148キロ右腕が「人生で一番泣いた日」 前佑囲斗は悔しさを糧に最高の夏を目指す
センバツでは平安を相手に堂々たる投球
「人生で一番泣いた日」をバネに成長を遂げた津田学園・前 【写真は共同】
1回戦の龍谷大平安戦で延長11回170球を投げ、打たれたヒットはわずかに4本。ピンチになるとギアを上げて、球速以上の伸びを感じる130キロ台後半のストレートを投げ込み連続三振を奪った。11回に四死球で招いたピンチから長打を打たれ0対2で敗れたものの、春夏合わせて甲子園出場75回、優勝4回の名門に対して堂々の投球を見せた。
津田学園に入学したきっかけは2歳上の兄・恵弥の存在だ。指導や部内の雰囲気が良いことを理由に勧めてくれた。佐川竜朗監督は「お兄ちゃんはけが持ちでベンチ外だったのですが、一生懸命な選手でした」と目を細める。そして、弟である佑囲斗には「ヒョロッとした体格でまだ完成していない分、まだまだ伸びる可能性を感じました」と第一印象を語る。
しかし、指導では自身の経験を押し付けるのではなく「伝統校ではない子たちに合った野球を」と、自主性や主体性を大事にした指導をしている。食事のノルマを課す“食トレ”も「嫌々食べても仕方ない」と課していない。
その中で前は、自主的に食事やトレーニングに励んで20キロもの増量に成功。体の成長とともに、球速が2年春には130キロ台後半を計測するなど着実に成長。公式戦でも登板するようになった。
2年夏の県大会が分岐点に
センバツでは快投を見せるも、延長11回に2失点し初戦敗退 【写真は共同】
「人生で一番泣いた日だと思います。グラウンドに帰ってくるまでバスでもずっと泣いていました」と、前は当時を振り返る。
翌日、佐川監督に「成長は確かに見えたから、これからも努力を継続しろ」と声をかけられ、直後の練習から目の色を変えた。指揮官も「本当の意味で悔しさを味わったことが成長を生みました。ストイックになりましたね」と振り返る。
また、投球スタイルもそれまでは力任せだったが、球のキレの大切さを認識し、現在のうまく脱力をしたフォームへと変わっていった。すると球速も伸びて、最速で148キロを計測するまでに成長。秋の三重大会と東海大会で好投し、津田学園を17年ぶり3回目のセンバツ甲子園出場に導いた。