コパ・アメリカ2019連載

森保Jに「強化の連続性」はあったか? コパで再確認した“ジャパンズ・ウェイ”

宇都宮徹壱

3試合で終わったコパ・アメリカの戦いをどう評価するか?

2分け1敗で終わったコパ・アメリカでの日本代表。戦いぶりをどう評価するかが重要である 【Getty Images】

 ブラジルで開催中のコパ・アメリカに出場した日本代表の戦いは、周知のとおり2分け1敗の得失点差−4という戦績で、グループステージ敗退という結果に終わった。その翌日、フランスでの女子ワールドカップ(W杯)に出場していたなでしこジャパンは、ラウンド16でオランダに1−2で敗れて涙をのんでいる。目指すものは違えども、6月の国際大会に出場していた日本代表が、男女そろって月を越えられなかったのは残念至極な話である(去年のW杯ロシア大会は7月2日が「終戦」だった)。

 コパ・アメリカでの日本代表を総括するにあたり、あらためて評価の軸となる≪日本代表の7つの課題≫を提示しておく。今大会での日本は、来年の東京五輪に出場する可能性が高い22歳以下の選手を中心に、OA(オーバーエイジ)枠候補の選手とベテランが加わるというメンバー構成。純然たるA代表ではないため、どこに評価基準を置くか迷うところ。そこで「強化の連続性」を重視し、以下の7つのチェック項目を事前に提示しておいた。

(1)各ポジションの世代交代は進んでいるか?
(2)チーム内の競争は健全に働いているか?
(3)監督の考えるコンセプトは浸透しているか?
(4)攻撃面でのバリエーションは増えているか?
(5)守備面での共通理解は進んでいるか?
(6)監督の采配や選手交代は的確か?
(7)試合状況や実力差に応じた戦いができているか?
 そしてグループステージ3試合が終了した直後、スポーツナビではこのうちの(3)(4)(5)(7)を選り抜きして、「あなたが日本代表の一番の課題だと感じるものはどれですか?」とツイッターによる4択のアンケートを行った。投票総数は4956票。結果はパーセンテージが多かった順に「試合状況や実力差に応じた戦い」33%、「攻撃面でのバリエーション」32%、「監督の考えるコンセプトの浸透」20%、そして「守備面での共通理解」15%となった。コメントもいくつか拾ってみよう。

《そもそも監督にコンセプトがあるのか?》
《決定機でのシュートの質・決め切る力が足りない!!》
《監督の成長。ディティールを詰めないで選手任せにしてそれを「自由にやらせたい」と言い訳をする監督が成長しないからこうなる。》
《『協会の方向性の不明瞭さ』って選択肢が欲しかったです。》

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アンケートから見えてくる「決定力不足」への不満

上田らが相次いで決定的な場面でシュートを外したことが非難の対象となったが、問題の本質を見失う危険性をはらんでいる 【写真:ロイター/アフロ】

 コメントを読み返して目立っていたのが、選択肢にない「決定力のなさ」を指摘する声の多さである。特にエクアドル戦では、久保建英がたびたび決定的な場面を演出しながら周囲が決め切れなかったこと。そして上田綺世と前田大然(いずれも後半から途中出場)が、相次いで決定的な場面でシュートを外したことが非難の対象となった。おそらく選択肢の中に「決定力不足」が入っていたら、ダントツのパーセンテージを示していたことだろう。

 もっとも、決定力不足に関しての森保一監督の認識は、これまでの会見を聞く限り一貫している。要約すると「ゴールは決まらなかったがチャンスは作れていた。どれだけ決定的な場面を作り出せるかが重要。フィニッシュに関しては、選手が高い意識を持って点を決めることにこだわってほしい」ということになる。この「チャンスは作れていた」というのは、決して森保監督のオリジナルではなく、最後の外国人指揮官であるヴァイッド・ハリルホジッチ監督も、繰り返し述べてきたことだ。

 さらにさかのぼればジーコ監督時代の15年くらい前にも、日本の「決定力不足」は盛んに指摘されていた。今となっては信じられないだろうが、W杯ドイツ大会に出場していた時にも、試合前に繰り返しシュート練習が行われていたのである(結局、この大会で日本は2ゴールしか記録していない)。このように「決定力不足」は、日本代表にとって根深い歴史的な課題であり、そこだけをクローズアップしてしまうと問題の本質を見失う危険性をはらんでいる。

 もうひとつ、コメントで目を引いたのが「監督のコンセプト」に関するものである。就任から間もなく1年が経過し、これまでアジアカップとコパ・アメリカという2つの大会で指揮を執ったにもかかわらず、森保監督のコンセプトというものが意外とファンに伝わっていないことに気付かされる。たとえばハリルホジッチ監督の「デュエル」や「縦へのスピード」、あるいはアルベルト・ザッケローニ監督の「インテンシティ」や「ポゼッション」といった明確なキーワードが、今の日本代表に見当たらないのも一因かもしれない。

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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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