データ回顧 キングカメハメハの蹄績 日本競馬史上でも屈指の万能種牡馬

JRA-VANデータラボ

キングカメハメハ産駒とディープインパクト産駒の距離別成績(平地戦のみ)

【画像提供:JRA-VANデータラボ】

表3 【画像提供:JRA-VANデータラボ】

 表3は、上半分がキングカメハメハ産駒の距離別成績を芝・ダート別で示しており、下半分には比較対象としてディープインパクト産駒の同様のデータを掲載した。集計期間は、両種牡馬とも産駒が初めて中央競馬で走った日から2019年8月11日までとなっている。

 前項でキングカメハメハの万能性について触れたが、それはこの表を見ても大いに納得できる。芝・ダート、距離を問わず、どの区分でも安定した好走率を記録しており、明確な苦手条件は見当たらない。細かく見ていけば多少の得手不得手はあり、たとえば芝では2500m以上の好走率がもっとも低く、前述した3000m以上でG1未勝利というのもこのデータを見ると納得できる。あるいは、逆にダートでは1000〜1300mの好走率が若干低い様子も垣間見える。

 しかし、下のディープインパクトと比べると、キングカメハメハがいかに条件を選ばず走っているかが理解できるだろう。ディープインパクトの場合はダートで明らかに好走率が下がるし、芝でも短距離戦は数値が低調だ。もちろん、これはディープインパクトの非ではなく、得意条件、苦手条件で成績に差があるのは普通のことで、キングカメハメハの万能性を際立たせるためにご登場願った次第である。1歳違いながら競走馬としては直接対決が実現しなかった2頭の種牡馬によるハイレベルな争いは、この先もしばらくは目の当たりにすることができる。今まで以上に注意深く、産駒たちの活躍を見守っていきたい。

キングカメハメハの後継種牡馬

表4 【画像提供:JRA-VANデータラボ】

 最後に、キングカメハメハの血を受け継ぎ、広める役割を果たしていく後継種牡馬たちを紹介しよう。後継種牡馬として最初にG1馬を送り出したのがルーラーシップで、初年度産駒のキセキが17年の菊花賞を制し、今年の秋は凱旋門賞への出走も予定している。ほかにも17年のクラシックをにぎわせ、古馬になってG2を2勝したダンビュライトや、今年の小倉記念まで重賞3連勝中の上がり馬メールドグラースなどがおり、着々と実績を積み重ねている。

 そして、このルーラーシップをも上回る活躍を見せているのがロードカナロアだ。牝馬三冠に加えてジャパンC、ドバイターフを制した超大物のアーモンドアイを出したのはご存知の通りで、初年度産駒からはステルヴィオもG1を勝利。2世代目にもサートゥルナーリアという大物が出た。すでに成功を収めているが、父およびディープインパクト亡き生産界でかかる期待はますます大きいものがある。

 また、来年は二冠馬ドゥラメンテのほか、ホッコータルマエ、ラブリーデイ、リオンディーズなどの初年度産駒がデビューを予定。その後にデビューを控えるミッキーロケット、ヤマカツエース、レーヴミストラルなどにはサンデーサイレンスの血を引かないという共通項があり、これは現在の繁殖牝馬の傾向を考えると大きなアドバンテージとなる。これらの活躍次第では「キングカメハメハ系」が日本競馬における次代の主流となる可能性も十分にあるのではないだろうか。

文:出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。

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