「メダルを取る」ブレない目標に向けて 中田久美監督が語る、東京五輪までの1年

田中夕子

これからは「磨く」作業。より試合に近い練習を

メダル獲得という目標は「ブレないし、変える必要はない」と断言。これからは、より実戦形式の練習を取り入れながら五輪への準備を続けていく 【写真:松尾/アフロスポーツ】

――攻撃力という面ではセッター対角の新鍋(理沙)選手は、守備的役割が大きくなるため、攻撃参加の枚数が減ってしまう。その一方で、守備の安定感を考えると彼女の存在は不可欠であり、多様な見方ができると思います。

 いろいろな考え方があると思いますが、今いる選手、素材をこのチームで最大限に生かすためにどうするかと考えれば、新鍋が入ることで得られる安定感は大きいです。身長が高い選手はサーブレシーブをしなくていい、ミドルはバックアタックに入らなくていい、という発想で長くやってきた背景もあるので、そこは日本のバレーボール界が変わらなければと感じるところでもあります。

 日本代表は育成の場ではないので、それをトップカテゴリーで取り組むのではなく、育成年代も含めた大きな組織で考えなければならない課題だと思いますし、繰り返すようですが、私は今このチーム、メンバーでできる最大限を追求するだけです。

――第一次のチケット販売もありましたが、その中でもバレーボール女子の人気の高さを感じます。中田監督は「勝つ」ことを常に公言しています。東京五輪に向け、掲げた目標は変わらず見え続けていますか?

 もちろんです。どんな状況になっても、そこは絶対にブレないし、変える必要性は全然ないと思っています。順調か順調じゃないか、手応えがあるかは、その時まで分からないし、いくら計画を立てても、その通りにはいかないもの。ですが、どこまで「順調」と言える状態に持って行くかが大事。たとえ計画通りいかなかった時でも、チームの波を小さくするのが私の仕事です。

(就任)1年目に土台をつくって、2年目は五輪のシミュレーションとしてアジア大会に臨み、試合数をこなし、3年目には若手の勢いも加わったことで新しい刺激も生まれた。これからは角を取って、形を整えて、磨く作業だと思うので、いろいろなことにチャレンジしつつ、チーム練習も、より試合に近い練習内容を増やして点数の取り方やチームワークを詰めていきます。

 そこで若手が急成長したり、長岡(望悠)がけがから復帰したりすれば、チームにとってまたプラスになりますし、1人1人が危機感を持って自分と向き合って磨いていくべきだと思います。どんな大会も負けるのは嫌なので、東京五輪はもちろんですが、W杯も常にその時その時の全力で戦います。

2/2ページ

著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント