連載:高校野球地方大会・全49地区展望

秋春の九州王者そろう福岡は混戦模様 地方大会の有力校を分析、九州編

松倉雄太

センバツベスト4の明豊は主将の表を中心に甲子園出場を狙う 【写真は共同】

 沖縄が一足早く開幕していた九州地区も6日からはいよいよ、福岡などの九州各地で本格的に熱戦の火蓋が切られる。高校野球ライターの松倉雄太さんに全地区の戦力を分析してもらい、今夏の有力校を占っていく連載は第3回。沖縄を除く九州編だ。

(編集部注:校名の横の記号は◎が本命、○が有力、△が要注意校)

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福岡

◎筑陽学園
◯西日本短大付
△九州国際大付

 秋の九州王者・筑陽学園、春の九州王者・西日本短大付を中心に高いレベルの混戦模様になりそうだ。

 筑陽学園は西雄大、西舘昂汰、菅井一輝(いずれも3年)の三枚看板が安定している。春の九州で4番に座った福岡大真や主将の江原佑哉(ともに3年)を中心に勝負強い攻撃力も光り、2季連続出場へ視界良好。初戦屈指の好カードである九産大九州vs.沖学園や、シード校・東海大福岡が同ブロックの激戦ゾーンを勝ち抜けるか。

 西日本短大付はエース・江崎陸(3年)に加え、春は登板できなかった山下大輔(3年)が復帰すれば心強い。強肩強打の捕手・神宮隆太(3年)、攻守の要のショート・近藤大樹(3年)などタレントがそろっている。

 夏に強い九州国際大付は149キロ右腕・下村海翔(3年)のピッチングに注目が集まる。145キロ右腕・武内未来(3年)の真颯館、春の九州大会3試合連続本塁打の捕手・星子海勢(3年)がいる福岡大大濠なども優勝候補に名が挙がる。

佐賀

◎佐賀商
◯佐賀学園
△北陵

 昨夏優勝で第1シードの佐賀商は甲子園でのスタメンが5人残る。特に中島優仁と冴木龍輝(ともに3年)の二遊間の守備は定評がある。投手陣は2年生エースの野田匠を中心に継投で勝負する。

 秋の優勝、春準優勝の佐賀学園が第2シード。2年生エース・浜野翔太は昨秋の公式戦防御率が0.79と抜群の安定感を見せる。捕手の川副寿来も2年生で、若いバッテリーが9年ぶりの甲子園へ導く。

 秋の九州大会出場の北陵、春ベスト4の唐津商、神埼清明なども上位候補。

長崎

◎創成館
◯長崎商
△九州文化学園

 昨夏代表の創成館は第4シードだが、6月のNHK杯を制して調子が上がってきた。スラッガーの4番・深見直人(3年)を中心に勝負強い打者がそろう。投手陣は昨年の川原陸(現・阪神)のような大黒柱は不在で、継投がカギになりそう。

 長崎商は秋準優勝、春優勝と現チームで実績ナンバーワン。桝屋優太郎(3年)は1年秋からエースで、140キロ近い直球が武器。
 春準優勝の九州文化学園は最速146キロのエース・山科颯太郎(3年)が大黒柱。ベンチ入りメンバーを総選挙で決める独自のスタイルで、初の甲子園を狙う。

 秋優勝の長崎南山、長崎日大、清峰、長崎総合科学大附属なども力がある。

熊本

◎熊本西
◯有明
△熊本国府

 シード校は第1シードから順に好きなブロックを選択できるため、第1シード・熊本国府のブロックに上位シードが固まった。

 センバツ21世紀枠出場の熊本西は、春の九州大会までほとんど勝てなかったが、その九州大会でベスト4と躍進。エース・霜上幸太郎(3年)を中心に粘り強い戦いが光る。
 有明は高校日本代表研修合宿に参加した浅田将汰(3年)が大黒柱。最速148キロの直球は、合宿を経てスケールアップ。打者としても注目を集める。他の強豪校と逆ブロックに入ったが、ノーシードの文徳と対戦する可能性がある3回戦が大きなヤマになりそう。
 熊本国府は第1シードを獲得したものの、第4シードでNHK旗優勝の秀岳館が同じブロックに入り、勝負を挑まれた形だ。第3シードの球磨工も熊本西と同じブロックを選択し、準々決勝突破をかけた戦いに注目が集まる。

