連載:東京五輪に続く世界バドミントン

さらに激化したバドミントン五輪レース ナガマツが優位に、男子複は新鋭が大躍進

平野貴也

金メダルが狙える実力を証明した日本勢

し烈な女子ダブルスの五輪レース。優勝した松本/永原(写真右の2人)はポイントだけでなく、ファイナルズの優先出場権を獲得したことも大きなアドバンテージになる 【写真:エンリコ/アフロスポーツ】

 五輪レースを強く刺激する大会になった。スイスのバーゼルで行われていたバドミントン世界選手権が25日に閉幕。日本は男子シングルスの桃田賢斗(NTT東日本)と女子ダブルスの松本麻佑/永原和可那(北都銀行)がそれぞれ連覇を果たし、金2個、銀3個、銅1個で過去最多タイ6個のメダルを獲得した。

 驚くしかない。日本代表の朴柱奉ヘッドコーチも「昨年の成績(金2個、銀2個、銅2個)が本当に良くて、大会前は『それ以上を目指す』と言ったが、難しいかなと思っていた。でも、結果は、銀が1個増えた。大会前に選手に言った、全種目でのメダルも達成できて良かった」と、選手の想定以上の活躍を喜んだ。約1年にわたって世界ランク1位を保持して連覇を果たした桃田は、2020年東京五輪でも金メダルの筆頭候補。期待が膨らむ結果となった。女子ダブルスも決勝で日本勢対決が実現し、五輪でも金メダルが狙える選手層の厚さと実力を証明した。

 今年は、2020年東京五輪の前年。弾みがつく成績であるというだけでなく、東京五輪の出場権争い(俗に「五輪レース」と呼ばれている)においても大きな意味を持つ。出場選手は、来年4月30日付けの世界ランクによって決まる。各大会には、順位ごとにランキングポイントが設定されており、対象期間となる直近1年(2020年4月30日の場合は、2019年4月29日から2020年4月26日まで)において獲得した上位10大会分の合計によって、ランクは決まる。

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ナガマツ優勝で大きなアドバンテージ獲得

 五輪レースで、最も注目されているのが、女子ダブルスだ。世界選手権の開幕翌日の20日に更新された世界ランクで1位から3位までが日本勢(※以下、世界ランクは20日更新のもの)。しかし、五輪は、同一種目の同国勢が最大2組しか出場できない。世界ランク3位でも出場できない可能性がある、し烈な争いとなっている。

 世界選手権は、五輪レースで最も高いポイントが設定されており、ライバルとの差をつける好機でもあり、日本勢の動向が注目された。結果は、世界ランク1位の松本/永原が優勝で1万3000点を獲得。同3位の福島由紀/廣田彩花(アメリカンベイプ)が3年連続の準優勝で1万1000点。同2位の高橋礼華/松友美佐紀(日本ユニシス)は、準々決勝で2時間を超える壮絶な死闘の末に中国ペアに敗れ、ベスト8で7200点を獲得した。この大会で3組に割って入ることを狙っていた世界ランク8位の米元小春/田中志穂(北都銀行)は、優勝した松本/永原と対戦した準々決勝で無念の途中棄権。米元が試合中に左足アキレス腱断裂の重傷を負ったため、早期の復帰は難しいと予想される。五輪レースは、3強体制が確実になった。五輪レース開幕戦となった4月末のニュージーランドオープンからの獲得点を比較すると、3番手だった松本/永原が、2番手の高橋/松友を抜いて2番手に躍り出る形になっている。その差は1631点とわずか。まだまだ、分からない。

 ただし、松本/永原は世界選手権を優勝したことで、今年の総合成績上位ペア8組だけが参加できるBWF(世界バドミントン連盟)ワールドツアー・ファイナルズ(12月、中国)の優先出場権を獲得したため、大きなアドバンテージを得た。この大会は、世界選手権に次いでポイントが高い上、最低でもベスト8のポイントを獲得できる。さらに、同国勢は2組しか出場できないため、出られなかったペアに差をつけるチャンスを得たことになる。大きなボーナスステージの切符を獲得した。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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