ラグビーにおける「レフリー」という仕事 審判として参加するラグビーW杯への思い

スポーツナビ
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提供:(公財)日本ラグビーフットボール協会

 休憩を挟んで行われた第2部では質疑応答が行われ、多くの質問が寄せられた。

「判断を急ぐのではなく、1、2秒は考える時間を作る」

会場からは多くの質問が寄せられた 【スポーツナビ】

――スクラムの組み方に関するレフリーの判定が、あまりにもそれぞれで大きな違いがあるように感じます。判定の検証は、どのようにやられているのですか?

 スクラムは一番難しいですね。どちらにも取れるところがあったりして、難易度の高い判定であることは間違いないです。判定がブレないようにレフリーの研修会に長谷川慎さん(日本代表スクラムコーチ)をお招きして、スクラムの傾向などをレクチャーしてもらっています。僕らもスクラムの知識を高めながら、慎さんにも「レフリーからはこういうふうに見えますよ」ということをお伝えしながら、お互いに共通認識を高めていくということをやっています。

――W杯で吹いてみたい試合はありますか?

 まずは今住んでいる大阪、そして地元の福岡で笛を吹くことができればという思いはありますね。トンガ、ジョージア、ナミビア、イタリアなどかなりタフな試合が多いと思いますが……。主審をやりたいという意味では、アルゼンチンvs.ジョージアの試合ですかね。お互いがガツガツ行くチームなので、面白そうですね。

――試合中、瞬時に判断するために日頃から行っているトレーニングはありますか?

 答えが逆になってしまうかもしれませんが、実はあまり瞬時に判断をすることはないんです。それが良くない結果を生むこともあるので、逆に3秒くらい間を置いてジャッジするように心掛けています。僕も何度も判断を急いで失敗したことがあるので、急いで行動を起こさずに、1、2秒は考える時間を作るようにしています。

――久保さんを含めて、レフリーにも得意なゲームや不得意なゲームはありますか?

 個人的にはゲームがオープンな展開になればなるほど笛は吹きやすくなりますが、逆にスクラムのリセットが続くような試合は難しいですね。プロップ出身のレフリーはそういう試合のほうが好きかもしれません(笑)。

――レフリーに注目している人は意外に多いと思う。だからこそ、もっとレフリーの側から発信していくことを考えてはどうでしょうか。

 そうですね。それはこれからの課題だと思っています。サッカー(Jリーグ)などは、毎週金曜日にYouTubeで前の週に行われたゲームの判定を振り返るような検証番組をやっています。僕たちも同じような形で、もっともっと情報公開をしていくことは大切だと思います。チームとはここ2、3年でそのような機会を作ったりしています。

――今回のW杯で重点的に見るペナルティーなどはありますか?

 7月に日本でキャンプが行われるので、その時に発表があるかもしれません。ただ、ルール自体は大きくは変わらないと思うので、皆さんが今見ているものから何かが大きく変わるようなことはないと予測しています。

――今回のW杯をさばく19名に選ばれるために、一番努力していたことは何ですか?

 本当はレフリー(主審)でピッチに立つというのが一番の目標でしたが、それが難しくなってきたときには、アシスタントレフリーとしてコミュニケーションがきちんと取れるかどうかですね。そのためには、やはり英語が重要になってくるので、そこを重点的にやりました。あとは英語だけではない、彼ら(レフリー)との関係性を強化すること。ゲームの前に彼らに質問を投げかけたりしながら、一緒に働きやすい人間になることがアシスタントレフリーとして求められていることだと思い、努力をしていました。

――日本のレフリーが世界で活躍するために必要だと思うことは?

 ゲームの流れを読んで、コントロールする力ですね。僕自身、それが足りず今年はスーパーラグビーで笛を吹けなかった。他競技の話になってしまいますが、例えばサッカーでも、そこの部分が日本人に求められていると思います。

 試合をマネジメントし、コントロールするというのは、競技を超えて日本人に求められていることなのかもしれません。日本国内では、大きく荒れるゲームはあまりありませんが、もしゲームが荒れてしまったときに、どうやって選手たちと話をするのか。そういったところで力を付ければ、世界でもレフリーとして活躍できると思います。

あなたにとってラグビーとは?

 ラグビーは生活の一部ですね。高校でラグビーを始めて、ヒョロヒョロだった体に少しずつ筋肉がついてきて、同時に自信もつきました。レフリーを始めてからは、いろいろなところに行かせてもらって、さまざまな経験もさせてもらいました。ラグビーは僕の人生を作ってくれたもので、人生に「きっかけ」を与えてくれたものでもあります。

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