大谷にかかる期待と、エンゼルスの現状 急逝したスカッグスのためにも援護を

菊田康彦
PR

提供:日本航空

打者に専念する2年目のシーズン

2年目は打者に専念。3番打者として活躍する大谷翔平 【Getty Images】

 打率.287、15本塁打、43打点、9盗塁、OPS.864──。

 今シーズンは看板の“二刀流"こそ封印しているものの、打者・大谷翔平はここまで昨年と遜色のない成績を残している。

 大谷はメジャー1年目の昨季、投手としては10試合に先発して(うちQS5試合)4勝2敗、防御率3.31。打者としては104試合の出場で打率.285、22本塁打、61打点、10盗塁、OPS.925の成績をマークし、日本人ではイチロー(当時マリナーズ)以来17年ぶり、4人目の新人王に選ばれた。

 だが、昨年10月に右ひじのじん帯再建手術、いわゆるトミー・ジョン手術を受けたため、今季は打者に専念。5月7日に戦列復帰すると、6月13日のレイズ戦で日本人メジャーリーガー初のサイクルヒットを達成するなど、オールスターまでに53試合に出場して打率.303、14本塁打、38打点を記録した。

大谷がトラウトに与える好影響

エンゼルスの看板スター・トラウト。大谷の復帰後、彼へのマークが軽減されたことは数字が物語る 【Getty Images】

 大谷が復帰するまでは1試合平均4.6得点だったエンゼルスも、その後は1試合平均5.2得点にアップ。5月からは3カ月連続で勝ち越すなど、大谷の復帰までは4つあった借金を完済して、7月24日には今季最多の貯金5まで持ち直した。

 それが大谷1人の力によるものだとは言わないが、今季開幕前に12年総額4億2600万ドル(約462億円)の超大型契約を結んだチームの看板スター、マイク・トラウトには確実に良い影響を与えている。今月7日で28歳になったトラウトは、大谷の復帰までは31試合で打率.290、7本塁打という成績だったが、その後の79試合で打率.300、29本塁打。特筆すべきは6つの敬遠を含め31あった四球の数が、その後は57(敬遠5)にペースダウンしていることだ。

 大谷は昨季はマイク・ソーシア前監督の下、1番と9番を除くすべての打順で先発したが、今季は65試合のスタメン出場はすべて3番。ブラッド・オースマス新監督は、大谷の3番起用について「就任時から考えていたこと」と話しているが、狙いの1つは2番が定位置のトラウトの後に据えることにあった。今シーズン、大谷のほかに3番打者として先発出場した選手は5人いるが、全員合わせて48試合で打率.247、7本塁打。ゆえに大谷の復帰前は、相手投手はトラウトに対して四球覚悟で慎重に攻めることもできたし、勝負を避けることもできた。

 ところが大谷が後ろにいれば話は別。そうそうトラウトとの勝負を避けるわけにもいかないし、トラウトばかりに神経を使うわけにもいかなくなる。もちろん出塁率の高いトラウトが塁にいれば、それを返すのも大谷の仕事だが、それ以前にトラウトへのマークを分散させるという大きな役割も果たしていることになる。トラウトが大谷の復帰後に調子を上げたのも、決して偶然ではないということだ。

1/2ページ

著者プロフィール

静岡県出身。地方公務員、英会話講師などを経てライターに。メジャーリーグに精通し、2004〜08年はスカパー!MLB中継、16〜17年はスポナビライブMLBに出演。30年を超えるスワローズ・ウォッチャーでもある。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント