雨の中、米国を上回った若き侍の集中力 際立つ強心臓と、相手のミスを生かす攻撃

沢井史
「第29回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」は1日、韓国・機張(キジャン)で一次ラウンド6試合が行われ、日本は大会18連勝中のアメリカを16対7で下した。アメリカから勝利したのは、自国開催だった2015年の同大会以来。これで一次ラウンド負けなしの3連勝となり、スーパーラウンド進出に大きく近づいた。

笑顔こぼす2番手・西

雨が降りしきる中、アメリカ打線相手に好投した西 【Getty Images】

 試合前から小雨が降り続いていたが、試合が始まると雨粒が徐々に大きくなり、時折本降りとなるコンディションの中、“決戦”は始まった。

 先にマウンドに立ったのは、左腕の林優樹(近江)。左の強打者がそろうアメリカ打線を前に、永田裕治監督は「(先発投手を決めるのに)相当悩みました」と思いを打ち明けた。試合当日の昼食時に先発を告げられたという林は「たぶん、自分が緊張すると思って(直前に)言われたんだと思います。言われた時は……やるしかないと思いました」と気合は十分だった。

 試合開始。林は来年のドラフト1位候補と言われている、1番打者のクロウ=アームストロングにいきなり左翼前に落ちる二塁打を許す。その後、1死二、三塁となり、4番のソダーストロムの犠飛で、アメリカに先制される。

 ストレートがなかなか決まらず、初回だけで26球を投げさせられた林は、持ち味であるリズムの良いピッチングがなかなかできなかった。際どいボールをしっかり見てくるアメリカ打線に「とても嫌な感じでした」と振り返る。

 だが、その直後の1回裏に、先頭の森敬斗(桐蔭学園)が右翼越え三塁打を放つと、4番・石川昂弥(東邦)のタイムリー二塁打ですぐさま追いつく。2回の林は2奪三振無失点と好投し、3回からは右の西純矢(創志学園)にスイッチ。西は鋭く曲がるスライダーとキレのある直球でアメリカ打線を手玉に取り、2イニングで5奪三振をマーク。

「ストレートでアメリカの打者からあれだけ空振りが取れたのは自信になりますが、自分は見逃し三振を取ることが少ないんです。見逃し三振を(二者連続で)取れたことがうれしい」と笑顔をこぼした。

2イニング連続で打者一巡の猛攻

打線は4番・石川が2本のタイムリーを放つなど、計16得点を挙げた 【Getty Images】

 1対1のまま迎えた3回。日本は死球と安打、相手のバッテリーミスで無死二、三塁のチャンスをつくると、武岡龍世(八戸学院光星)の内野安打で勝ち越しに成功。韮澤雄也(花咲徳栄)が死球でつなぎ、またしても4番・石川の2点タイムリーで4対1。さらに6番の熊田任洋(東邦)も2点タイムリー。この回だけで5点を奪い、アメリカを一気に突き放した。

 4回にも2死走者なしから、韮澤の遊撃への当たりが一旦内野ゴロと判定されたが、「一塁手が捕球の際にベースから足が離れた」と永田監督はリプレー検証を要求し、セーフに覆る。ここから打線が連続四球を選び満塁にすると、再び熊田が2点タイムリー。坂下翔馬(智弁学園)もタイムリーを放つなど、この回も5点を挙げ、2イニング連続で打者一巡の猛攻を見せた。

 だが、アメリカもこのまま黙ってはいない。

 5回に制球が乱れた西から2点を返すと、6回から登板した前佑囲斗(津田学園)から3点を挙げ、7回は飯塚脩人(習志野)から5番・ロモのタイムリー三塁打で11対7に。最大10点あった点差を、4点まで詰め寄った。

 日本も5回、6回と三者凡退に抑えられ、アメリカベンチはイケイケムード。流れが徐々にアメリカに傾きかけていた。

 その嫌な流れを断ち切ったのが、7回の先頭打者で2年生・横山陽樹(作新学院)が放ったレフトへの本塁打だった。この一発で日本打線に再び勢いがつき、8回には4点を挙げてアメリカを突き放し、終わってみれば16対7の大勝。

 石川、熊田の東邦コンビで計7打点をたたき出すなど、中軸がしっかり役割を果たした。

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著者プロフィール

大阪市在住。『報知高校野球』をはじめ『ホームラン』『ベースボールマガジン』などに寄稿。西日本、北信越を中心に取材活動を続けている。

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