優勝の鍵は「タフさしかない」 前橋育英山田監督が語る過酷な総体の是非
「優勝するにはタフさのみ。精神的な強さは身につく」
2大会前の全国高校サッカー選手権大会を制したことのある前橋育英だが、優勝への鍵は「タフさのみ」と山田監督 【写真:アフロスポーツ】
インターハイは各都道府県から出る方式がいいと思います。我が県の代表という想いがあるので、街が盛り上がるんですよ。地域大会とかだと同県の強豪校が毎年出場して、一定の県だけ全国大会に出場できない現象が起こる。
――現行の参加校数で大会を行うのであれば、シード校の問題が生まれます。大会をやる上で公平性が欠けてしまいますが、そこはどのように考えていますか?
決勝戦までやると、冬の高校サッカー選手権もそうだけれどシードの方が絶対にラクです。5試合と6試合では全然違う。ただ、組み合わせを全て公平にするのは難しいですよね。
――逆に、現行のインターハイでメリットはありますか?
選手にとっては大きな意味があります。インターハイを勝ち上がることは、3年生の進路に直接関わってくるんです。ベスト4に行くと、推薦入学条件を満たす大学が多い。
――過酷な環境で大会を行うので、タフさや精神的に鍛えられる側面もあるように思います。
優勝するためにはタフさしかない。精神的な強さは身につく。僕は長崎県立島原商業でプレーをしていた高校時代にインターハイを優勝しましたが、当時の合言葉はもっと暑くなれ(笑)。暑くなれば、自分たちの方が強いという思いがあった。暑さに勝って、勝負にも勝つみたいなね(笑)。
――ご自身がインターハイに出場された時と比べて、日本の夏の暑さはどうですか?
自分の高校時代は30度ぐらい。けれど、今は35度近くまで気温が上がる。毎年、暑熱対策をしないと今は戦えないですよ。プロだってちゃんと給水タイムを取るようになったから。35分ハーフはあっという間に終わると思います。最初からトップギアで戦うダメージもありますし。
――プロ入りを目指す選手たちにとっては、インターハイがアピールの場としても重宝されていますね。
去年、桐光学園高の西川(潤)はインターハイでブレークして、一気に株が上がった。キッカケをつかむ場としては大きなメリットがある。タフなゲームをやることで才能が花開く側面はありますからね。
来年の群馬インターハイは早朝キックオフも!?
来年は地元・群馬でインターハイが開催される。山田監督が、一肌脱ぐことができるか 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
最低でも準決勝や決勝はナイターでやりたいです。ただ、1回戦、2回戦などはナイター設備がない会場になるのでできない。そうなると、キックオフ時間を早くするしかない。それは現状でもできます。ベストは8時キックオフ。起床時間が早くなって大変かもしれないけれど。長崎総合科学大学附の小嶺(忠敏)先生は以前、朝5時から練習試合をしていたこともあったので(笑)。それは冗談だけれど、試合時間は暑さを考えれば、早くした方がいい。来年の群馬インターハイは先頭切って、早朝キックオフをやった方がいいかもしれないですね。
――午前中と夕方に1試合ずつやる案はないのでしょうか?
それもいい案だと思います。ただ、試合が終わる時間がチームによってバラバラになるので、次までの試合間隔が合わないし、コンディションが整わない。去年のインターハイ準決勝は、雷の影響で夕方に試合が終わった。その試合で勝ち上がった桐光学園は次の日11時から試合をしたけれど、さすがにきつい。不利ですよね。時間帯を分けるやり方はやめたほうがいいと思います。
――また、高校サッカーと同じように高校野球も酷暑の問題を抱えています。山田先生の目から見て、日本高等学校野球連盟(高野連)の仕組みや暑熱対策に対する対応はどのように見ていますか?
高野連は規則に細かいけれど、何か問題があったら選手のことを1番に考えて動いている。そこはわれわれも参考にできる部分で一番正解だと思います。何か問題があれば、サッカー界も一度立ち止まって、選手のためになるのかという議論をできるようになればいいと思います。
――まとめになりますが、今レギュレーションを見直すために求められていることは何でしょうか。
できるところから変えていくしかない。少なくともキックオフ時間は変えられるはずです。経費が掛からないところがやりましょうと。あとは登録メンバーの問題はなんとかしたいです。全国大会に行けるチームは、多少経費がかさんでも登録メンバーを増やしたいはずですから。選手のためを考えたら絶対にそっちがいいと思います。