 連覇を狙う東海大熊本星翔、熊本工、九州学院、濟々黌などの伝統校も虎視眈々(たんたん)。

大分

◎明豊
◯大分
△日本文理大附属

 センバツベスト4の明豊は第2シード。2年生エース・若杉晟汰(せいた)に狭間大暉(たいき/2年)、3年生の大畑蓮、寺迫涼生など豪華な投手陣を持ち、捕手の成田武蔵(3年)が冷静なリードで引っ張る。打線も主将の表悠斗(3年)を中心に、センバツで活躍した後藤杏太、青地七斗(ともに3年)らが好調。春夏連続出場へ向けて負けるわけにはいかない。

 同じくセンバツ出場の大分は1年を通じてのシードポイントがトップで、堂々の第1シード。長尾凌我と江川侑斗(ともに3年)の幼馴染みバッテリーを中心に守りに自信を持つ。センバツ後にケガで離脱していた主将・足立駿(3年)の復調がカギ。

 初出場を狙う日本文理大附も第1シード。最速147キロ右腕・翁長佳辰(3年)のポテンシャルに注目だ。昨夏代表の藤蔭は初戦を勝てば第2シードの津久見。このブロックをどこが勝ち上がるかも大会のポイントになりそう。

宮崎

◎日章学園
◯富島
△日南学園

 1978年に1県1代表制が定着して以降、連覇したチームがない宮崎大会。今年もこのジンクスが続くか、日南学園は連覇を果たすかに注目が集まる。さらに日章学園vs.都城工、日南学園vs.富島、宮崎商vs.小林西など初戦から好カードが多い組み合わせになった。

 日章学園は、守備には自信を持っていたチームで、センバツ1回戦で乱れた守りをどう立て直してくるか。初戦で対戦する都城工には好投手の川野裕真(3年)がいる。

 富島と日南学園は昨夏も準決勝で対戦した。今年は日南学園がノーシードだが、そん色ない力があり、好勝負が期待できそう。どちらが勝ち進むかが大会全体のポイントにもなってきそうだ。

 小林西、宮崎日大のブロックには延岡学園、鵬翔などが同居。宮崎第一、都城東も力がある。

鹿児島

◎神村学園
◯鹿児島城西
△鹿児島実

 今年からシードが投票制からポイント制に変わり、秋春連覇の神村学園が第1シードを獲得した。九州大会では沖縄・興南を相手に終盤までリード。サヨナラ負けを喫したものの、自信につながった。エースの田中瞬太朗、桑原秀侍の両2年生投手を中心に堅い守備で盛り立てる。

 鹿児島城西はNHK旗を制し、神村学園の県完全制覇を食い止めた。右腕の小峯新陸(3年)は最速140キロを超える本格派だ。

 連覇を目指す鹿児島実、昨夏準優勝の鹿屋中央、春の九州大会に出場した尚志館と鹿児島商、さらに枕崎、れいめいなども上位候補、伝統校の樟南は大会前に発覚した不祥事を乗り越えられるか。
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著者プロフィール

 1980年12月5日生まれ。小学校時代はリトルリーグでプレーしていたが、中学時代からは野球観戦に没頭。極端な言い方をすれば、野球を観戦するためならば、どこへでも行ってしまう。2004年からスポーツライターとなり、野球雑誌『ホームラン』などに寄稿している。また、2005年からはABCテレビ『速報甲子園への道』のリサーチャーとしても活動中。

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