどんどん出てきていますね。僕もまだ全然若いとは思うんですけれど(笑)。各国でいろいろな選手が切磋琢磨(せっさたくま)している印象はあります。新しい選手が出てくると、代表チームとしてもスタイルが変わったり、流れが変わったり、チーム内でのバランスも変わってくると思うので、変化の幅も大きく感じられる気がします。でもそれは海外のチームだけじゃなく、たとえば日本でも西田(有志)が出てきた。世界選手権やネーションズリーグで彼が活躍していることで、世界に何かしら影響を与えているかもしれない。

 西田を見ていると、まだまだ爆発的に伸びると思うんですよ。たとえばW杯を経験したら、自分も海外でプレーがしたいとか、オポジットとして攻撃だけをやるのではなくサイドに入ってサーブレシーブもやりたいとか、可能性っていっぱいあるじゃないですか。西田が入ったことで自分も同じように若くてガムシャラだった頃のことを思い出して刺激になるし、石川を見ても刺激しかない。チーム内の争いもすごくいいことだと思うし、日本も世界も、変化したり成長するのは決して4年周期ではない。もっと目まぐるしく変化していると思います。

――日本代表も西田選手のように若手で勢いのある選手もいれば、清水邦広選手、福澤達哉選手のようにキャリアのある選手もいて、そのバランスも面白いですね。

 そうですね。清水さんや福澤さんの経験は大きいですし、西田も同じポジションの清水さんを見られるのはものすごく勉強になると思います。清水さんのブロックに対する打ち方とか、学ぶことはたくさんありますし、実際に僕も見ていろいろ学んでいます。

――シーズン当初は「危機感」を口にしていました。今、その危機感は消えましたか? まだ抱いていますか?

 感じています。そこは変わらないですね。結果だけを見ればネーションズリーグも7勝8敗だし、そもそもこれで満足していたら終わりです。僕らが世界ランク1位のブラジルならばそう思ってもいいかもしれませんが、僕らはどこを狙っているのか。それを考えたら、去年の結果よりも1勝増えたとはいえ、それだけの話です。

 僕個人としても、今年はほとんどコートに立てていないので危機感しかないです。五輪は来年ですから。そこで7勝8敗でいいわけがない。10勝できていない、2ケタ勝利もできいないんだから。これからどうするんだ、という危機感を抱くのが当たり前だし、それぐらいのプレッシャーは感じて臨まなければいけないと思っています。

――W杯はその結果を証明するところでもあります。あらためて、目標を聞かせて下さい。

 W杯がゴールではなく、その先にある東京五輪でどんなチームになるか。どう戦うかということを考えたら、今年は絶対に結果が求められるし、僕らも結果を求めています。日本はずっとそういうメンタリティーで戦わなければならないと思いますし、プレッシャーを掛けながら、結果をつかみ取りたいです。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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