連載:アスリートに聞いた“オリパラ観戦力”の高め方

上山友裕が教えるパラアーチェリーの心技 選手の緊迫感が伝わる極限の“一本勝負”

C-NAPS編集部

韓国やイランなどアジア勢のライバルにも注目

韓国のキム・ミンスらを筆頭に、上山がメダルを争うライバルたちはいずれも実力者ばかりだ 【写真:C-NAPS編集部】

 自分以外でぜひ注目してもらいたい選手は、いつも「ライバル」に挙げている韓国のキム・ミンス選手です。最新の世界ランキング(2019年8月現在)では僕が6位で、ミンスが11位で少し差が開きましたが、最近までは僕が8位でミンスが7位とかなり競っていました。年齢は10以上も下なんですが、「友さん、友さん」といつも慕ってくれていて、すごく仲良くさせてもらっています。

 6月の試合でミンスが僕の2つ前の順番でアーチェリーの予選をやっていたんですけど、なんと世界記録を出しまして。びっくりしましたけどめちゃくちゃ上手くて、もう「ライバル」と公言するのを控えようかなと思っているところです(笑)。

 ミンスは予選ラウンドで世界記録出せるほどの実力がありますが、国際大会のタイトルをまだ手にしていません。今はまだ、それほど注目度は高くないかもしれませんが、東京パラリンピックでは必ず上位に入ってくる選手です。もしかしたら僕とゴールドメダルマッチを争うことになるかもしれないので、ぜひ注目していてほしい選手ですね。

 国単位だと間違いなくイランです。ロンドン・リオデジャネイロとパラリンピックを2連覇していて、世界ランキング1位に君臨するザハラ・ネマティ選手を擁しているなど、頭一つ抜けた強さを誇っています。彼女とはミックスの試合で対戦経験がありますが、その時はあえなく敗れました。五輪にも出場している図抜けた存在です。東京パラリンピックにも確実に出場するであろう実力者なので、ミックスでは強力なライバルとなります。

東京2020はパラアーチェリーを広める“最初で最後のチャンス”

常に支えてくれる末武コーチ(左)や応援してくれる人たちのためにも、自身の活躍で大会を盛り上げることを誓う上山 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 前回のリオパラリンピックでは7位でした。当時の僕の実力からすると比較的良い結果で後悔もありませんが、負けた悔しさは忘れられません。東京では同じ悔しさを絶対に味わいたくないので、絶対にメダルを獲得するためにも練習に励んでいるところです。

 僕はすでにパラリンピック出場が内定しているので、まだ1年以上の準備期間があります。これほどの期間が空いたことがないので、末武寛基コーチと相談しながら道具やフォームをいろいろと“試す”ことができています。今の自分の実力が100だとしたら、それ以上の力を出すための可能性を模索している最中です。東京では最高の状態で臨みたいと思いますので、活躍を期待していてください。僕は注目されると燃えるタイプなので。

 東京2020は自国開催なので、「パラリンピックをどう成功させるか」という視点が非常に重要になります。自国でやるからには自分の成績に加えて、「大会を成功させなあかん」という自覚が選手に芽生えないといけないと思っています。だからこそ、僕は満員の会場で金メダルを取りたいです。リオの時に実感しましたが、メダルを取っていない競技の注目度はどうしても低いですよね。メダルを取って大会を盛り上げることで、競技の認知度アップにも貢献したいです。

 他国で行われるパラリンピックに、応援に来てもらうのはなかなかハードルが高いですが、今回の舞台は東京。日本でパラアーチェリーが脚光を浴びる、“最初で最後のチャンス”じゃないかなと僕は思っています。「日本を応援しているけどパラアーチェリーのルールは知らん」「ルールは知っているけど、上山の試合は見たことない」という方々に「面白い!」と興味を持ってもらえる試合ができるよう、精一杯頑張りたいです。

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著者プロフィール

ビジネスとユーザーを有意的な形で結びつける、“コンテキスト思考”のコンテンツマーケティングを提供するプロフェッショナル集団。“コンテンツ傾倒”によって情報が氾濫し、差別化不全が顕在化している昨今において、コンテンツの背景にあるストーリーやメッセージ、コンセプトを重視。前後関係や文脈を意味するコンテキストを意識したコンテンツの提供に本質的な価値を見いだしている。

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